介護職員数は212万人超に。最新調査データから考える人材確保の「いま」と「これから」
公開日:2026/01/13 更新日:2026/01/16
介護・福祉の人事・組織づくりを支援するコンサルタント・太田が、話題のニュースやトレンドから、現場で役立つヒントを読み解く連載コラム。今回の“ひとさじ”は、最新調査で明らかになった介護職員数の動きから、人材確保をめぐる現場の課題と今後の方向性を探ります。
厚生労働省は2025年12月19日、「2024年介護サービス施設・事業所調査の概況(最新調査)」を公開しました。
同調査によると、2024年10月1日現在、介護サービスに従事する介護職員数は212万6,227人となり、前年から487人の増加となっています(※)。
この結果は、介護人材をめぐる状況を考えるうえで、一つの節目となるデータといえそうです。前回の調査では、統計開始以降はじめて介護職員数が減少しており、今回はそこからわずかながら持ち直す動きが見られました。ただし、減少前の水準にまで回復したわけではなく、状況を楽観視することはできません。
数字の増減だけを見るのではなく、その背景や現場の実感とあわせて読み解いていくことが求められています。
※ 厚生労働省「介護職員数の推移の更新(2024年分)」
「212万人超」という数字が示すもの
介護職員数が212万人を超えているという事実は、介護分野が引き続き日本社会を支える重要な雇用分野であることを示しています。多くの人が、日々の生活を支える現場で働き続けていることが、この数字からも分かります。
一方で、今回の増加幅はごく小さく、人材確保の状況が大きく改善したと感じられるほどの変化ではありません。配置やシフトのやりくりに工夫が求められる状況が続いている事業所も多く、職員配置に余裕があるとは言いにくいのが実情です。
数字としては下げ止まりの兆しが見える一方で、現場の負担感や人材不足感が解消されたわけではない。その点に、今回の調査結果の特徴があるように感じられます。
サービス種別ごとに見る人材構成の現状
調査では、サービスの種類ごとの介護職員数も示されています。
| サービス | 令和6年 | 令和5年(※) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 介護老人福祉施設 | 29万9,123人 | 29万6,882人 | 2,241人 |
| 介護老人保健施設 | 12万4,137人 | 12万5,091人 | △954人 |
| 介護医療院 | 1万5,818人 | 1万3,931人 | 1,887人 |
| 訪問介護員 | 52万612人 | 50万872人 | △260人 |
| 通所介護の介護職員 | 22万1,372人 | 22万198人 | 1,174人 |
介護老人福祉施設では29万9,123人、介護老人保健施設では12万4,137人、介護医療院では1万5,818人となっています。一方、訪問介護員は52万612人、通所介護の介護職員は22万1,372人と、在宅・通所系サービスが大きな割合を占めています。
とくに訪問介護は、人材数としては多いものの、担い手の高齢化や離職、事業所運営の不安定さといった課題を抱えやすい分野です。人数が多いからといって、人材確保が順調に進んでいるとは限らず、地域や事業所ごとの差も大きいのが実情です。
こうしたサービス種別ごとの違いを踏まえると、全体の職員数が微増に転じた背景にも、さまざまな要因が重なっていることが見えてきます。
※ 厚生労働省「従事者数の状況|令和5(2023)年介護サービス施設・事業所調査の概況」
人材確保策が「多面的」に示されている理由
今回の調査とあわせて、厚生労働省は総合的な介護人材確保対策の方向性も示しています。そこでは、処遇改善、研修受講支援、ICT活用による生産性向上、介護職の魅力向上、外国人介護人材の受入環境整備といった施策が挙げられています。
これらは、「人を集める」だけでなく、「働き続けられる環境を整える」ことを重視した内容といえます。採用、育成、定着という一連の流れを切り離さずに考える必要がある、というメッセージが込められているようにも感じられます。
こうした施策や現場での工夫が重なったことで、職員数の急激な落ち込みを食い止める動きが少しずつ表れてきている、と捉えることもできそうです。
数字の裏側にある「定着」と「負担」の課題
職員数がわずかに持ち直したとはいえ、現場の負担が大きく軽減されたわけではありません。業務量の増加、記録や多職種連携にかかる時間、経験年数の差による業務の偏りなど、日々の運営の中で感じられる課題は引き続き存在しています。
今回の結果は、数字そのものだけを見ると小さな変化ですが、その背景には、現場での工夫や努力、制度面での支援が積み重なってきた過程があります。そうした点も含めて受け止めることで、調査データの見え方が少し変わってくるかもしれません。
人材確保を「人数の問題」としてだけでなく、「働き続けられる環境づくり」という視点で捉えることの重要性が、改めて浮かび上がってきます。
調査データを自事業所に引き寄せて考える
今回の調査結果は、業界全体の動きを知るための資料であると同時に、自事業所の状況を見直すためのヒントにもなります。
自分たちのサービス種別は、人材が集まりやすい領域なのか、それとも確保が難しい領域なのか。処遇や研修の仕組みは、職員にとって分かりやすく、将来の見通しを描ける内容になっているか。ICTの導入は、現場の負担軽減につながっているかどうか。
こうした数値の推移を全体として眺めることで、「今の体制をどう保ち、どこを見直していくべきか」を考える材料が見えてきます。
調査結果から考えたい、これからの人材確保
介護職員数が212万人を超えているという事実は、多くの人が介護の現場を支え続けていることを示しています。一方で、前回の減少と今回の小幅な増加という流れは、人材確保の状況が決して安定しているわけではないことも示唆しています。
国が示す人材確保策の方向性からも分かるように、これからは「どれだけ人を集めるか」だけでなく、「どうすれば働き続けやすい環境を整えられるか」を、事業所ごとに考えていくことがより重要になっていきます。
今回の調査データを、自事業所の人材や働き方を振り返る一つの材料として、無理のない範囲で活かしていく。そんな向き合い方が、これからの現場づくりにつながっていくのではないでしょうか。
