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雇用状況は改善に向かうも、介護業界への人材流入は大きく進まず。2020年11月有効求人倍率・失業率レポート(withコロナ時代の介護・福祉事業者の人事戦略⑨)

2021/01/05

■雇用市場の冷え込みは一旦の落ち着きを見せる。

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雇用動向を示す重要指標である有効求人倍率(1名の求職者に対し、どのくらいの求人数があるかを示す指数)や失業率の2020年11月分の数値が発表されました。

2020年11月の有効求人倍率は、1.06倍と先月より0.02ポイント上昇しました。前年同月比では、0.52ポイントのマイナスです。失業率も2.9%(前月比-02ポイント)と5か月ぶりに低下しています。

引き続き雇用市場は厳しい環境ではありますが、9月の1.03を底に2か月連続の上昇を見せています。夏~秋にかけて新型コロナウイルスの感染が一旦落ち着き、政府のGoTo関連施策などもあり、個人消費・経済活動も活性化する中で、10月~11月頃にかけてコロナ禍で冷え込んでいた企業の求人意欲が一定高まったことがうかがえます。

■非常勤(パート・アルバイト)の雇用市場も回復の傾向を見せていた。

コロナ禍でもっとも雇用の影響を受けたのは、パート・アルバイトなどの非正規雇用でした。

雇用形態別の雇用者数 前年同月との比較(出展:独立行政法人労働政策研究・研修機構)
雇用形態別の雇用者数 前年同月との比較(出展:独立行政法人労働政策研究・研修機構)

緊急事態宣言が全国に発令され、多くの経済活動がストップした4月から5月にかけて、特に非正規雇用者の就業者数が大きく減少しました。11月現在でも前年同月と比較すると62万人の減少が見られますが、9月時点では120万人以上の減少だったことを考えると、その下げ幅は小さくなっており、この9月-11月の2か月で非正規雇用での新規就職者が大幅に増加したことが分かります。

新型コロナウイルスにおける雇用へのマイナス影響は、11月時点では一旦下げ止まっていたと考えることができるのではないかと思います。

□介護業界は「売り手市場」のまま横ばい状態。

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では、介護業界の採用市場はどのような状況だったのでしょうか?

「介護サービスの職業」の有効求人倍率は、3.88倍(前月比+0.03ポイント)でした。全産業平均の状況と同じように、この4か月は横ばいで推移しています。コロナ前と比較すると、求人倍率はやや減少したものの、依然として4倍弱の売り手市場であることに変化はありません。

ここ数か月、介護・福祉事業者の皆様の採用活動を通しての感触を伺ってみても、多くの事業所が「以前と変わらず厳しい」もしくは、「以前以上に厳しい」といった感想を持たれており、これまでのレポートでも繰り返しお伝えしているように、コロナ禍における雇用市場の変化が、介護・福祉業界への人材不足解決の「追い風」となっているような実態はないようです。

新型コロナウイルスによる雇用市場の変化は、介護・福祉業界の採用の「追い風」になるか?( WITHコロナ時代の介護・福祉事業者の人事戦略② )

□感染「第3波」・緊急事態宣言が雇用市場に再び深刻な打撃を与える。

ここまでお伝えしたように、昨年末に発表された11月時点の統計値では、雇用市場は改善の兆しが見られていました。しかし、感染者は再び拡大の一途を辿り、各地での医療体制もひっ迫化し、1月4日には首都圏での緊急事態宣言の発令が言及されました。

地域が限定されている点や、休業・時間短縮要請などが行われる業種が限定される予定であるなど、前回の宣言時とは異なる点も多くありますが、それでもこの再宣言は、社会全体の経済活動に再び大きな影響を与えることが懸念されています。

昨年の1月から何とか持ちこたえていた企業・店舗等の経営継続が難しくなり、倒産・休業・雇用調整なども再び加速することも考えられます。

感染拡大動向および、雇用市場の変化については、今後も注視していくことが重要になります。


■withコロナ時代に求められる変化・アップデート。

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ますます先行きが見えない状況の中ではありますが、介護・福祉業界の多くは、感染拡大化の中でも必要なサービスを提供すること、そしてそのための人材を採用することが求められます。一方で、前述のように雇用市場が冷え込み、「買い手市場」化が進んでいる現在の市場の中でも、なかなか採用活動が上手くいっていない実態も見えてきます。

いくら求職者が増加したとしても、待っているだけでは採用はできません。withコロナの時代に合わせ、市場の変化に柔軟に対応しながら、

  1. 自社の魅力をしっかりと届ける効果的な採用活動
  2. 未経験者も組織・業務に順応できる受け入れ態勢の整備
  3. 受入側の既存の職員にとっても働きやすい職場づくり(業務改善・人事制度拡充など)

といった施策を進めることで、積極的な採用活動を推し進めることが求められているのではないかと思います。

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【この記事を書いた人】

野沢 悠介 株式会社Blanket取締役

1983年生まれ。東京都出身。立教大学コミュニティ福祉学部卒。ワークショップデザイナー。2006年株式会社ベネッセスタイルケアに新卒入社し、採用担当・新卒採用チームリーダー・人財開発部長などを担当。介護・福祉領域の人材採用・人材開発が専門。2017年に参加して株式会社Join for Kaigo(現 Blanket)取締役に就任。介護・福祉事業者の採用・人事支援や、採用力向上のためのプログラム開発などを中心に「いきいき働くことができる職場づくり」を進める。