介護・福祉業界の採用手法5選!採用成功のポイントや事例も解説
2025/08/21

介護現場では「人が足りない」「すぐに辞めてしまう」といった声が、日々聞かれます。採用を担当する方にとっては、常にプレッシャーと向き合う日々かもしれません。
とはいえ、求人広告を出すだけではうまくいかないケースも多く、今の時代には“戦略的な採用手法の選択”が求められます。現場の声や採用の目的に合わせた手法を選ぶことが、成功の第一歩です。
そこで今回は、介護業界の5つの採用手法とそれぞれの特徴、メリットデメリットなどを介護・福祉業界に特化した採用・人事コンサルタント監修のもと紹介します。併せて、採用手法の選び方や取り入れたいコツ、実際に採用に成功した施設の事例なども解説します。

【監修者】
太田 高貴
株式会社Blanket採用コンサルタント / 社会福祉士 / 一般社団法人総合経営管理協会 認定採用コンサルタント
介護業界の採用手法5選!失敗しないためのメリット・デメリット比較
介護現場で人材を確保するためには、ターゲットや予算に合わせて、適切な採用手法を選ぶことがとても大切です。ここでは代表的な5つの採用手法それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
比較項目 | 直接募集 | 求人サイト | 人材紹介サービス | ハローワーク | リファラル |
---|---|---|---|---|---|
特徴 | 自社サイトやSNSで募集 | 求人情報をWebに掲載 | 条件に合う人材を紹介 | 公的な職業紹介サービス | 職員からの紹介 |
メリット | 伝えたい情報を自由に発信できる共感層が集まりやすい | 多くの人に見られる | 希望に合う人材を確保採用工数を減らせる | 無料で利用できる公的サービスで安心感がある | 定着率が高くミスマッチが少ない |
デメリット | 認知度がないと届かない自社サイトやSNSに辿り着くまでの導線設計が必要 | 求人が埋もれやすい目に留めてもらうには工夫が必要費用がかかる | 成功報酬が高額になりやすい | 掲載情報に制限がある応募層のスキルや熱意に偏りがある | 紹介してもらえるとは限らない紹介者と求職者の人間関係への配慮も必要 |
どれか一つの手法を選択するのも良いですが、適切だと思う方法が複数ある場合は、組み合わせて採用計画を立てるのも有効です。
(1)直接募集
直接募集は、自社の採用ページやSNSを活用して求職者を募集する方法です。
費用負担をそれほど考慮する必要がないため、伝えたい情報を自由に掲載できます。施設の想いや方針をしっかり伝えたい場合に向いている手法です。
またサイトやSNSを閲覧している層は、もともと自社への興味関心が高いため、定着率が高い傾向にあるのも、この手法のメリットです。
ただし認知度がなければ、求職者に自社サイトやSNSに辿り着いてもらえません。日ごろからの情報発信や導線設計がポイントとなります。
(2)求人サイト
Webの求人サイトに掲載する方法は、多くの人に見てもらえるため、募集の母集団を増やしやすいのがメリットです。加えて介護業界に特化したサイトを使えば、必要な人材にピンポイントで訴求できます。
ただし求人サイトは掲載数が非常に多く、他施設の求人に埋もれてしまうことも少なくありません。
本文やタイトル、さらに検索してもらいやすいキーワードの設定などの対策が必要です。さらに掲載費用が高額になることもあるため、コスト面にも注意が必要です。
(3)人材紹介サービス
人材紹介サービスは、エージェントを通じて自社の条件に合った人材を紹介してもらう方法です。
自社と希望者のニーズ、それぞれに合う人材を紹介してもらえるため、ミスマッチが発生しにくいというメリットがあります。マネジメント経験のある介護職従事者など、採用難易度の高い人材の採用にも有効です。
一方で、採用に至った場合は費用が発生するため、事前に条件面を十分にすり合わせておくことが大切です。
(4)ハローワーク
公的機関であるハローワークは、無料で求人を出すことができます。公的サービスとしての安心感がある点も、この手法の魅力です。
ただし、求人票に掲載できる情報が限られており、ハローワークに求人を出すのみでは、自社の魅力を伝えにくいという点には考慮が必要です。
採用コストは抑えられるものの、地域によってはハローワークからの応募がまったくないという話も聞きます。
さらに応募者のスキルや経験値の偏りが生じやすいことや、積極的な求職活動をしていない層が含まれる可能性もあります。
(5)リファラル
リファラルとは、現在働いている職員からの紹介によって採用する方法のことです。すでに職場の雰囲気を知っている紹介者を通じて入職するため、ミスマッチが起きにくく、定着率が高いのが大きな魅力です。
ただし、紹介してもらえるかどうかは、職場環境や働きやすさに対する職員の満足度に左右されます。また、適した人材がタイミングよく見つかるとは限らない点や、紹介者と紹介される人物の人間関係への配慮も必要です。
なぜ介護業界には人が集まらないのか?課題と採用手法の選び方

