最新データで押さえる!介護・福祉の新卒採用─26年卒から学ぶ27年卒採用戦略
公開日:2025/11/06 更新日:2025/11/07
全職種での新卒採用の競争が激しくなる中で、介護・福祉の仕事を目指す若い世代の確保は難易度を増しています。
価値観や働き方への考え方が多様化する今、次世代の人材にどう関わり、どう育てていくのか──。
今回は、株式会社Blanketの採用コンサルタント松川が、26卒の新卒採用の傾向を踏まえ、来たる27卒の新卒採用に向けたヒントと戦略を解説します。
新卒採用市場の最新動向
大学進学率が年々上がっているため、人口減少が取り沙汰される最中でも学生数自体は大きく減っていません。大学進学者数のピークは2026年とされ、以降は緩やかに減少する見込みです。採用現場で実感するのはおそらく3年後以降になるでしょう。
大卒の有効求人倍率は、1.66倍(※1)と売り手市場が続いています。株式会社マイナビの調査(※2)によると、採用予定数は「増やす・例年並み」と回答する企業が合わせて80%近くにのぼります。つまり、学生数は減っていなくても、求人が増えているため売り手市場は来年も続く見込みです。
また、近年の人材競争の影響を受け、新卒者に対する賃上げの動きが広がっています。上場・非上場ともに約8割企業で賃上げを行い、初任給は25卒と比べ、上場企業で14,256円、非上場企業で8,793円の増加(※2)しています。
賃金を引き上げたり待遇を改善したりすることが求められる社会的な流れが強まっています。
しかし、すぐに賃金を上げることが難しい場合でも、働きやすい職場づくりや環境面の改善など、できることから取り組むことが大切です。
また、そのような取り組みや今後の対応方針を、学生にしっかりとわかりやすく伝えていくことも重要です。
※1 大卒求人倍率調査(2026年卒)|リクルートワークス研究所
※2 マイナビ 2026年卒 企業新卒採用予定調査|株式会社マイナビ
26卒が抱く介護・福祉業界へのイメージ
採用市場の変化に伴い、26卒の学生は介護・福祉業界に対してどのような印象を持っているのでしょうか。
株式会社マイナビの「2026年卒大学生 業界イメージ調査」(※)では、40業界のうち、介護・福祉サービス業界は「人の役に立つ」が1位にランクイン。「女性の活躍」は5位、「将来性」は6位という結果が出ています。

一方で、マイナスイメージでは、「休日・休暇・労働時間」「給与・待遇」「職場の人間関係」「福利厚生の充実度」などが、全業界でワースト1位にランクインするなど、マイナスなイメージが払拭できていない現状も浮き彫りになりました。

しかし、ネガティブなイメージが先行する中でも、対話や業界研究により「いいイメージに変わった」という学生が一定数(3.4%)いることは注目に値します。丁寧な説明と対話を通して、イメージ転換は可能であるといえます。
介護・福祉業界のイメージは、学生としっかり話をして説明したり、業界の良さを伝えたりすることで変わる可能性も大いにあります。そのためには、地道なPR活動の展開が求められます。
※ マイナビ 2026年卒 大学生 業界イメージ調査|株式会社マイナビ
26卒の就職活動の状況

26卒の学生の就職活動では、次の4つのポイントが傾向としてみえてきました。こうした傾向は27卒にも続く可能性があるため、戦略を設計する前に抑えておきましょう。
1. 早期化
学生の内定獲得時期が年々早まっており、2〜3月には内定を得る学生が多い傾向。企業の面接・内々定の時期も前倒しになっています(※1)。
2. 情報接触の時期
学生が企業情報に初めて触れる時期は3月以前が80%以上。PR活動は3月以前に始めることが効果的です(※2)。
3. キャリア意識
大学1〜2年生のうちにキャリア形成を考える学生が増加。インターンシップへの参加率は85.3%で、平均5.2社(※2,3)。参加した企業の選考を受ける割合は89%と高く、インターンシップの質が非常に重要です。
4. エントリーと内定
エントリー社数は平均6.4社(※4)、内定保有数は平均1.73社(※2)。以前より数を絞ってエントリーし、納得感を重視している傾向があります。
第一志望の志望理由は「自分の価値観に合いそう」が最多。企業への興味、学びの活かし方が続きます。
インターンシップの内容を充実させ、学生との接点を深めることがポイントの一つです。早期化に合わせて、面接や内々定の時期も10〜2月を目安に前倒しし、スムーズな採用プロセスを設計していくことが求められます。
※1 マイナビ 2026年卒 企業新卒採用予定調査|株式会社マイナビ
※2 マイナビ 2026年卒内定者意識調査|株式会社マイナビ
※3 2026年卒 大学生広報活動開始前の活動調査|マイナビキャリアサーチラボ
※4 マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就職活動・進路決定>|株式会社マイナビ
27卒の採用活動に向けて押さえておきたいポイント
学生の価値観や就職観が多様化する中、従来の採用手法だけでは十分に効果が出ません。
27卒採用に向けては、「学生が何を重視しているのか」を正確に捉え、自社の強みやメッセージを的確に伝える工夫が欠かせません。
ここでは、これからの採用活動で特に意識したい3つの視点を紹介します。
PR活動は「あなたに響く」をキーワードに
新卒世代であるZ世代は、SNSやネットでパーソナライズされた情報を受け取ることに慣れており、「法人の良さと自分の価値観が合う」=「共感できるか」を重視する傾向にあります。
Z世代の特徴として、特に押さえておきたいポイントは次の4点です。
・安定志向・堅実志向
・ブランドより「価値観の一致」を重視
・物より「体験・意味消費」
・多様性・自分らしさを重視
こうした傾向を持つ学生には、「みんなに刺さるPR」は響きません。「あなたに響くPR」を設計することが重要です。

