介護の採用は難しい?介護人材を採用する上で重要なポイントについて徹底解説
2023/04/11
介護現場で働く方の中には、「求人に応募がこない」「採用してもなかなか定着しない」といった悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、介護人材が不足している原因や、近年の求人動向について詳しく解説します。
また、採用活動における重要なポイントや採用手法についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
介護業界の人材が不足する原因
人材不足は介護業界の大きな課題です。他業種と比べ、求人を出しても求職者が集まりにくい状況が続いています。ここではまず、その理由について見ていきましょう。
同業他社との人材獲得競争が激しい
介護業界の人材が集まりにくい理由として、需要に対して供給が少ない点があげられます。
厚生労働省が公表している令和4年11月分の「職業別一般職紹介状況」によると、介護業界のパートを含む有効求人倍率は3.87となっています。
つまり、求職者1人に対して約4人分の求人があるのです。
介護業界は応募者が少ない売り手市場であるため、他業種より人材の獲得が難しい状況となっています。
給与水準が低い
給与水準の低さも、介護業界に人材が集まらない理由の一つです。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、社会保険・社会福祉・介護事業の平均年収は約3,814,000円とあり、月々の手取りで考えると200,000円から220,000円程度です。
介護福祉業界の平均年収は全体的に増えていますが、全産業合計の平均年収が約4,893,000円だという点と比較すると低い傾向にあることが分かります。
そのため、介護職に興味を覚えていても、給与や賞与などに期待できず、応募を控える方もいます。
高い志を持って介護職に就いた方でも、給与の低さを理由に、職を離れる決心をする方もいます。
体力的・精神的にきつい業界と思われている
株式会社リクルートキャリアが実施した「介護職非従事者の意識調査」によると、介護業界への就業をためらう理由として、体力的、精神的なきつさがあげられています。
身体への負担が大きい業務があるという印象が強いため、働く環境については実態に反し、ネガティブなイメージを持たれやすいです。
しかし昨今は、厚生労働省が介護現場におけるICT化(※)など働きやすい職場環境の整備を進めています。
これにより身体的な負担は以前に比べ軽減されている実態がまだまだ知られておらず、過去の悪いイメージが残ったままとなっているケースもあります。
※情報通信技術を活用し、サービス向上などに生かすこと
介護業界の求人動向
続いて、介護業界を取り巻く求人状況はどうなっているのでしょうか。ここでは、介護業界の有効求人倍率や生産年齢人口の推移に触れながら、介護業界の求人動向について解説します。
介護業界全体の求人倍率
前述のとおり、介護業界のパートを含む有効求人倍率は3.87です。
1人の募集者に対して、約4人分の求人が存在するのが実情で、10年前と比較すると2倍以上に増加しています。
ただし、日本社会において少子高齢化が進む以上、今後も需要が増える可能性は高いです。
そのため、厚生労働省では介護職へ復職する方に対する再就職準備金の支給、自治体が実施する未経験者向け研修の推進、介護職のイメージアップにつながる普及啓発運動などの対策を講じています。
都道府県別の有効求人倍率
有効求人倍率は、地域によって人材不足の程度が異なります。
平成29年に厚生労働省が示した「介護人材確保対策(参考資料)」によると、倍率が最も低い高知県が1.57なのに対し、最も高い東京都は5.40です。
なお、2番目に高い愛知県は5.30、3番目の大阪府は4.21と、都市部の数字が特に高くなっています。
これは、都市部における75歳以上の人口の急増と、それに伴う介護需要の増加が原因です。
一方、鹿児島県や島根県など都市部以外の地域では、労働人口の供給が落ち着いています。
もともと高齢者の割合が多く、今後も高齢者の数は増えると予測されていますので、都市部と同じく労働力が不足する可能性は高いです。
生産年齢人口の推移