そもそも、日本では人口減少によって全産業の有効求人倍率が上昇し、多くの産業で売り手市場となっています。それにより、介護業界への人材流出が進まず、人材確保に苦慮しているという構図が発生しています。
なぜ介護業界の人材不足は、なかなか改善されないのでしょうか。
人材採用競争が激化しているため
人材採用競争が激化している背景の大部分を占めるのは、競争そのものの激化です。
有効求人倍率の数値は都市部ほど高い傾向にあり、令和4年版厚生労働白書によると(※2)、東京都は5.65倍と非常に高く、最も低い沖縄県でも2.20倍と、介護現場は長年にわたり深刻な人手不足に直面しています。
さらに、少子高齢化が進むなか、介護を必要とする人は増加していますが、介護職員の数は比例して増えておらず、2026年度に必要とされる約240万人(※3)に届く見通しは立っていません。
このような背景から、どの施設も採用に苦戦しており、せっかく応募があっても他の施設に流れてしまうことや、内定後に辞退されてしまうといったケースも珍しくありません。
「同業種で人材を取り合う構図」から抜け出すためには、「自社ならではの魅力」を感じてもらうための工夫や、優位性を出せるか、求職者との接点をどう確保するかが大きな課題になります。
※1 令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-|厚生労働省
※2 厚生労働省|第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
離職者が多いため
令和5年度「介護労働実態調査」(※1)によると、訪問介護員・介護職員の平均離職率は13.1%と、近年は減少傾向にあります。一方で、事業所ごとのばらつきが大きいという実態もあり、約半数の事業所では離職率10%未満ですが、一部(5.6%)では50%を超える離職も見られるなど、職場によって定着状況に差があるのが実情です。
離職理由として多いのが、職場の人間関係や業務内容とのミスマッチです(※2)。せっかく採用しても長く続かないと、採用コストばかりが増えてしまいます。
対策として入職前の見学会やリファラル採用の強化など、事前に職場の雰囲気を知った上で入職してもらう取り組みが有効です。
※1 令和5年度「介護労働実態調査」|公益財団法人介護労働安定センター
※2 介護人材確保の現状について|厚生労働省
労働条件に悪いイメージがあるため
介護の仕事はかつて「きつい」「給与が低い」といったマイナスイメージを持たれがちでした。現在では、労働条件は改善されてきてはいるものの、就職先としていまだに敬遠されがちです。
実際、令和7年5月の有効求人倍率は、介護職が平均3.41倍であるのに対し、全体の平均は1.24倍(※)にとどまっています。この数字からも、介護職における深刻な人材不足が顕著であることが分かります。
介護業界のこうしたネガティブな印象を払拭するためには、労働環境の良さやキャリアアップの道筋など、ポジティブな面を明確に伝えることが大切です。
人材を確保するためには、「安心して働ける職場」であることを明確に打ち出し、入職への心理的ハードルを下げることが大切です。
採用手法の選び方は?求職者のニーズに応じた使い分け

