株式会社BlanketKAIGO HR FARM有効求人倍率から考える。今の採用環境と、介護・福祉分野が向き合うべきこと

有効求人倍率から考える。今の採用環境と、介護・福祉分野が向き合うべきこと

公開日:2026/02/24 更新日:2026/02/26

介護・福祉の人事・組織づくりを支援するコンサルタント・太田が、話題のニュースやトレンドから、現場で役立つヒントを読み解く連載コラム。今回の“ひとさじ”では、有効求人倍率の最新動向から、介護・福祉分野が向き合うべきポイントを考えます。


採用環境を語る際、ニュースや統計で頻繁に登場する指標のひとつが「有効求人倍率」です。

これは、ハローワークに登録されている求職者1人に対して、どれくらいの求人が出ているかを示す数字で、労働市場の状況を大まかに把握するための目安として広く使われています。

たとえば有効求人倍率が1.0倍であれば、求職者と求人がほぼ同数であることを意味します。1.5倍であれば、求職者1人に対して1.5件の求人がある計算になり、企業側のほうが人材を確保しにくい状態だと読み取ることができます。

ただし、この数字はあくまで全体を平均したものです。地域差や業界差、職種ごとの事情までは反映しきれないため、実際の現場感覚とはズレが生じることも少なくありません。

今回公表された厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和7年12月分及び令和7年分)」を見ていくと、その点がよりはっきりと浮かび上がってきます。

全体で見ると、採用市場はやや落ち着いた動きに

年月日倍率
2025年12月の有効求人倍率1.19倍
2025年平均の有効求人倍率1.22倍
2024年平均の有効求人倍率1.25倍

2025年12月の有効求人倍率(季節調整値)は1.19倍でした。前月からは0.01ポイント上昇していますが、2025年通年で見ると1.22倍と、前年よりわずかに低下しています。

また、有効求人・有効求職者ともに前年から減少しており、数字の上では、採用市場全体が急激に過熱している状況ではないことがうかがえます。

こうした結果からは、全体としての採用環境は、数年前と比べてやや落ち着いた局面に入りつつある、と受け止めることもできそうです。企業側から見ても、「とにかく採らなければならない」という切迫感は、以前ほど強くないと感じる場面もあるかもしれません。

ただし、ここで注意しておきたいのは、この数値があくまで全産業を平均した結果だという点です。平均値が示す傾向と、個別の業界や職種が置かれている現実とのあいだには、少なからずギャップが存在します。

介護サービス分野が示す、もうひとつの現実

参考統計表の中で、職業別の有効求人倍率を見ると、介護サービス職業従事者の有効求人倍率は4.10倍となっています。求職者1人に対して4件以上の求人がある計算になり、依然として非常に高い水準です。

この4.10倍は原数値であり、全体の有効求人倍率(季節調整値)とは算出方法が異なります。そのため、単純に数値の大小だけで横並びに比較することはできません。

それでもなお、介護・福祉分野において求人が求職者を大きく上回る状態が続いていることは、数字からも明確に読み取れます。

全体の指標では落ち着きが見える一方で、介護分野では人材確保の難しさが続いている。同じ有効求人倍率という指標を見ていても、業界ごとに見える景色が大きく異なっているのが実情です。

数字が示す状況を、どう読み解くか

ポイント_有効求人倍日_コラム

有効求人倍率が高いということは、企業側にとっては人材を確保しにくい状態が続いていることを意味します。

一方で求職者にとっては、複数の求人の中から職場を比較しやすい環境でもあります。そのような状況のなかで問われてくるのは、単に求人件数を増やすことではなく、応募者が「ここで働いてみたい」と思えるだけの情報や魅力を、どれだけ具体的に示せているかという点です。

求人の数が多いかどうかよりも、選択肢が並ぶ中でどう選ばれるかが、より重要になってきます。

介護・福祉の仕事は、業務の専門性や責任の重さがある一方で、実際の現場の雰囲気や働き方の細やかな部分が外からは見えにくい面もあります。

そのため、求人が求職者を大きく上回る状況では、求職者が複数の職場を比較検討する中で選ばれにくくなる、あるいは採用できたとしても職場とのミスマッチが起こりやすくなる、といった課題が生じやすくなります。

採用環境の変化は、伝え方を見直すヒントにもなる

他業界では、業務の進め方を見直したり、テクノロジーを活用したりすることで、必要な人員数そのものを調整する動きも見られます。

介護・福祉分野では同じやり方をそのまま取り入れることは難しいものの、人が担う部分と工夫によって支えられる部分を整理する視点は、現場づくりのヒントになります。

採用活動においても、条件や待遇の説明だけでなく、実際の働き方が具体的に思い浮かぶような情報を丁寧に伝えていくことが求められています

たとえば、日々の業務がどのような連携のもとで進んでいるのか、困ったときにはどのような相談ルートがあり、誰が支えてくれるのか、チームの中でどのような役割を担いながら一日を過ごすのか、といった点です。

こうした日常の姿が見えることで、応募者は自分がその職場で働くイメージを描きやすくなります。

有効求人倍率を「答え」ではなく「考える材料」として

有効求人倍率は、現場の正解をそのまま示してくれる数字ではありません。

ただし、全体の平均値と介護分野の数値を並べて見ることで、自分たちが置かれている状況を客観的に捉えるきっかけにはなります。

今の体制のどこに負担がかかりやすいのか、どのような工夫があれば働き続けやすさを高められるのか、そして採用の場面では現場の実情をどう伝えれば誤解なく届くのか。

こうした問いを一つひとつ整理していくこと自体が、これからの採用や職場づくりを考えるうえでの土台になっていくのではないでしょうか。

【この記事を書いた人】
太田 高貴
株式会社Blanket採用コンサルタント / 社会福祉士 / 一般社団法人総合経営管理協会 認定採用コンサルタント

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