生産年齢人口の減少も、介護人材が直面している問題です。
総務省の発表した「人工推計」によると、2021年10月の生産年齢人口は74,504,000人で、総人口のわずか59.27%です。
生産年齢人口のピークは1995年となっており、それ以降は30年近く減少し続けています。
生産年齢人口が減少する一方、高齢者は増加しているため、同時に介護需要が増加することになります。
2025年には団塊の世代が75歳を迎えるため、さらに介護に対するニーズも多様化するでしょう。
ただし、厚生労働省は地域包括ケアシステムの構築や介護サービスの魅力発信などを行い、解決を図ろうとしています。
介護をサポートするロボットや機器の導入を進めるなど、人材不足をカバーしようと環境を整え始めている事業所もあります。
介護人材を採用する際の重要ポイント
介護業界を取り巻く状況が厳しさを増す中で人材を採用していくためには、押さえておくべきポイントが3つあります。
- 採用戦略を明確にする
- 採用基準を明確にする
- 求職者へのアピールポイントを整理する
採用戦略を明確にする
まずは、「どのような人材を募集するか」という採用に関する方向性や戦略を立てましょう。
「なぜ人材が必要なのか?」「どのような人材なのか?」「それを何人、いつまでに必要か?」などを考えていきましょう。これらは、現場、採用担当、経営者ですりあわせを行います。
すりあわせがうまくいかないと、人事による一次面接を通過しても、経営者による最終面接を通らず、採用につながらない場合があります。
また、採用できても現場とマッチせず、早期退職する可能性が上がります。
加えて、求人情報には求める人物像をはっきり明記しましょう。例えば、ベテランが欲しい場合は、介護業界の勤務年数を記載したり、管理職経験者優遇と書いたりすると、求職者が集まりやすいです。
求職者は、複数の求人を見比べながら応募先を決めます。欲しい人材が「ここで働きたい」と感じてもらえるよう、何をすればよいか、採用戦略を明確にする必要があるのです。
その際に採用予算もあわせて考えましょう。予算が分かることで、採用活動でパワーをかけたいところが明確になり、適切な予算配分が可能となります。
中途採用では平均採用単価が40.7万円、新卒採用では25.6万円です。平均の単価なども参考に予算組みなどを行うとよいかもしれません。
採用基準を明確にする
慢性的な人手不足に陥っていると、応募があった段階で採用したくなるかもしれません。
しかし、求職者の適正をよく見極めずに採用すると、早期退職の危険性が高まり、結果的に採用コストがかさむことになってしまいます。
採用基準を定めるには、採用戦略で立てた「どのような人材を募集するか」のターゲットとなる人材から、その人材はどのような要素を持っているかについて考えます。
介護・福祉業界の採用ではよく、「健康であれば誰でもOK」「元気で挨拶できれば、それ以上は望みません」というような話を聞きます。
しかしながら、採用基準が曖昧では、社風や働き方にあわず退職になってしまうというケースも少なくありません。そのため、採用基準を定め、自社にマッチした人材を見極めることはたいへん重要なポイントです。
また、見極めだけでなく求職者に自社を理解してもらうことも大切なポイントになります。
大小はあれど、入社後は理想と現実のギャップがあります。このギャップが大きいと退職につながる可能性が高くなってしまうのです。
面接時は、デメリットと考えられる要素に関しても伝え、体験入社や事業所見学を事前に行い、どのような環境で働くのかをイメージしてもらうなどといったコミュニケーションを求職者ととることで、ギャップが少なくなり、長期的に働いてもらえる可能性が高くなります。
求職者へのアピールポイントを整理する
介護労働安定センター発表の「介護労働の現状について」によると、介護職を選んだ理由として「やりがい」が上位にランクインしていることが分かります。
そのため、「やりがいや熱意を生かせる環境とはどのようなものなのか」に注目し、アピールするとよいでしょう。
具体的には、「どのような想いで何を目指している法人なのか」「実際の仕事現場では、法人の想いがどのように反映されているか」などを明確にします。
すると、「いいな」と感じる求職者が応募・入社する可能性が高まり、結果的に自社にマッチした人材が採用できるようになります。
