株式会社BlanketKAIGO HR FARM組織づくり介護・福祉業界における心理的安全性とは?離職防止・ケアの質を高める考え方と実践方法【“読む”介護の組織をよくするラジオ】

介護・福祉業界における心理的安全性とは?離職防止・ケアの質を高める考え方と実践方法【“読む”介護の組織をよくするラジオ】

公開日:2026/02/06 更新日:2026/02/06

株式会社Blanketがお届けするポッドキャスト「介護の組織をよくするラジオ」の要点やポイントをまとめた“読むラジオ”です。各エピソードで取り上げたテーマをもとに、介護・福祉の現場で今まさに起きている変化や、組織づくりのヒントを紹介しています。


介護・福祉の現場では、チームでの連携が利用者の安全やケアの質を左右します。その土台となるのが「心理的安全性」です。安心して意見を言える環境は、業務効率だけでなく離職防止にもつながります。

今回は「心理的安全性」の概念から、介護・福祉現場での実践方法までをわかりやすく解説します。

【今回のパーソナリティ】
・野沢(Blanket/取締役、人事・採用コンサルタント)
・大坪(Blanket/採用コンサルタント、聞き手)

「心理的安全性」って、最近よく耳にする言葉ですよね。私自身も、分かっているようで実はちゃんと理解できていない気がしていて。まずはそのあたりから教えていただいてもいいでしょうか。

心理的安全性は単体の施策というより、離職防止や採用、人材育成といった取り組み全体の“土台”になるものです。

心理的安全性とは?定義とよくある誤解

ビジネスシーンでお馴染みになった「心理的安全性」。イメージやニュアンスは理解していても、自分の言葉で説明するとなると、難しさを感じる人もいるかもしれません。

ここでは、まず心理的安全性の定義を確認した上で、よくある誤解についても解説します。

エドモンドソン博士による心理的安全性の定義

心理的安全性_定義

心理的安全性は、一言で言えば、 「自分の意見や考えを発言しても、否定・評価低下・不利益を被らないと信じられる状態」を指します。

ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン博士が体系化・提唱した概念で、「率直であることが許されるという感覚」と定義されます(※)。

出典:心理的安全性とは何か、生みの親エイミー C. エドモンドソンに聞く|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

組織の現場では、多数派とは異なる意見を持つことがあります。そのときに、否定的に受け取られる可能性への不安を感じながらも、なお発言できる状態が心理的安全性の本質だと私は考えています。

よくある誤解。仲の良さ・風通しの良さではない?

心理的安全性はさまざまなシーンで、「仲良し・和気あいあい・対立が起きない」と捉えられることがありますが、これは誤解です。

むしろ重要なのは、意見の対立があっても、議論が白熱しても、また自分の意見が採用されなくても 「発言すること自体は安全だ」と感じられることにあります。

風通しがいいとか、雰囲気がいいというのも大事ですが、それはあくまで要素の一つであって、「それらがあれば、心理的安全性が高い状態です」と言える訳ではないんですよね。

心理的安全性が低い状態・高い状態の違い

心理的安全性が低い状態では、「これを言ったら自分が不利益を受けるのではないか」という不安から、本来伝えるべき意見や違和感を飲み込んでしまいます。

例えば、意見を言うたびに否定されたり、上司から強く封じ込められるような環境では、心理的安全性は低いと言えるでしょう。

一方で、意見を出せば議論は起こるかもしれないし、「それは違う」と指摘されることもあるかもしれません。しかし、その意見が真正面から受け止められ、建設的に向き合ってもらえると信じられる状態であれば、人は安心して発言することができます。

