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コロナ禍で介護業界への人材流入が進む?今こそ考えたいwithコロナ時代の採用のポイント。(withコロナ時代の介護・福祉事業者の人事戦略⑥)

2020/10/02

■悪化の一途を辿る雇用環境

有効求人倍率と失業率の推移(2020年8月)

雇用動向を示す重要指標である有効求人倍率(1名の求職者に対し、どのくらいの求人数があるかを示す指数)や失業率の2020年8月分の数値が発表されました。

2020年8月の有効求人倍率は、1.04倍と先月より-0.04ポイント下落しました。前年同月比では、0.59ポイントのマイナスです。この数値は6年7か月ぶりの低水準となっています。

完全失業率も3.0%と上昇傾向が続き、大台を突破しました。こちらも3年4か月ぶりの高水準です。

有効求人倍率・失業率の推移(2020年8月)

上のグラフは、3か月ごとの有効求人倍率・失業率の推移を示したものです。(2020年6月-8月は2か月ごと)

こうして中長期的に見てみると、コロナウイルスの影響により、雇用市場の冷え込みが深刻な状態で継続していることが分かります。

■大都市部・非正規雇用を中心に解雇・雇止めも増加

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厚生労働省の発表では、9月25日時点で新型コロナウイルスの影響で解雇・雇止めになった人は見込みを含め6万923人で、東京・大阪などの大都市部、製造業・サービス業など幅広い分野で影響が出ています。中でも、非正規雇用者への影響が大きく、非正規雇用の人数は前年同月比から120万人減少した2070万人となりました。コロナ絵の影響が出始める2019年12月の非正規雇用者数は、2179万人だったので、単純計算で新型コロナウイルスの感染拡大から9か月間で、100万人分、全体の約5%分の非正規雇用が消失したということになります。

■介護業界の雇用にも影響が出始めるが、依然「売り手市場」は続く。

急激な雇用市場の冷え込みにより、介護業界の採用市場にも変化が出始めています。

コロナ禍における介護福祉業界の有効求人倍率の推移

こちらのグラフでは、全産業平均の有効求人倍率と、介護サービス業の有効求人倍率の推移を表しています。

介護サービス業の有効求人倍率も、5月以降減少に転じ、2019年12月の4.8から比較すると、1ポイント近い減少が見られます。

この背景には、新型コロナウイルスによる雇用市場の悪化により、

  1. 一定の数の求職者が他業界から介護業界に流れてきた
  2. 業界内の転職意欲が下がり、離職率が低下した
  3. 業績悪化・事業縮小のため、新規求人が減少した

といった要因が考えられます。

介護業界の採用という視点で現在の状況を考えると、「以前よりは採用しやすい環境になっている」と言うことが出来るでしょう。一方で、依然として介護業界が、3.88倍と全産業平均の3倍以上の高水準を保つ「売り手市場」であることに変わりはありません。感染者数が高止まりしている現状を見ると、雇用市場への影響はしばらく続き、介護業界への人材流入も一定進む状況は続くものの、深刻な業界全体の人材不足を満たすほどの流入が起きるまでには至らないのではないかと思います。


■withコロナ時代の介護業界の採用活動のポイントとは?

with頃案時代に意識したい採用活動の変化

現在起きている介護業界への一定数の人材流入の中で、採用を成功させるためには、以下のようなwithコロナ時代に即した採用活動のブラッシュアップをしていくことが重要です。

  1. 採用チャネルの複線化 求職者の情報収集や活動が、コロナにより大きく変化していくことに合わせ、求職者との「出会い方」も変化が必要です。これまでのやり方の継続のみでは、必要とする母集団を確保できなくなるケースを踏まえ、複数の採用チャネルを設け、幅広い手法で求職者と出会う工夫をすることが求められます。
  2. WEBでの採用活動の強化 コロナ・ショックにおける社会の大きな変化の一つが、様々な活動がオンライン化したことであり、採用活動も例外ではありません。これまで当たり前に行われていた対面での面接や会社訪問などが、いつでもどこからでも気軽に可能に行えるオンライン面接・オンライン説明会などへ切り替わっています。人気の業界・企業でない限り、「初期接点でオンラインを選べない」「オンラインで得られる情報が少ない」というだけで、候補から外れてしまいます。WEBでの採用活動の強化は、withコロナ時代では必須と言えるでしょう。
  3. ブランディングを意識した情報発信 一定数の未経験者の介護業界への流入が想定されるwithコロナ時代では、「他施設との差別化戦略」ということも非常に重要になります。様々な介護・福祉事業者が積極的に採用活動を進める中で、それぞれの差別化が進んでいない状況下では、「こちらの方が家から近い」とか「こちらの方が給料がよい」といった条件勝負になりがちです。もちろん、よい条件を用意し採用競争力を高めることも重要ですが、採用したい人材に「ほかの施設ではなく、ここで働きたい!」と思ってもらえるように、自社の想い・取組・職員・日々の様子などを積極的・継続的に発信し、採用ブランドを高めていくことが効果的です。
  4. 戦略的な採用活動とブラッシュアップ 未だかつて誰もが経験したことのない、コロナ禍という状況の中で、社会情勢も雇用市場の環境も、日々大きく変化しています。このような状況下の中で、採用活動を成功させるためには、「市場動向を読んだ戦略的な計画を立てる力」と「状況に合わせて活動をブラッシュアップする柔軟性」が重要です。戦略的な計画を立てるとともに、流動的な環境に合わせ、適宜計画を変更させながら、最適解を導き出す視点を意識していきましょう。

介護業界を含め、採用・雇用市場は大きな変革期を迎えています。この変革期では、しっかりと対策・計画を練った事業所と、そうでない事業所の間で、採用の成果にも大きな差が出てきています。時代の変化に合わせて、自社の採用活動を見直し、「選ばれる介護・福祉事業所」を目指していきましょう。

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【この記事を書いた人】

野沢 悠介 株式会社Blanket取締役

1983年生まれ。東京都出身。立教大学コミュニティ福祉学部卒。ワークショップデザイナー。2006年株式会社ベネッセスタイルケアに新卒入社し、採用担当・新卒採用チームリーダー・人財開発部長などを担当。介護・福祉領域の人材採用・人材開発が専門。2017年に参加して株式会社Join for Kaigo(現 Blanket)取締役に就任。介護・福祉事業者の採用・人事支援や、採用力向上のためのプログラム開発などを中心に「いきいき働くことができる職場づくり」を進める。