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SNS経由で応募が年間100件の福祉事業者が語る、採用成功の秘訣とは?【KAIGO HR FORUM 2021レポート①】

2021/12/09

【ゲスト】
株式会社ビジョナリー(HIDAMARI GROUP) 代表取締役 丹羽悠介氏
Twitterはこちら: @yusukeniwa32
Instagramはこちら: @hidamari_group

KAIGO HR FORUM 2021 レポート第1弾は「【SNS活用】SNS経由で応募が年間100件!成功企業から学ぶSNS採用」です。

採用激戦区の東海3県を中心に障害福祉サービスを展開するHIDAMARI GROUPでは求人広告を出さず、SNS経由での応募が年間100件以上! 丹羽さんが利用しているSNSは、合計3万フォロワーを獲得しています。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で採用のオンライン化が一気に進み、SNSアカウントを作った法人さんも多いのではないでしょうか?

作ったはいいものの、いざ運用を始めると採用活動でなかなか効果がでない……。「どう投稿したら見てもらえる?」「拡散されるためには何をしたら?」そんなお悩みの解決策、すぐに始められる実践方法をHIDAMARI GROUP代表の丹羽悠介さんからをお伺いしました。

Cの次に背が高い人は?―文章の伝わり方は、想像とは異なることもある

「世界中の人の人生を応援する」というビジョンのもと、今後、施設の全国展開、海外進出も検討しているHIDAMARI GROUP。スタッフの平均年齢が27歳と若く、約7割が男性であることが特徴です。「これもSNS活動のおかげ」と丹羽さんは言います。

セミナー冒頭、丹羽さんが視聴者に投げかけたのは、とある質問でした。

「Cの次に背が高い人は誰だと思いますか?」

実はこの質問、着目する言葉が異なると回答も変わってしまうんです。
もし、「Cの次に(来る)背が高い人」と解釈された方は、165cmのDと答えるでしょう。
ところが、「Cに(次いで)背が高い人」と解釈された方は、155cmのBという答えをだしてしまいます。
(※こちらのツイートについて語られています )

これはテキストで情報を得るSNSで起こりがちな落とし穴。発信の仕方次第で、自分の想像とは違うニュアンスで相手に伝わってしまうことがあります

SNSは利用者が多いという反面、言葉の捉え方も十人十色。テキストのみの情報では、ミスマッチに繋がってしまうこともあります。採用活動で利用するときは、その後の面接や面談といった対面での説明を丁寧にすることも大切だと丹羽さんはおっしゃいます。
HIDAMARI GROUPでは、SNSで応募があった後、必ず1日職場体験をしてもらい、SNSでは伝えきれない施設の雰囲気や介護の大変さなどリアルな部分も感じてもらいます。

SNSを始める前に、考えなければならないこと

ここでSNSの投稿・運用を始める前に、整理しなければならないことがあります。
それは『会社の目指す姿、理念、ビジョンを明確にすること』『採用したい人物像を明らかにすること』の2つ。

どんな法人・事業所にも今後の目指す姿や、大切にしたい理念・ビジョンがあります。まずはそれらを明確にする。ちゃんと言葉になっていなくても「こうありたい」を考えてみてください。
もしすでにそれらがある場合は、改めて本気でそれを目指しているのか再確認をします。その結果、変わっているのであればもう一度新しく設定し直す必要があります。

次に、そのビジョンの達成に必要な人材はどんな人なのでしょうか。目標と紐づけながら、採用したい人物像を明らかにしていきます。今現在、どんな人が評価されていて、今後どんな人を評価していきたいのかという視点でも考えを整理してみてください。

そしてこちらは、丹羽さんの会社が2つを明確化するために作成した資料です。

HIDAMARI GROUPでは、ビジョンに「世界中の人の人生を応援する」を掲げており、そのためには「自分の人生を本気で楽しんでいる人」を採用したいと考えています。
さらに「福祉は家族よりも長い時間を過ごす、一生涯に関わる仕事」だと丹羽さんは考えているため、「一生付き合っていきたいと思われる人間」でないとこの仕事をするのは難しいと正直に伝えることもあるそうです。

