「未経験者歓迎」を形だけにしない!介護・福祉現場で新人が定着する職場づくりのポイント【“読む”介護の組織をよくするラジオ】
公開日:2026/03/12 更新日:2026/03/12
株式会社Blanketがお届けするポッドキャスト「介護の組織をよくするラジオ」の要点やポイントをまとめた“読むラジオ”です。各エピソードで取り上げたテーマをもとに、介護・福祉の現場で今まさに起きている変化や、組織づくりのヒントを紹介しています。
介護・福祉業界の求人で必ず見かける「未経験者歓迎」。人材確保の間口を広げる言葉である一方で、未経験者を採用しても、現場で十分な教育やフォローができず、早期離職に至るケースは少なくありません。
その背景には、「未経験者歓迎」と掲げながらも、育成を前提とした体制や現場の余力が整っていないという構造的な課題があります。
今回は「未経験歓迎」が形骸化してしまう理由を整理しながら、未経験者が定着しやすい職場とは何か、そして「未経験歓迎」を掲げる受け入れる側が押さえるべきポイントについてご紹介します。
【今回のパーソナリティ】
・野沢(Blanket/取締役、人事・採用コンサルタント)
・太田(Blanket/採用コンサルタント)
・大坪(Blanket/採用コンサルタント、聞き手)
求人広告を開いてよく目にする「未経験歓迎」という言葉。字面通り「未経験でも受け入れます」という意味ではあるけれど、受け入れ側の覚悟として「本当に?」と疑問に思う現場も少なくありません。
私も採用担当時代、その言葉を使っていました。今振り返ると、正直なところ「まずは人数を集めたい」「母集団を広げたい」という意図が先行していたな、と。同じように、入り口を広げるための“フック”として使っている事業者は、実は多いのではないでしょうか。
介護・福祉の採用で使う「未経験者歓迎」には2種類ある

介護・福祉業界の求人で使われる「未経験者歓迎」は、2種類に分類することができます。
まず「未経験者ウェルカム」。これはより多くの母数を受け入れるために使われる表現です。応募資格を問わないという意味でもよく使われます。
一方が「未経験者フレンドリー」。こちらはウェルカムとは異なり、未経験者でも働きやすい環境を整えていますという意思表示になります。
”初心者に優しい設計”があるかが両者の大きな違いです。
ラーメン屋に例えると、「お店ルールが多くて、ルールを知らない初心者に厳しい店」は未経験者フレンドリーではないといえます。
「お店ルールはあるけど、そのルールがちゃんとメニューに記載されていたり、店員さんが丁寧に説明したり質問に答えてくれるお店」は未経験者フレンドリーといえると思います。
未経験者を受け入れる前に意識したい視点3つ
「未経験者歓迎」の文言は、募集を出す側と応募する側では、その期待値が異なることも少なくありません。
ここでは「未経験者とは」を定義しながら、未経験者を迎える際に知っておくべき視点を紹介します。
視点1:未経験者とは「その職場のルール」を知らない人のこと
介護・福祉の現場では「無資格=未経験」と思われがちですが、本来は「その職場の文化や言葉を知らない人」すべてが未経験者です。
たとえ10年のベテランでも、あなたの施設に入れば「その職場の未経験者」。この認識を持つだけで、受け入れ側の準備は劇的に変わります。
視点2:混乱の原因は「教え方」ではなく「軸の不在」にある
新人が「教える人によって言うことが違う」と悩むとき、問題の本質は指導者のスキル不足ではありません。組織の中に「何を最優先するかという判断基準(軸)」が共有されていないことにあります。
しかし、介護・福祉の現場に限らずあることですが、現場では「正解」が一つとは限りません。
そこで大切なのは、具体的なやり方を統一すること以上に、「迷ったときに立ち返るべき判断の基準(軸)」を入社時にしっかり伝えることです。本人が「自分で考えるための材料」をあらかじめ渡しておくことが、入社直後の孤独な不安を和らげます。
現場をガチガチのマニュアルで固めるよりも、「ここだけは絶対にぶらさない」という軸を定め、それを入社時にしっかり伝えておく。それが、未経験者が現場で自分なりに考え、動くための道標になると思うんです。
指導者によって「やり方」が違うこと自体は、必ずしも悪いわけではありません。介護や福祉は目の前の利用者さんに合わせた「解釈」が必要な仕事ですから、アプローチに幅が出るのは当然です。
大切なのは、誰の介助を見たとしても「なぜそれをやっているのか」という根っこの部分がズレていないこと。そこさえ共有されていれば、新人も「やり方の違い」に惑わされずに済むはずです。
視点3:「カチッと固める」と「幅を持たせる」マニュアルの分け方
未経験者向けのマニュアルはあるに越したことはありませんが、すべてをマニュアル化して縛る必要はありません。
未経験者でも混乱しないようにするためには、「事務的なルール」「具体的な支援アプローチ」での分類が効果的です。
| 事務的なルール(有給・シフト・報告経路など) | 誰が聞いても同じ答えが返ってくるよう、組織として「カチッと」固めておくべき部分 |
| 具体的な支援アプローチ | 利用者一人ひとりに合わせるため、あえて「幅」を持たせておく部分 |
この境界線を明確に伝えることで、新人は「守るべきこと」と「工夫していいこと」の区別がつき、のびのびと動けるようになります。
「未経験者歓迎」と書くなら、“来てもいい”という許可を出すだけでなく、迷ったときにいつでも戻れる場所(軸)を用意しておくことが大切です。それが、入った後の安心と定着につながる設計図になります。
介護・福祉の採用では、「未経験者歓迎」と掲げるだけでなく、受け入れ体制や育成の設計をどう整えるかが定着のポイントになります。