また、Z世代は「働きがい」に加え、「働きやすさ」も重視します。これは、自分の時間やライフスタイルを大切にしながら成長できる環境を求める傾向があるためです。PRでは、それぞれを分けて見せ、両輪で発信することを意識しましょう。
・働きがい=仕事のやりがい、成長、理念の共感
・働きやすさ=休日、福利厚生、職場環境、人間関係
価値観の多様化から、全学生をターゲットにしたPRは学生には届きにくくなっています。ターゲットを明確に打ち出し、「この人に響けばいい」という視点から戦略を展開していくことが重要です。
「働くイメージ」をコンセプトに落とす採用設計
学生にとって、企業に入社して「自分の強みを生かして働くイメージができるかどうか」は判断の重要な基準です。
だからこそ、説明会や見学、個別対応など、さまざまな場面や媒体で「働くイメージ」を丁寧に伝えていくことが大切です。学生が自分の働く姿を具体的に思い描けるようになることで、共感や安心感にもつながります。

そのためには自社の強みを深掘りし、他社では言えないレベルまで具体化することが欠かせません。どこにでもある「雰囲気が良い」「研修が充実」など抽象的な言葉では差別化できないためです。
実際に一貫したコンセプトの発信は、成果に繋がっています。鉄道弘済会・弘済学園では、「未来をつむぐ仕事」を採用コンセプトに策定しました。
弘済学園では、パンフレットや採用サイトで働く人の想いや仕事内容に加え、子どもたちへの支援のあり方や成長の過程を伝える事例を掲載。さらに、説明会や見学・選考などすべての接点で「未来をつむぐ仕事」のメッセージを統一し、「人手不足をどう埋めるか」ではなく「共感する人を集める」という採用戦略を実践しました。
その結果、募集枠が埋まるようになり、理念や想いに共感する人材の獲得に成功しています。詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
新卒採用は“出会う前”から始まっている
人材不足が指摘されている介護・福祉業界。志望者を増やす中長期的な取り組みも長い目で見ると効果的です。
近年は、高校生や大学1・2年生といった低学年のうちからキャリア教育に力を入れる学校が増えています。こうした早期の段階で福祉の仕事に触れる機会を提供することが、将来の“福祉を志す層”を育てる第一歩になります。

たとえば、学校との連携による出前授業や体験型インターンシップの実施、地域活動への学生参加などを通じて、福祉の理念や人と関わる仕事の魅力を体感してもらうことが有効です。
“種まき”の取り組みは、すぐに成果が出るものではありませんが、「福祉の仕事って面白そう」と感じる学生の母集団を増やすことこそが、2〜3年後の採用成功につながる確かな投資といえるでしょう。
まとめ
新卒採用における売り手市場と、就職活動の早期化は今後も続く見込みです。
学生の価値観が多様化する中で、「価値観が一致する企業」「自分の強みを生かして働く」といった傾向が浮き彫りになっています。
また、働きやすさに加え、「自分が活躍できるか」というイメージを重視する学生に対して、就労後の活躍イメージを具体的に示せるかが、非常に重要です。そのためには、ターゲット設定と自社の強みの具体化が鍵です。ありきたりな言葉ではなく、“らしさ”を言語化することで、差別化を計りましょう。
27卒採用はすでに始まっています。「これをすれば学生は来る」という飛び道具的なものは、残念ながらありません。だからこそ、大きな一発逆転策ではなく、自法人の活動を丁寧に振り返り、27新卒へ向けた改善を着実に行っていくことが何よりも重要です。
毎年の小さな調整と継続が成果を左右することを念頭に置き、PR活動を展開していきましょう。
「今年の新卒採用が思うようにいかず、改善点を見つけたい」「新卒採用の戦略を立て直したい」とお悩みではありませんか?
株式会社Blanketでは、これまで介護・福祉業界の新卒採用における戦略設計やコンテンツ制作を通じ、若手人材の採用支援に取り組んできました。
2027年新卒採用で成果を上げるには、早期の準備と戦略的アプローチが不可欠です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

【この記事を書いた人】
松川 由佳
株式会社Blanket採用コンサルタント / ワークショップデザイナー