株式会社BlanketKAIGO HR FARM外国人採用を「組織改革のチャンス」に。外国人人材が定着・活躍する組織のつくり方【“読む”介護の組織をよくするラジオ】

外国人採用を「組織改革のチャンス」に。外国人人材が定着・活躍する組織のつくり方【“読む”介護の組織をよくするラジオ】

公開日:2025/12/02 更新日:2025/12/02

株式会社Blanketがお届けするポッドキャスト「介護の組織をよくするラジオ」の要点やポイントをまとめた“読むラジオ”です。各エピソードで取り上げたテーマをもとに、介護・福祉の現場で今まさに起きている変化や、組織づくりのヒントを紹介しています。


慢性的な人手不足が続く介護・福祉業界で、新たな担い手として注目されている外国人人材。

しかし、“人手不足の穴埋め”としての外国人採用だけでは、定着や活躍にはつながりません。成功の鍵は、「受け入れる側の組織づくり」にあります

今回は、外国人材の受け入れをきっかけに「組織づくり」「マネジメント」をどうアップデートできるかを、採用現場を日々支援しているBlanketの採用・人事コンサルタントの野沢と、採用コンサルタントの大坪が考えます。

今回のテーマは、外国人採用です。皆さん結構気になってらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

テーマ自体はずっと言われ続けてきましたが、介護・福祉業界の人材確保の難易度が高まるなかで、いよいよ切羽詰まってきたと感じていますね。

介護・福祉業界に外国人人材はどのくらいいる?

外国籍の方が日本で介護の仕事をしたいとなった時、「誰でもOK」ということではなく、一定の資格や条件を持っている必要があります。

外国人人材の数は年々上昇を続けており、現在約7万3,000人が介護人材として就労できる特定のビザを取得し、日本国内で働いています(永住権・定住者は含まず)。

在留資格「介護」10,468人
技能実習生15,909人
特定技能44,367人
EPA(経済連携協定)3,252人


出典:外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について|厚生労働省

主な活躍領域は介護業務が中心ですが、障害福祉や訪問介護へも徐々に拡大中。令和5年の介護人材212.6万人に対して、外国人人材の数は介護従事者全体の3.4%ではあるものの、国内の介護人材不足が深刻化するなかで、その重要性はますます高まっています。

介護・福祉業界の外国人人材・受け入れの“いま” 

今後、ますます外国人人材を受け入れ、活躍の場が広がっていくということでしょうか。

もちろん、方向性としてはそうなると思いますが、そう一筋縄には行かないのが現状かと思います。

外国人人材の採用は年々広がりを見せていますが、「採用したあと」に課題を抱える事業所も少なくありません。

定着率やコミュニケーションなど、現場で見えてきた課題は“受け入れ方”の見直しを促しています。ここでは、採用・受け入れの最前線で起きている変化と、組織づくりの視点から見た課題を整理します。

広がる外国人採用と口コミのリアル

外国人人材の採用・受け入れを検討される介護・福祉事業所はどんなことに気をつけると良いのでしょう?

言語など業務の障壁をできるだけなくす丁寧な受け入れが重要です。日本人以上に、外国人人材の口コミの影響が強く、良い情報も悪い情報も広がりやすいという特徴があります。

介護・福祉の現場で働く外国人スタッフには、母国や同じ国出身者とのネットワークが強く、情報収集力が高いという特徴があります。そのため、職場の評判はすぐに共有されるのが実情です。

「教育が丁寧だった」「相談しやすい職場だった」といったポジティブな声はすぐに広がり、自然と外国人人材が集まります。一方で、サポートが乏しかったり、コミュニケーションに壁がある職場は、口コミで敬遠されてしまうことも少なくありません。

つまり、採用することよりも、外国人人材が“働き続けたいと思える環境”をつくることが重要なのです。単なる受け入れではなく、定着と成長を支える仕組みが問われています。

言語の壁がもたらす業務フローのアップデート

現場で大きな課題となるのが、言語の壁です。介護記録や申し送り、マニュアルなど、日々の業務に欠かせない情報をどう共有するか。これは多くの事業所が直面するテーマです。

最近では、ICTやAI、動画、ピクトグラム(絵記号)などを活用し、情報や記録を多言語化する工夫が進んでいます。

こうした取り組みは単に「翻訳」することが目的ではなく、業務フローそのものを見直すきっかけにもなっています。外国人スタッフにも日本人スタッフにも、よりわかりやすく・伝わりやすい仕組みを考える過程で、結果的に組織全体のコミュニケーションや業務プロセスがアップデートされているのです

外国人採用を“組織改革のチャンス”に

外国人人材が働きやすい環境を整えていくと、例えば日本人の新人スタッフや、介護の経験が浅いスタッフにとっても、良い影響がありそうですね。

そうなんです。外国人人材に限らず、組織に新しい層の人材を迎えていくということは、組織の課題を見つけ、より良くしていくきっかけにもなるんです。

外国人採用の受け入れがうまく行っている組織は、この機会を「組織改革のチャンス」として生かしています。成功する事業所と失敗する事業所を比較しながら、実践のヒントを探っていきましょう。

成功する事業所:組織づくりの視点で改善を進める

成功する事業所では、外国人人材の受け入れを組織全体の業務やコミュニケーションを改善する機会として捉えます。

外国人人材の戸惑いポイントは「職場をよくするポイント」。トライ&エラーを重ねながら、一緒によりよい組織をつくる姿勢が見られます。

これは外国人に限らず、未経験者や新しいスタッフ、障害のあるスタッフを迎える時でも同じです。「どうすれば障壁を下げ、誰もが働きやすい環境をつくれるか」を管理者と現場が一体となって考えることこそが、成功の鍵です。