また、アピールする際の大切な視点として、
- 欲しい人材は自社のどこに惹かれて応募をするのか
- 求職者はどのような情報が欲しいのか
- 情報の伝え方は最適か
など、求職者目線で自社のアピールポイントを整理していくと、欲しい人材により届きやすいPRになります。
キャリアアップの道筋を明確に示し、資格取得の費用負担なども伝えられると、求職者にとっても長く働くモチベーションにつながります。
なお、メンター制度についても訴求できると、初めて介護の仕事に就職する人にとっては安心材料となるでしょう。
介護業界の採用手法
介護人材の採用活動を行うにあたって、どのような媒体で採用を行うべきか迷う方も多いでしょう。
ここからは、採用活動を行う媒体とそれぞれの特徴について解説します。
求人サイト
介護への就労を考えている方々に向けて求人情報を掲載できます。
ただし、掲載されている求人件数が多いため、求人内容を魅力的に見せるのはもちろん、上位表示オプションを利用するなど、応募者の目に留まる工夫が必要です。
他の求人媒体よりも採用コストを抑えやすいため、中長期で人材を募集したい場合におすすめです。
人材派遣
人材派遣の最大のメリットは、人員調整のしやすさです。
スタッフの欠員補充や期間限定での増員もでき、介護に強い人材派遣会社を選ぶと、即戦力の確保もしやすくなります。
面接などの工程を省き、速やかに人員を補充できる点もメリットの一つですが、契約期間が決まっているため重要な業務を任せにくい点はデメリットといえます。
人材紹介
人材紹介は、成功報酬という点にメリットがあります。
エージェントが求人側・求職側双方の要望を把握してマッチングを行うため、手間を減らしながらスキルの高い人材と面接できます。
即戦力やマネジメント経験者など、採用の難易度が高い人材を採用したいときにおすすめです。ただし、採用コストは他の採用手法よりも高額になりやすいというデメリットもあります。
ハローワーク
ハローワークは、無料で人材募集できる点がメリットです。
施設内の端末やハローワークのインターネットサービスに求人が掲載されるため、多くの方に見てもらえます。
ただし、コストがかからない半面、掲載できる情報が限られており、ハローワークだけでは効果が出にくい傾向にあります。
自社のWebサイト
多くの求職者は、応募する企業のWebサイトを事前にチェックしています。
特設求人のページや採用専用のWebサイトを設け、求人サイトには書ききれない詳細情報を載せられると、ミスマッチの防止にも役立ちます。
求人サイトや人材紹介などと併用しながら、応募率の上昇に役立てるとよいでしょう。
SNS
SNSは、直接的な応募を増やすというよりも、興味関心を持ってもらうためのツールとして活用できます。
メリットは発信力の高さにあり、拡散力にも優れているので幅広い世代にリーチできます。
写真や動画、文章を通して事業所の雰囲気やスタッフの人柄を伝えやすいため、ハートフルな空気感をアピールしたいときに有効です。
ただし、継続的な運用が必要となり、更新や管理の手間がかかります。やり方によっては炎上のリスクも伴うため、不適切な内容を投稿しないよう細心の注意を払ってください。
介護業界に特化した採用コンサルティングサービスを利用するのも一つの手
介護業界はネガティブなイメージを持たれやすいですが、実際には処遇の改善や、介護をサポートする機器の導入などが進んでおり、単に悪いイメージが先行している面が強いです。
また、人材状況については都道府県ごとに差異があるものの、有効求人倍率は高く他業種より採用活動が難しいのが実情です。
各事業所の状況やそれぞれの環境が違うからこそ、採用戦略を明確にして自社に合った採用活動が必要です。
特に、より自社に合う良い人材を確保するためには、採用に関する知恵や体力を身につけなければなりませんが、ノウハウがないときや、採用がうまくいっていない、採用を見直したいと感じるときは介護業界人に特化した採用コンサルティングサービスを利用するのも一つの方法です。
採用コンサルティングは、目的や課題にあわせてどのような方法で採用を進めていけばよいかを相談でき、ときには提案を受けられる点が魅力のサービスです。
介護人材の採用や育成にお悩みの方は、この機会に一度「KAIGO HR」へお気軽にご相談ください。