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有効求人倍率の低下はストップ?介護業界の採用困難は継続中。2020年10月有効求人倍率・失業率レポート(withコロナ時代の介護・福祉事業者の人事戦略⑧)

2020/12/11

■有効求人倍率は下げどまり・失業率の上昇は続き、雇用環境の悪化は深刻。

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雇用動向を示す重要指標である有効求人倍率(1名の求職者に対し、どのくらいの求人数があるかを示す指数)や失業率の2020年10月分の数値が発表されました。

2020年10月の有効求人倍率は、1.04倍と先月より0.01ポイント上昇しました。前年同月比では、0.54ポイントのマイナスです。

引き続き低水準が続いていますが、約1年半ぶりに上昇に転じ、8月―10月は横ばい状態となっています。新型コロナウイルスの感染拡大から続く、雇用市場の悪化は一旦下げ止まったとみることができそうです。

一方で完全失業率は3.1%と、微増しています。(前年同月比から0.9%のプラス)

全国的に「第3波」と言える過去最大規模の感染拡大が続き、飲食業・サービス業・宿泊業などの売り上げ増が期待できるクリスマス・年末年始商戦にも大きな影響が出ることが避けられない現状を考えると、まだまだ雇用市場の悪化要因は消えておらず、予断を許さない状況とも言えそうです。

■非正規・サービスを中心に雇用市場が冷え込み、「買い手市場」化が進む。

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各業種ごとの求人数を前月、昨年の同月と比較すると、前月よりは求人数が増加しているものの、昨年よりも2割以上減少していることが分かります。業種別にみると、「事務」、「営業・販売」、「サービス(介護を除く)」、「清掃・運搬・包装等」といった区分で30%以上の落ち込みが見られ、新型コロナウイルスの影響により、業績に大きな影響が出る分野を中心に、新規雇用を控える動きが続いています。

厚生労働省の発表では、新型コロナの感染拡大後、解雇・雇い止めとなった人は全国で7万5341人。(2020年12月4日時点)。小売業での雇止めも1万人を突破しました。この調査に反映されていない水面下の動きでは、数値以上の雇用調整が行われている可能性も高く、コロナウイルスの影響が続く中で、経営状況の悪化に耐えられなくなり、解雇・雇止めの動きも拡大しています。

雇用市場全体で見れば、求職者にとって環境的に厳しく、求人を行う企業にとっては以前よりも採用がしやすい「買い手市場」の傾向が拡大しています。

■介護業界の「売り手市場」は続く。

一方で、介護業界に目を向けてみると、決して「買い手市場」とはなっていない状況が見えてきます。

介護サービスの有効求人倍率(2020年10月)

こちらのグラフでは、全産業平均の有効求人倍率と、介護サービス業の有効求人倍率の推移を表しています。

最新の数値では、介護業界の有効求人倍率は3.85倍となっています。(前年同月比+0.03ポイント)

市場全体の動向と連動し、介護サービス業の有効求人倍率も、5月以降減少に転じ、2019年12月の4.8から比較すると、1ポイント近い減少が見られました。一方で、8月以降の数値は全産業平均と同様に、横ばいの状況となっています。

新型コロナウイルスによる雇用市場の悪化により、

  1. 一定の数の求職者が他業界から介護業界に流れてきた
  2. 業界内の転職意欲が下がり、離職率が低下した
  3. 業績悪化・事業縮小のため、新規求人が減少した

といった要因で、昨年の同時期の有効求人倍率と比べると、ピークよりは下がったものの、現在でも4倍弱という高い倍率を保っています。

現在の介護業界の状況を一言でまとめるのであれば、「少しだけ人材確保の困難度は下がったものの、依然として人材確保が難しい状況は改善しておらず、無策で待っているだけでよい人材を確保できるほど容易な状況ではない」と言えます。


■withコロナ時代に求められる変化・アップデート。

介護・福祉業界の変化.png

新型コロナウイルスにおける影響が長期化する中、介護・福祉事業者の採用担当者の皆さまとお話をする機会も多くありますが、介護・福祉事業者のうち、

コロナ禍において採用が好転した事業者:約2割

コロナ前と変わらず苦戦している事業者:約7割

コロナ前よりも状況が悪化してしまっている事業者:約1割

といった印象を受けます。

withコロナの時代に合わせ、柔軟に採用をアップデートした事業所、そうでない事業所での差が開いてきています。

市場の変化に柔軟に対応しながら、

  1. 自社の魅力をしっかりと届ける効果的な採用活動
  2. 未経験者も組織・業務に順応できる受け入れ態勢の整備
  3. 受入側の既存の職員にとっても働きやすい職場づくり(業務改善・人事制度拡充など)

を進めることで、「採用に強い事業所づくり」を進めていく。

これからの時代にますます必要な視点ではないかと思います。

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【この記事を書いた人】

野沢 悠介 株式会社Blanket取締役

1983年生まれ。東京都出身。立教大学コミュニティ福祉学部卒。ワークショップデザイナー。2006年株式会社ベネッセスタイルケアに新卒入社し、採用担当・新卒採用チームリーダー・人財開発部長などを担当。介護・福祉領域の人材採用・人材開発が専門。2017年に参加して株式会社Join for Kaigo(現 Blanket)取締役に就任。介護・福祉事業者の採用・人事支援や、採用力向上のためのプログラム開発などを中心に「いきいき働くことができる職場づくり」を進める。