心理的安全性が高いとは、「すべて受け入れられる」「常に雰囲気が良い」状態を指すのではなく、「言っても大丈夫だ」と思える状態のことなのです。

なぜ心理的安全性が介護・福祉業界で重要なのか

心理的安全性_理由

心理的安全性は、介護・福祉業界では特に重要なものとされます。それは、介護・福祉業界ならではの働き方や構造が大きく関係しています。

ここでは、ポイントを3つにわけてそれぞれ解説します。

どの業種でも大切な概念ですが、介護や福祉の現場では特に重要です。チームで連携しながら、ご利用者の生活や安全、時には命にまで関わる仕事ですよね。だからこそ、安心して意見や気づきを共有できる環境が欠かせません。

たしかに、チームで動くからこそ情報共有が前提になりますし、「これくらい大丈夫かな」と感じたことや小さなミスほど、言い出しにくい空気があると怖いですね。そうしたことをためらわずに話せるかどうかが、ケアの質にも直結しそうです。

チームケアと情報共有の重要性

介護・福祉の現場では、チームケアが前提となる場面が非常に多く、情報共有の質がケアの質を大きく左右します。

そして、この情報共有や日常的なコミュニケーションは、心理的安全性が担保されていなければ十分に機能しません

現場で何か違和感やミスに気づいたとき、それを自分の中に飲み込んでしまえば、その後により大きな問題へと発展してしまう可能性があります。 一方で、「何かあったらすぐに伝えていい」「次にどうするかを建設的に話し合える」という関係性があれば、結果として質の高いケアにつながっていきます。

心理的安全性が高いチームでは、職員一人ひとりが「自分の意見や考えを言っていい」と感じられるため、発言の機会が自然と増えていきます。その中で、多様な視点やアイデアが生まれ、課題解決につながる提案や、「もっとこうした方が良いのではないか」といった前向きな改善の発想が共有されやすくなります。

一方で心理的安全性が低い状態では、新しい提案や違和感を口にする人が減り、組織は「現状維持」という名の停滞に陥りがちです。その結果、仕事や提供するサービスの質そのものが低下していく可能性も否定できません。

事故・不適切ケア・虐待リスクとの関係

心理的安全性が高い職場では、リスクやトラブルの兆しを早い段階で共有することができます。これは、介護・福祉業界において特に重要な要素の一つです。

事故や不適切な支援、ケアにつながりかねない場面では、「あれ?」と感じた違和感をその時点で声に出せるかどうかが、その後の結果を大きく左右します。

さらに突き詰めていけば、虐待のような深刻な問題の予防にもつながります。気づいたことをすぐに伝え、チームとして状況を確認し、対応を検討できる環境があれば、重大なトラブルに発展する前に手を打つことが可能になります。

離職防止・職員定着・帰属意識

心理的安全性のある職場では、職員が「このチーム、いいな」と自然に感じるようになります。そうなると、「辞める」という選択肢は出にくくなり、帰属意識が高まっていきます。

介護・福祉業界は人材確保が難しいといわれますが、本当に重要なのは「新しく採ること」よりも、「今いる人が働き続けたいと思えるかどうか」です。

自分の仕事が利用者のためになっている、チームとして良いケアを目指せていると実感できる職場では、多少の大変さがあっても踏ん張れます

研修や待遇改善、採用強化も大切ですが、心理的安全性がなければ、それらは十分に機能しません。

心理的安全性は「リーダーだけでは作れない」

介護・福祉の現場で重要になる心理的安全性は、つい「リーダーが生み出すもの」という意識を持っている人も多いかもしれません。

ですが、心理的安全性はリーダーだけの力で生み出せるものではなく、チーム全体の関係性の中で形づくられていくものです。ここではその背景と、チームでの心理的安全性を実現するポイントを解説します。

Googleが見つけた成果を上げるチームの共通点

リーダーとの関係を説明する前に、前提となる「チームとしての力とは何か」を考えてみましょう。

その問いに向き合ったのが、Googleの社内研究「プロジェクト・アリストテレス」です。社内の180のチームを数年にわたって分析した結果、個々の能力の高さとチーム成果にはほとんど相関がないことが判明。スター選手を集めただけでは強いチームにはならないことがわかりました。

