株式会社BlanketKAIGO HR FARM管理職志向が低い時代に、介護・福祉の現場リーダーをどう育てるか

管理職志向が低い時代に、介護・福祉の現場リーダーをどう育てるか

公開日:2026/03/16 更新日:2026/03/16

介護・福祉の人事・組織づくりを支援するコンサルタント・太田が、話題のニュースやトレンドから、現場で役立つヒントを読み解く連載コラム。今回の“ひとさじ”では、リクルートマネジメントソリューションズの調査をもとに、管理職志向のギャップから見えてくる「次の担い手をどう育てるか」を考えます。


リクルートマネジメントソリューションズが公表した「管理職のあり方に関する実態調査」によると、現在管理職として働いている人の約6割が「今後も管理職として働き続けたい」と回答しました。

一方で、一般社員の側では、管理職になることに否定的な回答が6割以上を占めています。背景には、責任の重さ、業務負荷、ワーク・ライフ・バランスへの不安があり、管理職という役割が「やってみたい仕事」よりも「避けたい負担」として捉えられやすい状況がうかがえます。

この結果が示しているのは、管理職そのものが不人気というより、管理職に付随する負担や不確実さが、次の担い手の意思決定を鈍らせている可能性です。つまり、管理職志向を高めるためには「管理職になってほしい」と呼びかけるよりも、役割の見え方と設計を整えることのほうが重要になるのかもしれません。

管理職のやりがいが伝わりにくくなる構造

管理職として働く人が継続を希望するのは、仕事の意味や手応えを感じられているからだと考えられます。現場の課題を整理して改善につなげたり、メンバーが育つ過程に関われたり、チームとして成果を出せたりすると、役割の価値を実感しやすくなります。

ただ、その魅力は外から見えにくい面があります。管理職の仕事は、目に見える成果が「日々の安定」や「トラブルの未然防止」として現れやすく、頑張りが当たり前として扱われやすいからです。結果として、周囲には「負担が増える」「責任だけが重い」という部分が強く伝わり、やりがいが十分に共有されにくくなります。

介護・福祉の現場で起こりやすい管理職回避

この構図は、介護・福祉の現場でも少なからず見られるテーマです。多くの事業所では、現場をまとめたり、チームの動きを整えたりする役割が欠かせません。しかし、その担い手をどう育てていくかについては、多くの現場で悩みが聞かれます。

理由は、単に意欲の問題ではなく、役割が「上に行くほど現場から離れる」「責任や調整が増える」というイメージで語られやすいことにあります。加えて、現場の人数が限られているほど、管理業務と現場業務の兼務が起きやすく、結果として「管理職=忙しさの増加」という理解が固定されやすくなります。

こうした状況では、現場で頑張っている人ほど「今の役割で精一杯」と感じ、次のステップを選びにくくなることがあります。ここを個人の意欲として片付けるのではなく、役割の渡し方や負担の分散の仕方として捉えることが大切になります。

遠い役割にしないための見せ方と任せ方

管理職を特別な役割にしすぎないためには、まず「管理職の仕事を分解する」ことが有効です。管理職の仕事は一つの役割に見えても、実際にはいくつもの要素が重なって成り立っています。

たとえば、情報共有の整理、育成の進め方の調整、シフトや業務の調整、業務改善の意思決定、外部対応など、日々の仕事の中にはさまざまな要素があります。

これらをすべて一人が抱える形だと、候補者からは「無理そう」に見えます。一方で、要素ごとに小さく任せていくと、「自分にもできる部分がある」と感じやすくなります。

たとえば、ミーティングの進行を担当してもらう、申し送りのルールを整える役割を任せる、新人フォローの進め方を考えてもらう、といった形で、マネジメントの一部を経験する機会をつくります。いきなり役職を渡すのではなく、役割を少しずつ持ってもらう発想です。

次の担い手を育てる経験の設計

コラム_管理職

担い手を育てるうえで重要なのは、経験の機会が偶然ではなく、意図して用意されていることです。忙しい現場ほど「できる人が全部やる」構造になりやすく、育成の機会が生まれにくくなります。だからこそ、任せる範囲を少しずつ広げ、振り返りの時間を短くても確保することが効果的です。

具体的には、次のような設計が現実的です。

・小さな改善テーマ(物品配置、記録の手順、申し送りの方法など)を短期間で任せる。
・後輩への関わり方を自分で考え、実践する役割を担ってもらう。
・困りごとの拾い上げ係を決め、月1回だけ管理者と擦り合わせる。

ポイントは、任せっぱなしにしないことと、成果を「できた/できない」ではなく「どう工夫したか」で扱うことです。そうすると、挑戦のハードルが下がり、次の一歩が踏み出しやすくなります。

「なりたい人を探す」から「育つ構造をつくる」へ

今回の調査結果は、管理職志向が低いという現象を通じて、組織側の課題も映し出しているように思えます。管理職を増やすかどうかではなく、管理職に集まっている負担をどう分け、役割の価値をどう共有し、経験の機会をどう設計するか。ここが整うほど、担い手は自然に生まれやすくなります。

介護・福祉の現場は、目の前のケアが最優先になりやすい分、マネジメントの土台づくりが後回しになりがちです。それでも、日々の仕事の中で少しずつ役割を渡し、経験を積む流れをつくっていくことは可能です。

管理職になりたい人を待つのではなく、現場リーダーが育ちやすい環境を整える。まずは、管理職の仕事を小さく切り出し、任せられそうな一つを見つけるところから始めることが大切です。

【この記事を書いた人】
太田 高貴
株式会社Blanket採用コンサルタント / 社会福祉士 / 一般社団法人総合経営管理協会 認定採用コンサルタント

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