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有効求人倍率・失業率は横ばい、介護業界の人材不足は続く。2020年9月有効求人倍率・失業率レポート(withコロナ時代の介護・福祉事業者の人事戦略⑦ )

2020/10/31

■有効求人倍率・失業率は横ばい。依然厳しい状況が続く。

有効求人倍率と失業率の推移(2020年9月)

雇用動向を示す重要指標である有効求人倍率(1名の求職者に対し、どのくらいの求人数があるかを示す指数)や失業率の2020年9月分の数値が発表されました。

2020年9月の有効求人倍率は、1.03倍と先月より-0.01ポイント下落しました。前年同月比では、0.56ポイントのマイナスです。この数値は2013年12月以来、6年9か月ぶりの低水準となっています。

完全失業率は3.0%と、先月から変動はないものの、依然として高い水準を保っています。(前年同月比から0.6%のプラス)

■非正規・サービスを中心に雇用市場が冷え込む。

業種別有効求人数の比較

昨年の同月比と比較すると、求人数は25%ほど減少していることが分かります。業種別にみると、「製造業」、「営業・販売」、「医療」、「サービス(介護を除く)」、「清掃・運搬・包装等」といった区分で30%以上の落ち込みが見られ、新型コロナウイルスの影響により、業績に大きな影響が出る分野を中心に、新規雇用を控える動きが拡大しているようです。

厚生労働省の発表では、10月23日時点で新型コロナウイルスの影響で解雇・雇止めになった人は見込みを含め6万8140人となり、9月末の統計(6万923人)より約7000人増加しました。この調査に反映されていない水面下の動きでは、数値以上の雇用調整が行われている可能性も高く、コロナウイルスの影響が続く中で、経営状況の悪化に耐えられなくなり、解雇・雇止めの動きも拡大しています。

中でも、非正規雇用者への影響が大きく、非正規雇用の人数は前年同月比から123万人減少しています。これまで就いていた仕事を失ったり、労働時間の減少で収入が減った非正規雇用者も多く、新しい仕事を探すものの求人が減っている状況であり、求職者にとっては厳しい市場環境が続いています。

一方で、このタイミングで積極採用を打ち出す企業にとっては、採用活動への追い風である状況ともいうことが出来ます。

■介護業界の「売り手市場」は続く。

このような急激な雇用市場の冷え込みの中、介護業界の採用にはどのような影響が出ているでしょうか?

2020年9月 介護業界の有効求人倍率の推移

こちらのグラフでは、全産業平均の有効求人倍率と、介護サービス業の有効求人倍率の推移を表しています。

最新の数値では、介護業界の有効求人倍率は3.82倍となっています。(前年同月比-0.06ポイント)

介護サービス業の有効求人倍率も、5月以降減少に転じ、2019年12月の4.8から比較すると、1ポイント近い減少が見られます。

この背景には、新型コロナウイルスによる雇用市場の悪化により、

  1. 一定の数の求職者が他業界から介護業界に流れてきた
  2. 業界内の転職意欲が下がり、離職率が低下した
  3. 業績悪化・事業縮小のため、新規求人が減少した

といった要因が考えられます。

先月から引き続き、介護業界の採用という視点で現在の状況を考えると、「以前よりは採用しやすい環境になっている」と言うことが出来るでしょう。

介護業界の有効求人倍率の中長期推移

一方で、依然として介護業界が、3.82倍と全産業平均の3倍以上の高水準を保つ「売り手市場」であることに変わりはありません。全産業の有効求人倍率が1.03という水準となったのは、2013年12月と約7年前に遡りますが、その際の介護サービスの有効求人倍率は2.07でした。当時と比較すると介護サービスの需要や事業者が増加することで、求人数の絶対数が増加、ニーズ解消には程遠いくらい、求人数が増えている状況です。言葉を選ばすに言えば、コロナ・ショックによる一定の求職者の介護業界への人材流入は、現在の圧倒的な介護業界の人材不足を解消するほどの影響はなく、「焼け石に水」という状況になるのではないでしょうか。


■withコロナ時代に求められる変化・アップデート。

介護・福祉業界の変化.png

コロナ・ショックは、これから先の介護・福祉事業者の未来を左右する分水嶺になるのかもしれません。

現在起きている介護業界への一定数の人材流入は、業界全体の人材不足を解消するほどには至らない。しかし、その一方でしっかりと採用・受入を行うことで、この市場の転換期に組織を強化することは可能なはずです。

これから先、介護・福祉業界への一定の未経験者の人材流入が進む中で、

  1. 自社の魅力をしっかりと届ける効果的な採用活動
  2. 未経験者も組織・業務に順応できる受け入れ態勢の整備
  3. 受入側の既存の職員にとっても働きやすい職場づくり(業務改善・人事制度拡充など)

を進めることで、「求職者に選ばれる・職員が定着する事業所」と、「求職者に選ばれない・職員が離職してしまう事業所」に二分化していくことになるのではないでしょうか。

大きな変化の時代に、介護・福祉事業者自らも変化・アップデートをしていくことが出来るのか。

これから先の時代を生き抜くために、その覚悟とアクションを求められているように思います。

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【この記事を書いた人】

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野沢 悠介 株式会社Blanket取締役

1983年生まれ。東京都出身。立教大学コミュニティ福祉学部卒。ワークショップデザイナー。2006年株式会社ベネッセスタイルケアに新卒入社し、採用担当・新卒採用チームリーダー・人財開発部長などを担当。介護・福祉領域の人材採用・人材開発が専門。2017年に参加して株式会社Join for Kaigo(現 Blanket)取締役に就任。介護・福祉事業者の採用・人事支援や、採用力向上のためのプログラム開発などを中心に「いきいき働くことができる職場づくり」を進める。