株式会社BlanketKAIGO HR FARM大学生の就職内定率が73.4%に。変化する新卒市場と、介護・福祉業界が見直したい採用のポイント

大学生の就職内定率が73.4%に。変化する新卒市場と、介護・福祉業界が見直したい採用のポイント

公開日:2025/12/01 更新日:2025/12/01

介護・福祉の人事・組織づくりを支援するコンサルタント・太田が、話題のニュースやトレンドから、現場で役立つヒントを読み解く連載コラム。今回の“ひとさじ”は、73.4%となった26卒大学生の「就職内定率」に注目。変化する新卒市場において、介護・福祉業界が今こそ見直したい「採用の基本」を解説します。

2026年卒の就職内定率は73.4%に上昇

厚生労働省と文部科学省が公表した、2026年3月卒業予定者(大学生)の就職内定状況によると、2025年10月1日時点の内定率は73.4%となり、前年同期より0.5ポイント上昇しました。理系73.6%、文系73.4%とほぼ同水準で推移し、女子学生は75.8%と高い水準を示しています。

背景には、企業の採用意欲が高く、学生が複数の選択肢から比較検討しやすい“売り手市場”が続いていることがあります。学生の動きが早まり、より広い視野で企業を見る傾向が強まったことで、採用の現場では従来以上に「学生に見つけてもらう仕組み」が求められるようになってきました。

今の学生は、職場の「安心材料」を重視する傾向が強まっている

学生の就職観は人それぞれですが、全体の傾向として、働きやすさや安心感を重視する姿勢が強まっています

仕事の魅力や処遇面だけでなく、無理なく働き続けられるかどうか、チームの雰囲気が自分に合っているか、困ったときに相談できる人がいるか、学びながら成長できる環境が整っているかなど、日々の働きやすさに関わるポイントが職場選びの基準として意識される場面が増えてきました。

介護・福祉の仕事は、外から見ただけでは働く姿がイメージしにくい側面があります。だからこそ、仕事内容だけでなく、現場の育成方針や支え合いの文化、働く人の想いなど、職場の内側を丁寧に伝える姿勢が求められます。

こうした情報は応募の後押しになるだけでなく、内定後の不安軽減にもつながります。

採用活動は「いつ動くか」で結果が変わる

学生の動き方が多様化し、就職活動を意識し始める時期にも幅が出てきたことで、法人が学生と最初に出会うタイミングは採用成果を大きく左右する要素になっています。

そのため、説明会や見学会、オンライン相談のように、学生が最初にアクセスできる“入口”を早めに整えておくことが重要です。入口があることで、興味段階の学生でも気軽に情報に触れられ、自法人を比較検討の対象として見てもらいやすくなります。

採用は短期戦ではなく、学生が安心して関わり続けられる時間を積み重ねていく長いプロセスです。早めの準備と複数の接点づくりによって、選考参加や内定承諾へつながる流れが生まれやすくなります。

これから重要性が増す“内定後の時間”

採用スケジュールの前倒しにより、学生が内定を得てから入職までの期間が長くなる傾向があります。

期待と不安が入り混じるこの期間に、学生が法人とのつながりを感じられるかどうかが、定着や内定辞退に大きく影響します。内定後も学生は、「自分に合っているか」「入職後のイメージが持てない」と迷いを抱えがちです。

そのため、法人側にはこの期間を“関係性を深める大切な時間”として扱い、丁寧なフォローを続ける姿勢が求められます

たとえば、現場職員と気軽に話せる時間を設けたり、仕事の様子が伝わる短いメッセージを届けたり、配属や働き方について相談できる機会をつくるなど、学生が段階的に安心を積み重ねられるような関わりが有効です。LINEなどのツールを使って近況を共有できる関係性も、学生の不安を和らげる助けになります。

介護・福祉の仕事は、入職前のイメージと実際の現場とのギャップが離職要因になりやすいため、内定後の期間に丁寧に関わることが欠かせません。

小さな働きかけの積み重ねが「ここなら安心して働ける」という気持ちにつながり、入職後の定着にも良い影響をもたらします。

現場の声を採用の力に変える

介護・福祉の仕事の魅力を伝える際には、現場で働く人の声が大きな役割を果たします。

ただし、大変さを強調しすぎると学生の不安につながるため、日々どのように工夫して働いているのか、どんな場面で支え合っているのか、仕事の中でどのような喜びや成長を感じているのかといった、前向きな側面もあわせて伝えることが大切です。

SNSでの日常紹介や採用サイトのインタビュー、短い動画での現場紹介などを活用することで、職場の空気感を伝えやすくなり、学生が働く姿をイメージしやすくなります

こうした情報は応募への後押しになるだけでなく、内定後の安心感にもつながります。

介護・福祉業界が今、見直したい採用の基本

今回の調査から見えてくるのは、採用活動を丁寧に設計する必要性がこれまで以上に高まっているという点です。特に次の3つは、あらためて意識しておきたいポイントです。

(1)仕事の魅力と現実をバランスよく伝えること
働く環境や育成の姿勢、支え合う文化といった“安心材料”を丁寧に伝えることが欠かせません。

(2)学生との接点を早期からつくること
興味段階の学生とも自然につながるために、参加しやすい入口を整えておくことが重要です。

(3)内定後の期間を“関係づくりの時間”として大切にすること
継続したフォローが「ここで働きたい」という気持ちにつながり、入職後の定着も高めます。

介護・福祉の仕事は、人と関わるなかでその魅力が深まっていく仕事です。

だからこそ、採用の入口から入職までの流れを丁寧につなぎ、学生が安心して次のステップに踏み出せるような関わりを積み重ねていくことが大切ではないでしょうか。

【この記事を書いた人】
太田 高貴
株式会社Blanket採用コンサルタント / 社会福祉士 / 一般社団法人総合経営管理協会 認定採用コンサルタント

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