たった一人に向けて発信をする―ペルソナの設定 

採用したい人物像が明らかになったら、次にペルソナの設定を行います。ペルソナとは、サービスや商品の典型的なユーザー像のことで、マーケティングにおいて活用される概念です。名前や家族構成、趣味、行動特性や考え方等を細かく設定した架空の人物を作ることで、この人へ情報が届くような施策を考えるヒントになります。

こちらは中途採用を行っていたときに、丹羽さんが社内で作成した架空人物「南野慶祐」の参考資料です。

社内会議の中で、どんな人に来てほしいのかを考えると
・そもそも“人”が好きな人
・目指している理念・志に共感している人
・夢を持っている、もしくは今はなくともこれから夢を持ちたいと考えている人
・転職を考えている人
・福祉が好きで、今後も福祉の仕事をしていきたいと考えている人
・介護福祉士の資格を持っている人
というのが挙がりました。

架空の人物設定なので、想像や空想で問題ありません。とにかくしっかりとメインターゲットとなる一人をイメージすることが大切です

そして、このたった一人、この人に届けるようSNSで発信をします
そうするとターゲットに近い方に発信が届き、興味を持ってくれる可能性がグッと高まるそうです。

SNS実践編―3つのポイント

SNSはそれぞれにメインで投稿できるものや、利用者の年齢層が異なっています。
Twitterは、※リツイートという機能があるため拡散力に優れています。しかし1回に投稿できる文字数は140字以内と限られており、伝える内容が薄くなってしまう可能性があります。
Instagramは、写真をメインに投稿することができるため、会社の様子を視覚的に伝えることに優れています。しかし発信者側からすると、写真がたくさん必要になるため大変さを感じるかもしれません。

丹羽さんは一番最初に始めるSNSとしてTwitterをおすすめしています。140字という制限はあるものの、手軽さと拡散力があるからこそ認知されやすいという利点があります。
今回は、Twitterでの利用を想定してポイントを紹介します。

※リツイート……他者のコメント(ツイート)を引用して再投稿すること。注目すべきコメントを広める目的で行う。

①文章はP・R・Pを意識する

P・R・Pとは、ポイント・リーズン・ポイントの略です。文章の冒頭に内容の要点を入れ、中ほどに理由、最後を結論や伝えたいことで締める、という方法です。
難しい話やかっこいい話でなくても、思っていること、本音の言葉を、この順番に編集して発信してみましょう。
また、最初は140字に収めることを考えずに文章を作ってみる。丹羽さん自身も一旦文章を作ってみると大体140字を超過してしまうそうです。そこから、PRPを見直し、余分な言葉を省いて発信しています。

もちろん毎日このような書き方でなくても、問題ありません。「今日はこんなことがあった」という感想を発信することで受信者は人間味を感じることができます。しかし、その投稿で共感を得られることは少ないため、まずはPRPを意識した文章の書き方で発信してみましょう!

②発信の時間帯
発信するときは、どの時間帯に投稿するか、というのも重要なポイントです
一般的にSNSの滞在時間が長いと言われているのが

朝:7時~9時 朝起きてからのチェックや、通勤中でのチェック
昼:12時~14時 お昼休憩などの休憩時間
夜:20時~ 帰宅してから食事等を終えた自由な時間   の3パターンです。

ここでは、さきほど明確にしたターゲットが「どういう時間帯で動いているのか」という視点が大切になります。ペルソナ「南野慶祐」で考えてみると、中途採用の転職者であるので、通勤時間、お昼休憩、仕事終わりが狙い目です。

しかし、通勤時間は「よし働くぞ」とモチベーションの高い時間帯かもしれない。そうであれば仕事終わりの「今よりもう少しやりがいのある仕事をしたい」と考えている時間帯で興味を持たれやすくなるかもしれません。

そのように届けたい人、ターゲットがどんな1日を過ごし、どの時間帯にどんな心理でいるのかを想定することも重要です。

③採用動線を考えよう

SNS採用のゴールは、発信に気づいてもらい、相手から問い合わせがくることです
そのために、「採用動線」を整えることが重要となります。

まず第1段階、発信に気づいてもらう
日々たくさんの情報があふれているSNSは、ターゲットを前にした大きな教室で誰もが手を挙げているようなもの。手を挙げる回数が少ない、つまり発信頻度が少ないとなかなか気づいてもらえません。常に手を挙げた状態でいるために、最初は頻度を高く発信しましょう。