Blanketでは、介護・福祉事業所の採用の進め方をまとめた「採用スタートガイド」を公開しています。採用を見直したい方は、下記バナーからぜひ無料でダウンロードしてみてください。
新人が迷わない!未経験者フレンドリーな職場を作る方法

「未経験者歓迎」と掲げて採用しても、すぐに辞めてしまう……。そんな悩みを抱える福祉・介護現場に必要なのは、教育カリキュラムの前に「組織としてどう迎え入れるか」という設計です。
新人さんの「何がわからないかわからない」を解消し、心理的安全性を高めるための3つのステップを紹介します。
解決策(1)つまずきポイントを蓄積する
未経験者が最初に対面する壁は、技術よりも専門用語などの「業界や現場の当たり前」です。教える側は慣れすぎていて、何が難しいかに気づけないため、未経験者の混乱に気付けない可能性があります。
ここで有効なのが、未経験者の声をベースにマニュアルを構築して、「つまずきポイント」を蓄積すること。
新人がわからなかった言葉やコトを記録し、それを次の新人に引き継ぎましょう。それによって未経験者視点で進化する資料ができ、同じ質問を何度も聞く心理的負担を減らせるだけでなく、自分で確認できる安心感を確保できます。
解決策(2)「聞く勇気」に頼らない仕組みを作る
「わからないことがあったら、いつでも聞いてね」という言葉。実はこれ、新人にとっては一番ハードルが高い言葉かもしれません。
「さっきも聞いた」「忙しそう」「呆れられるかも」という不安が、質問を飲み込ませてしまうからです。
これを個人の勇気で解決しようとするのではなく、「まずは自分で確認できる場所」を仕組みとして用意しましょう。例えば、蓄積したつまずきポイントを用語集やFAQとして新人の手の届く所に置いておきます。
自分で調べられる「止まり木」があることで、新人は「前に教えた」と思われる恐怖から解放され、教える側も同じ説明を繰り返すストレスが減り、双方が余裕を持って関わることができるようになります。
解決策(3):ウェルカム感は“演出”する
未経験者がフレンドリーを実感するためには、本人が歓迎されていると感じられるような、あえての“演出”が必要です。新人は新しい環境に馴染もうと一生懸命な分、「何者でもない自分」に萎縮し、質問を遠慮したり孤独感を感じたりしがちだからです。
特に、介護・福祉の現場はシフト制で全員が一度に顔を合わせることが難しいため、偶然の出会いに任せず、意図的に「人との接点」を設計することが欠かせません。
これは単なる気遣いではなく、「人脈学習(組織社会化)」という立派なOJTの一環です。業務を教えることと同じくらい、早くその職場に馴染めるよう「繋がり」を持たせてあげることは重要です。
・誰が何をしている人か
・困ったとき、誰に聞けばいいか
・組織内のコミュニケーションはどう流れているか
これらを知っているかどうかで、業務の習得スピードは劇的に変わります。デスクへのメッセージ、チームからの寄せ書き、あるいは自己紹介シートの共有。こうした小さな「演出」が、新人にとって「人脈」という武器になり、組織の一員としての第一歩を支えます。
昔、異動した先の上司が、近隣の全事業所に「新しく来た太田です」と挨拶に連れて回ってくれたことがあったんです。それが驚くほどその後の仕事のやりやすさに繋がりました。10年以上経った今でも感謝しているくらい、心強い経験でした。
Blanketの社内でも、自己紹介シートをパワポ1枚にまとめて更新していますよね。前職のことや「こんなことなら聞いてね」という人となりがわかるだけで、全く知らない人の中に飛び込む不安はぐっと減るはずです。
まとめ|未経験者フレンドリーな職場は強い組織への第一歩
「未経験者フレンドリー」な職場を目指すことは、単に新人をフォローすることにとどまりません。
「職場の未経験者」を基準に、誰もが迷わない判断軸を作り、人との接点を丁寧に設計する。こうした取り組みが定着している職場は、介護・福祉の経験者はもちろん、異業種からの転職者やブランクを経て復帰する人など、「新しい環境で一歩を踏み出すあらゆる人」にとって、最高のパフォーマンスを発揮できる強い組織になれるはずです。
受け入れ体制を整えることは、既存のスタッフにとっても、自分たちのケアやルールを再確認し、よりシンプルで風通しの良い職場へとアップデートしていくチャンスでもあります。
きっと現場の皆さんも、「本当はやらなきゃいけない」と思いながらも、どうしても後回しになっちゃうことだと思うんです。
でも、新しい方が入るタイミングを一つのきっかけにして、「よし、プロジェクトとしてちゃんとやろう!」って向き合ってみる。一度形にしたものを、また次の新入社員の方と一緒にアップデートしていけるような「型」を作っていく。そこに時間を割くことって、やっぱりすごく大事なんだなって思いました。
皆さんが、今日から、小さくてもいいので本気で取り組んでいただけるとうれしいです。
「完璧を目指さなくていい、小さく始めることが第一歩」です。未経験者と一緒に成長できる組織を、ぜひ楽しみながら作っていってください。
【今回の「介護の組織をよくするラジオ」を聞いてみる】
■♯14-① 「未経験者歓迎」って本当?“ウェルカム”と“フレンドリー”の違いを考える
Spotify| YouTube
■♯14-②「未経験者フレンドリー」な職場はどうつくる?迎え方・教え方・つながり方の工夫
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「介護の組織をよくするラジオ」では、皆さまの声をもとに、次のテーマづくりや企画を行っています。
・ラジオで扱ってほしい話題
・現場で感じている疑問やモヤモヤ
・「うちではこんな工夫しているよ」という実践事例
・番組の感想 など
どんな小さなことでも大歓迎です。皆さまの現場での視点や気づきが、次のエピソードづくりのヒントになります。