小規模事業所ストレスチェック義務化に向けて。マニュアル公表で見えてきた実務対応のポイント
公開日:2026/03/23 更新日:2026/03/23
介護・福祉の人事・組織づくりを支援するコンサルタント・太田が、話題のニュースやトレンドから、現場で役立つヒントを読み解く連載コラム。今回の“ひとさじ”では、厚生労働省が公表した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」をもとに、義務化に向けて介護・福祉事業所が今から考えておきたい実務対応のポイントを整理します。
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法では、これまで努力義務とされていた労働者50人未満の事業場でのストレスチェック実施が義務化されることになりました。施行時期は公布から3年以内とされており、今後政令で具体的な開始時期が定められる予定です。
これを受けて厚生労働省は2026年2月25日、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。
こちらのコラムでもこれまで、小規模事業所におけるストレスチェック制度の考え方や、制度運用のポイントについて取り上げてきました。今回の実施マニュアル公表は、制度の方向性を踏まえつつ、実際の運用をより具体的に整理した資料が整ったという意味を持っています。
今回のマニュアルは、小規模事業場でも制度を実施できるよう、実施体制や運用方法、プライバシー保護の考え方などを整理したものです。制度の方向性そのものはすでに示されていましたが、実際の運用イメージがより具体的に整理されたことで、制度の進め方を確認できる材料が一段と揃った形になります。
施行まで一定の期間があるとはいえ、制度の枠組みが具体化してきたことで、事業所としても少しずつ準備の方向性を考えやすくなってきました。介護・福祉分野は小規模な事業所が多く、50人未満の事業場も少なくありません。
その意味では今回のマニュアルは、制度の解説資料というよりも、事業所として制度をどのように運用していくかを考えるための実務資料として確認しておきたい内容といえます。
マニュアル公表で具体化した運用の考え方
今回公表されたマニュアルの特徴は、小規模事業所の実情を踏まえた制度運用の考え方が整理されている点にあります。
制度の概要だけでなく、実施の際に注意すべきポイントや基本的な手順が具体的に示されています。特に確認しておきたいポイントの一つが、プライバシー保護の考え方です。ストレスチェック制度では、職員の心身の状態に関する情報を扱うため、個人情報の取り扱いが重要になります。
特に人数の少ない職場では、「結果が特定されてしまうのではないか」といった不安が生まれることもあります。マニュアルでは、個人結果の扱い方や守秘義務の考え方などが整理されており、制度運用の基本的な線引きが示されています。
結果は本人に通知されるものであり、事業者が自由に閲覧できるものではないという原則も改めて明確にされています。制度を実施する際には、こうした仕組みを職員に理解してもらうことも大切になります。
小規模事業所でも実施できる体制
50人未満の事業所では、産業医などの専門職が常駐していないケースも少なくありません。そのため、制度をどのような体制で実施するのかという点は、多くの事業所にとって現実的な関心になります。
マニュアルでは、実施者や事務従事者の役割、データ管理の方法などについて整理されています。小規模事業所でも制度を実施できる体制の考え方がまとめられており、事業所ごとの体制に合わせて検討できる内容となっています。
また、制度の流れについても、調査票の配布・回収、結果の本人通知、高ストレス者への面接指導の案内、集団分析といった基本的な手順が示されています。制度そのものは複雑ではありませんが、実際の運用では役割分担や情報管理などをあらかじめ整理しておくことが重要になります。
今回のマニュアルは、その確認のための参考資料として活用できる内容になっています。
介護・福祉事業所にとっての意味
介護・福祉分野では、少人数のチームでサービスが提供されている事業所も多くあります。
そのため、職員一人ひとりの状態が職場全体に影響しやすい環境でもあります。業務の忙しさや役割の偏りが続くと、気づかないうちに負担が蓄積してしまうこともあります。
ストレスチェック制度は、職員の状況を定期的に確認し、必要な支援につなげる仕組みとして位置づけられています。制度への対応という側面だけでなく、職場の状態を振り返る機会として捉えることもできる制度です。
制度開始までに考えておきたいこと

今回のマニュアル公表によって、制度運用の基本的な考え方はかなり整理されました。ただし、実際の実施方法は事業所の規模や体制によって異なります。
そのため、事業所としては例えば次のような点を整理しておくと制度導入が進めやすくなります。
・どのような方法でストレスチェックを実施するか
・実施体制をどのように整えるか
・個人情報の管理方法をどうするか
・面接指導が必要になった場合の対応方法
制度が始まってから準備を進めるよりも、マニュアルを参考にしながら自事業所の運用方法を検討しておくことで、実施時の負担も小さくなります。
制度対応をきっかけに職場環境を見直す
小規模事業所では、新しい制度が導入されると「また業務が増える」と感じる場面もあるかもしれません。一方で、ストレスチェック制度は、働く人の状態を把握し、職場環境の改善につなげるための仕組みでもあります。
忙しい職場だからこそ、職員の働き方や負担のかかり方について改めて確認する機会を持つことは、長く働き続けられる職場づくりにも関係してきます。
今回公表されたマニュアルは、制度の具体的な運用を確認できる資料が整ったという意味でも、準備を進めるための参考資料といえそうです。
まずは内容を確認し、自分たちの事業所ではどのような形で制度を運用していくのが現実的なのかを整理してみてはいかがでしょうか。