第2段階、プロフィールの充実化
発信に「※いいね」がついたり、面白いなと思ってもらえると、次に相手が気になるのは、どんな人なのか、という部分です。この投稿をしたのはどんな人なのか、何をしている人なのか。その疑問を解消するために、プロフィールの充実化、職業や目指すビジョンなどをプロフィールに盛り込みましょう。

※いいね……他の利用者の投稿に対し、ボタンをクリック(タップ)することにより共感等の意志を示せる機能

第3段階、フォロワーの獲得、問い合わせ
どんな人なのか、がわかると、相手は最新の投稿を見ます。プロフィールでどんな人なのかを把握する、そして自分にとって有益な情報をほんとうに呟いている人なのかチェックします。そうしてようやくフォロワーの獲得に繋がります。
ただもしかしたらもっと情報が欲しい、と思う方もいるかもしれません。そのためプロフィールに外部サイトのURLを載せておくのもポイントのひとつです。Instagram、会社のHP、採用HPといった他の情報を相手に与えることで、より具体的に会社・事業所を知ってもらうことができます。

Instagramにも外部サイトのURLを載せることができるので、先に写真で施設の雰囲気を掴んでもらい、会社HP、採用HPへと繋げることもできます。

Twitter、Instagramには、直接メッセージを送ることができるDM(ダイレクトメール)という機能があるため、興味のある方から直接問い合わせがくることがあります。
ターゲットに自分たちのどんな情報をキャッチしてほしいかを考えながら、最終的に問い合わせがくるように採用動線を整えましょう!

無限の可能性がSNSにはあるー始める前と後

SNS採用を始めた当初、丹羽さんは「学生」をターゲットにしていました。そして始める前、学生たちに「会社の何を知りたいか」というアンケートを実施。回答でもっとも多かったのは「人間関係」という結果でした。このニーズに応えるため、Instagramで人間関係がわかるような写真の投稿を開始、さらにそこから福祉の魅力を感じてほしいと思い、認知度の高いインフルエンサーとコラボすることもありました。福祉に興味がない人に、別の角度から会社を知ってもらうため、フィットネス実業団の立ち上げも。
またHPから問い合わせをより手軽にしてもらえるように、メールフォームからチャットに変更しました。

すると、SNS経由での問い合わせ数が増加。今では求人広告を出さず、これまで求人にかけていたコストを福利厚生に還元し、一緒に働きたい人が喜んでくれるような制度の導入を進めたそうです。

さらに、丹羽さんだけでなくスタッフもSNS投稿をはじめ、相乗効果的にさらに問い合わせがくるようになりました。

SNSを利用した採用は、拡散力や認知度の向上にとても優れています。それゆえに、文章の書き方、投稿頻度や採用動線など相手のことを考えた、きめ細かな戦略と継続力が不可欠。大変だなと感じる方は、社内で広報部を新設する方法や、外部に委託する方法も検討してみてください。

今では多くの人がSNSを利用しているため、従来の採用活動だけでは届けられなかった広範囲の人たちへ周知してもらうチャンスにもなります。実際に、HIDAMARI GROUPスタッフの中には他県から引っ越して来る方もいたそうです。丹羽さん自身、SNSの可能性を感じた瞬間でした。

何が正解か、何がヒットするかわからないからこそ、難しいと思わずにまずは始めてみることが大切です。
今では多くのフォロワー数を獲得している丹羽さんも最初は0からのスタート。苦手でありながらも発信を続けた結果、応募件数が増え、メディアで取り上げられることも多くなったそうです。

そして、認知度の向上だけでなく働いている社員のご家族もSNSを通して、どんな会社で働いているのか、どんな人たちと働いているのかを見られるようになりました。こうした副次的な効果も多くあるため、これからの採用手法としてSNSはまだまだポテンシャルを秘めています。

セミナー後半、SNSがもつ可能性と同時に、その危険性についてもお話がありました。誰かの顔を出す際には必ず許可をとること、言葉がもつ刃物としての側面を忘れないこと。顔が見えないからこそ、普段のコミュニケーションよりももっと繊細に気遣いや思いやりを持つことが大切です。丹羽さん、ありがとうございました!

(文/田邉なつほ)

【ゲスト・登壇者プロフィール】

株式会社ビジョナリー(HIDAMARI GROUP)
代表取締役 丹羽 悠介 氏