成果を上げるチームには、メンバーの発言機会が均等で、日常的にコミュニケーションが活発という共通点がありました。そして、その背景にあるのが「心理的安全性」です。安心して意見や疑問を共有できる環境が、チームパフォーマンスを大きく左右していたのです。

参考:「効果的な​チームとは​何か」を​知る|Google re:Work

Googleのプロジェクトの名前にもなった「アリストテレス」をご存じですか? 古代ギリシャの哲学者で、「全体は個の総和以上になる」という考え方を残した人物です。

たとえば、枝も1本では弱くても束ねると強くなるように、組み合わさることで大きな力が生まれることがある、という意味です。

心理的安全性はチーム全体の関係性から生まれる

Googleの研究が示したのは、チームの成果を左右するのは個々の能力そのものよりも、メンバー同士の関わり方や関係性の質だという事実でした。心理的安全性もまた、特定の誰かが単独でつくり出せるものではなく、チーム全体の関係性のなかで育まれていくものです。

そのため、リーダーがどれだけ「話しやすい雰囲気をつくろう」と心がけていても、チームメンバー同士のあいだに遠慮や緊張感が強ければ、安心して発言できる環境にはなりません。リーダーには話せるけれど、同僚には言いづらい状態では、チームとして本音や重要な情報が共有されにくくなってしまいます。

心理的安全性は、「誰と話すか」ではなく、「このチームのなかで自分はどう扱われるか」という感覚に大きく左右されます。だからこそ、チーム全体の関係性に目を向けることが欠かせないのです。

それでも、リーダーは“変化の起点”になれる

心理的安全性はリーダーだけでつくれるものではありません。しかし同時に、リーダーの関わりが変化のきっかけになることもまた事実です。

リーダーの言葉の選び方や、失敗に対する反応、メンバーの発言をどう受け止めるかといった日々のふるまいは、チームの空気に少しずつ影響を与えていきます。すぐに全体が変わらなくても、その積み重ねが「このチームでは言っても大丈夫らしい」という感覚を広げていく土台になります。

大切なのは、「自分がすべてを変えなければ」と背負い込むことではなく、影響力の大きい立場として、できる働きかけを続けることです。チーム全体の関係性は一朝一夕では変わりませんが、諦めずに関わり続けることが、心理的安全性を育てる第一歩になります。

心理的安全性を高めるために介護・福祉の現場でできること

心理的安全性_ポイント

心理的安全性を高めるためには、いくつかの視点を知っておくことが重要です。

ここでは介護・福祉の現場でも今すぐ実践できる4つポイントを解説します。

(1)話しやすい雰囲気のためにコミュニケーションの癖を知る

まず大前提として大切なのが、初期対応です。「この人には話しにくい」と思われると、そのイメージを覆すのは難しいでしょう。

とはいえ、自身の業務に加え、チームマネジメントまで行っていると余裕がなくなってしまうのも当然のことです。忙しく事務的になったり、表情に出てしまったりと、意図していなくても相手に「話しづらい」と感じられてしまうことがあります。

ここで重要なのが、自分のコミュニケーションの癖を知ることです。余裕がない時にどんな対応をしがちか、普段のコミュニケーションはどういう傾向かをまず見直してみましょう。

感じ方や受け取り方は人それぞれであるため、コミュニケーションに正解はありません。癖を「なくす」のではなく、意識してコントロールすることで、話しやすい雰囲気を作ることにつながります

(2) 情報のズレや漏れを前提として情報を伝える

「情報は必ずズレる」という視点も非常に重要です。コミュニケーションを取る際は、伝える側で取捨選択が起きるだけでなく、聞く側でも独自の解釈が重なることで、「言ったつもり」「分かってくれていると思った」というずれが起きやすくなるためです。