介護業界で求職者が求める情報は、これまでの経験の有無や転職理由によって変わってきます。
そのためターゲットに合わせた採用手法を設計することが、人材確保において欠かせません。ここでは、経験者と未経験者、それぞれの求職者に合わせた採用手法の工夫について見ていきましょう。
経験がある求職者向けの採用手法
介護職の経験者が転職を考える背景には、職場環境への不満やキャリアの停滞、人間関係によるトラブルなどが考えられます。
そうした「前職で満たされていなかった部分」が、自社では実現できることを示す工夫が、経験者をターゲットにした場合の採用手法として求められます。
たとえばホームページやSNS、口コミといった情報源を通じて、働く職員の声や職場の雰囲気、キャリアパスなどを可視化する方法が有効です。前職での不満を解消できる可能性を示すことで、自社への入職に意欲的になってもらえます。
また、介護職経験者は自分の仕事に誇りを持っている人が多いため、企業理念や事業体制に共感・納得できる環境であることも重要です。
中途採用者向けの説明会や職場見学を行うことで、入職前の不安やミスマッチの防止につながります。
未経験・無資格の求職者向けの採用手法
介護業界未経験で無資格の求職者は、「自分にもできるだろうか」という不安を抱えていることがほとんどです。そのため採用活動においては、こうした不安を払拭するアプローチが必要になります。
たとえば、介護の仕事を実際に体験できるセミナーや講習会の開催などが効果的です。未経験者の採用実績の提示、入職後の研修制度や資格取得支援の紹介なども、未経験・無資格の求職者の不安を取り除くのに役立ちます。
ただしこうした制度の内容を、ただ単に求人票や募集サイト、自社サイトなどに羅列するだけでは、求職者には響きにくいものです。実際の現場の声や具体的なストーリーを交えて伝えることで、制度の信頼性や魅力がより伝わりやすくなります。
「なぜこの制度があるのか」「未経験者をサポートしたいと考える理由」といった制度が生まれた背景も合わせて伝えると、より深く共感を得られます。
介護業界で成果につながる“ひと工夫”採用テクニック5選
人手不足が深刻な介護業界では、数多くの施設が採用手法に悩まされています。
数多くある候補の中から目立つためには、採用時に「ひと工夫」を加えることが大切です。ここからは、人員確保に向けて取り入れたい採用テクニックのポイントを紹介します。
採用ターゲットを明確にする
採用を成功させるには、どんな人に来てほしいかを明確にすることが大切です。具体的なターゲットを設定することで、ターゲットに有効な採用手法や募集媒体なども見えてきます。
ターゲットを明確にすることが難しい場合は、自社で活躍している職員をロールモデルとするのも良いでしょう。その人物の志向や価値観に合わせて情報を発信することで、採用のミスマッチが発生しにくくなります。
丁寧な面接を行う
面接は求職者を見極める場であると同時に、職場の魅力を伝える重要な機会です。
仕事内容だけでなく職場の雰囲気や理念も伝えることで、求職者は自分が働く姿を想像しやすくなります。希望者がいれば施設の見学も行い、入職後のイメージを持ってもらうと良いでしょう。
採用のミスマッチを防ぐためには、入職前にこうした丁寧な面接を行うことがポイントです。
内定通知は早めに行う
応募者の多くは、複数の施設に同時に応募していることが一般的です。そのため、選考に時間がかかると他社に流れてしまうリスクがあります。
「良い」と感じた人材にはできるだけ早く内定通知を出し、意向確認をしましょう。また連絡もこまめに行うことで、内定辞退を防ぎやすくなります。
内定者フォローを行う
内定が決定した後も、入職当日まで継続してフォローすることも内定辞退を防ぐ上で大切です。
SNSで職場の雰囲気を伝えたり、LINEグループを使って質問しやすい環境を作ったり、入職までの間に「つながり」を持たせたりすることで、職場への信頼感や安心感が増します。
新卒や未経験者には、内定後に職場体験や現職員と交流の機会を設けるのも有効です。
入職後のコミュニケーションを大切にする
採用のゴールは入職そのものではなく「入職後にいかに定着し、力を発揮してもらうか」です。メンターや相談できる相手をつけることで、業務への不安・不満の早期解決につながり、長く安定して働ける環境を築けます。
また、中途採用者は以前の職場との違いに戸惑うことが多く、孤立しがちです。さらに、新卒採用と比べて研修が十分に行われない場合もあり、そのためさらに孤立感を感じやすくなります。入職日まで放置せず、定期的に声をかける機会を設けることが、定着率の向上につながります。
介護業界の採用手法別・成功事例2選
ここでは実際にターゲット設定から採用手法の選定、発信の工夫までを丁寧に行い、採用に成功した2つの事例を紹介します。
自社の採用活動を見直すヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
(1) 株式会社ゆず

株式会社ゆずはターゲットを明確にし、適切な採用手法を選択できた事例です。
新エリアでの施設開設にあたり、「ゆずらしさ」を軸に採用活動を強化することになった同社は、Blanketの支援のもと、求める人物像を「理念に共感できる層」としました。
ターゲットからの応募を目指す上で、ホームページや説明会では理念を丁寧に発信することを重視。また候補者とは個別にじっくり対話する時間も設けた結果、採用活動に不慣れな中でも、常勤介護職23名の採用に成功しました。
(2) 有限会社ダイケイ

有限会社ダイケイは、採用計画において重視するポイントを明らかにすることで、適切な採用手法を選択できた事例です。
同社は地域に根差した介護施設「笑楽日(わらび)」を運営している会社です。採用施策を代表が1人で行っていましたが、日々の業務と並行することに限界を感じ、Blanketと共に採用計画を見直すことになりました。
まずは「笑楽日らしさ」を明確し、スタッフとともに評価制度の項目や行動指針を作成することからスタート。その後、「らしさ」を軸にしながら情報発信を強化したことで、応募者の層にも変化が生まれました。
採用後も定着率の向上を目指して制度運用を継続し、離職率は38%から10%未満まで改善することに成功しています。「ここで働き続けたい」と思える職場づくりが、実現しました。
自社だけで中途採用の求人計画を進めるのが難しいと感じたときは、採用支援の仕組みやコンサルティングサービスを活用することも、選択肢の一つです。
介護・福祉業界に特化したBlanketでは、採用課題の整理から、求人運用・媒体選定・原稿作成まで、現場のニーズに寄り添った伴走型の支援を行っています。
「採用を進めたいけれど、どこから手をつければいいか分からない」。そんなお悩みがある方は、まずは無料相談で採用計画に合った最適なサポートをご提案します。
まとめ
介護業界で採用を成功させるためには、まず「どんな人に来てほしいか」というターゲットを明確にすることが大切です。そのうえで、その人物像に合った採用手法を選び、伝えたい魅力をどのように届けるかまで考える必要があります。
とはいえ採用活動には多くの時間とエネルギーが必要です。現場を支える中で、すべてを自社だけで進めるのが難しい場合もあるでしょう。そんなときは、採用のプロに相談することもぜひご検討ください。
大切なのは、無理なく確実に、良い人材と出会えること。そのために、今の自社にとってベストな方法を見極め、取り組んでいきましょう。