フィリピンから人材を受け入れている、ある社会福祉法人では、フィリピンへ現地研修に行き、日本人とフィリピン人が互いの文化の違いを体験しながら、協力の大切さを実感する取り組みを行っているそうです。

言葉が通じない環境で、日本人スタッフは外国人スタッフに助けられながら、異文化で生活し、仕事をする彼らの経験や心境などを理解し、受け入れ方について新たな気づきを得ています。組織全体としても、「同じチームの一員」として共に働く意識が育まれています。

失敗する事業所:個人対応で終わらせてしまう

一方で、失敗する事業所に多いのが、「外国人スタッフが適応できない」「能力が足りない」と個人の問題として片づけてしまうケースです。「できない=訓練不足」と捉え、本人に修正を求める姿勢では、現場は硬直化しがちです。

結果として、「郷に入れば郷に従え」という考え方が根強く残り、組織の柔軟性が損なわれます。

外国人材を特別扱いする必要はありませんが、新しい人材をどう受け止め、どうチームに組み込むか。この“組織の受け入れ力”こそが、定着と成長を分ける決定的な要素です。

外国人採用開始前の不安と実践のカギ

外国人人材を受け入れるにあたっての視点が理解できてきました。とはいえ、初めての受け入れを検討する事業所は、色々な不安を感じますよね。

不安があるのは当然です。でも、組織として外国人人材を迎えることに意味を感じるのであれば、ぜひ挑戦してみて欲しいです。

成功と失敗の違いは、“受け入れ方”にあります。そうはいっても、初めて外国人スタッフを迎えるときには、不安や戸惑いが生まれるもの。ここでは、実際の導入時に押さえておきたいポイントを整理します。

受け入れ時の不安は自然なこと

初めて外国人スタッフを受け入れる際、現場スタッフや利用者・家族に不安が生じるのは自然なことです。

重要なのは「不安があるからやめる」ではなく、外国人採用が組織に必要かどうかです。必要と判断するのであれば、不安があっても導入を諦めず進めましょう。

なぜ外国人人材を受け入れるのか(Why)を組織で共有する

その上で、受け入れの際には、「なぜ(Why)」を丁寧に組織全体に共有することが不可欠です。

外国人人材は、単なる「人手不足の穴埋め」ではないはずです。「なぜ外国人人材が必要なのか」「現場にはどんな協力を求めたいのか」など、組織の目指す方向性や価値観を伝えます

理由が明確であれば、現場スタッフの納得感が生まれ、柔軟性や協力意欲が高まります。一方で、「あとは頼んだ」と現場に丸投げしてしまうと、日本人スタッフの不満に直結してしまうでしょう。

組織全体のアップデートとして捉える

外国人材の受け入れは、現場の負担を増やすのではなく、「組織の仕組みや文化を改善するチャンス」として捉えてみましょう

ICT(情報通信技術)の導入やシフトの見直しなども含め、現場の「疲弊」を減らす方向で進めることが成功には必要な視点です。

また、まずは成功事例を知り、他事業所の工夫を学ぶことでも、組織づくりのヒントが得られます。そうした学びを現場に持ち帰り、試行錯誤を重ねることで、自事業所に合った支援や改善策が少しずつ形になっていきます。

何のために外国人人材を入れるのかについて、決定権を持っている経営者やマネジメント層の人たちがしっかり考えることはとても大切です。

その理念や考え方が、マネージャーレベルや現場にきちんと落とし込まれ、その人たちを巻き込んだ上で仕組みづくりができれば、外国人人材の定着にもつながっていきます。

外国人人材の採用のカギは「よい組織づくり」

外国人人材の採用を考える時、その大元にあるのは「組織が柔軟で納得感のある運営ができるか」です。

外国人スタッフの受け入れをきっかけに、組織がどう変化・成長できるかを問い続けることが、これからの介護・福祉業界の経営に求められています。そして、外国人スタッフとの協働を通して得られるのは、単なる「人手」ではなく、多様な視点・価値観・文化から生まれる新しいチームのかたちです。

異なる背景を持つ人と働くことは、私たち自身のコミュニケーション力やチームマネジメントを見直すきっかけにもなります。

よい組織づくりは、言語や文化を越えて、誰もが「ここで働いてよかった」と思える環境を育てることから始まります。

組織のあり方によって、外国人人材の受け入れ方も様々だと思います。「うちはこんな形で工夫しているよ」みたいな事業所さんがあったら、ぜひ知りたいので、教えてください!

ぜひ!良い事例があったら、私たちも見にいきたいです!

【今回の「介護の組織をよくするラジオ」を聞いてみる】
■♯17 いま、介護・福祉業界で外国人材が注目される理由
SpotifyYouTube
■♯18 外国人材の“受け入れ”が難しい本当の理由
SpotifyYouTube
■♯19 “外国人材対応”を超えて。多様な人が働きたくなる職場とは
SpotifyYouTube

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「介護の組織をよくするラジオ」では、皆さまの声をもとに、次のテーマづくりや企画を行っています。

・ラジオで扱ってほしい話題
・現場で感じている疑問やモヤモヤ
・「うちではこんな工夫しているよ」という実践事例
・番組の感想 など

どんな小さなことでも大歓迎です。皆さまの現場での視点や気づきが、次のエピソードづくりのヒントになります。

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