同じ情報でも、聞き手によって受け取り方やコミュニケーションエラーが起きることを前提とするだけでも、漏れやズレを防ぐことにつながります

その際に役立つのが、

・What:何を
・Why:なぜ
・How:どうしたい/どうしてほしい

の視点です。伝える時も、聞く時も、3点を意識するだけで納得感に差が出ます。

1対1だけでなく、チームやメンバー同士も「ズレや漏れがあるから、『What / Why /How』をお互いに意識し、確認し合うようにするようになっていくと、安心して喋れるんですよね。まずリーダーがそれを意識して始めてみることをおすすめします。

(3)ブレない判断の基準を持つ

心理的安全性を高めようとするとき、特に重要になるのが「判断の軸を持つこと」です。

例えば、判断の基準が場当たり的だったり、その場しのぎに見えると、メンバーの中に諦めが生まれてしまいます。「言ってもなあなあにされる」「どうせ変わらない」という不信感によって、本音や問題提起が出てこなくなってしまうかもしれません。

だからこそ、リーダーには「組織として大切にすること、ブレさせないこと」という基準をきちんと持つことが求められます。ただし、ここで誤解してはいけないのは、全員の心理的安全性を一律に最大化することが目的ではないという点です。

チームにはさまざまな価値観の人がいます。もしチームの目的や理念と逆方向の言動まで無制限に許容してしまえば、組織としての前進は難しくなります。大切なのは、チームが目指す方向に向かうための、建設的な意見や問題提起が安心してできる状態をつくることです。

「誰にとって心地よいか」ではなく、「チームの目的にとって健全な状態か」を判断することが、心理的安全性を機能させるポイントです。

(4)チームに浸透させるには日々の取り組みが鍵

心理的安全性は、ルールやマニュアルだけで一気につくれるものではありません。リーダーや管理者が日々の会議やコミュニケーションで少しずつ意図を言語化し、姿勢や考え方を示すことが、チームに浸透する最大の方法です。

実際、心理的安全性は液体のようにじわじわと広がるもので、目には見えません。ダイレクトに「これをやるのだ」と押し付けても効果は薄いでしょう。一方で、日々の振る舞いや言動の積み重ねが土台を作り、チーム全体の空気を変えていきます。日本人はもともと調和を重んじる文化を持っているため、こうした「目に見えない関係性」を自然に育てやすいとも言えます。

会議で少し話題にする、日常のやり取りで姿勢を見せるという積み重ねが心理的安全性をチームに広げる鍵です。研修や本よりも、日々の振る舞いが最大のメッセージになります。

リーダーや管理者が「こういうチームをつくりたい」とオープンに示してくれるだけでも、みんな協力したいと思えるようになるんですね。一人で頑張らないことが大事です。

まとめ|心理的安全性はすべての施策の土台

心理的安全性は、研修・採用・処遇改善が機能するための必要となる「すべての施策の土台」です。

介護・福祉の現場では、チームで連携しながら利用者の安全や生活に関わるため、安心して意見を出せる環境が欠かせません。

その実現には、リーダーや管理者が単独でつくるのではなく、日々の関わりや態度の積み重ねが重要です。

・自分のコミュニケーションの癖を知る
・情報のズレ、漏れを前提にした共有を行う
・判断にブレない軸を持つ
・姿勢や言動で心理的安全性を示し、チームに浸透させる

これらを地道に意識し続けることで、チーム全体の関係性が育ち、離職防止やケアの質向上、事故防止につながります。

心理的安全性は一度で作れるものではありませんが、リーダーや管理者が日々少しずつ示す姿勢が、チームの空気を変える大きな力になります。

日々のコミュニケーションの中で意識するだけでも、少しずつチームは変わっていくんですね。


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【今回の「介護の組織をよくするラジオ」を聞いてみる】
■♯13-① 介護・福祉のチームづくりに欠かせない、心理的安全性を語ろう!
SpotifyYouTube
■♯13-② 「分かっていたけど言えなかった」を防ごう。介護・福祉のチームと心理的安全性
SpotifyYouTube
■♯13-③ 心理的安全性は“育てるもの”。介護・福祉の現場でできる実践のヒント
SpotifyYouTube

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