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採用単価は3万円台、「当たり前」のことに丁寧に向き合う株式会社土屋の採用PRとは?【成功事例・プロから学ぶ「介護福祉業界の採用PR講座」イベントレポート③】

2022/11/22

採用の悩みは尽きないものです。応募が集まらない、自社に合った採用方法が分からない、とにかく常に忙しい──。

約40都道府県にて、重度訪問介護サービスを提供する株式会社土屋(以下、土屋)。年間5,000名を超える応募があり、直近四半期の採用数は567名。介護業界における採用単価が数十万円といわれている中、土屋の採用単価は35,922円に抑えられています。

いわゆる「採用に強い」企業である土屋。採用で徹底しているのは、求人原稿の見直し、宣材写真の見直しなど、どの企業でも「当たり前」として行っているものばかり。目の前の「当たり前」にひとつひとつ真剣に取り組んだ結果、土屋で働くスタッフが増え、事業を支えるという好循環が生まれています。

土屋流採用PRの裏側を、最高人事責任者の大庭 竜也さん、人事総務課でチーフマネージャーを務める大野 鮎美さんにお話いただきました。

【ゲスト】

人事総務課 最高人事責任者
大庭 竜也(おおば たつや)

スポーツブランドの販売員として勤務後、介護系ベンチャー企業に就職。事務所の管理者や広域マネージャーを経験し、2020年10月に株式会社土屋へ転職。本社管理部、総務課責任者を経て、現職。

人事総務課 チーフマネージャー
大野 鮎美(おおの あゆみ)

編集プロダクションで6年間ライター兼ディレクターとして、旅雑誌の編集業に従事。退職後は、フリーライターとして独立すると同時にネイルサロンを開業。2020年、株式会社土屋の立ち上げに参画、現在に至る。

最初から上手くいっていたわけではない

土屋は、重度訪問介護事業「ホームケア土屋」を主力事業として2020年8月に設立されました。2,000人を超える従業員が働いていますが、現在も月間200名近くの採用に成功しています。

注目すべきは採用単価。介護業界での採用単価は数十万円(正職員の場合)といわれていますが、直近四半期は35,922円と業界平均をかなり下回っています。

現在は、媒体チームが1名、採用チームが3名という少数精鋭の組織で採用活動に取り組んでいます。

順調に見えますが、「最初から上手く行っていたわけではない」と大庭さんはいいます。重度訪問介護という事業の特性上、どんな仕事なのか求職者がイメージしづらく、応募を躊躇させる要因がそこかしこにあったとのこと。

誰にでも理解できるようなPRになっているか確認することから始めたそうです。

目の前の「当たり前」に真剣に取り組む

土屋の採用活動は、決して特別なことを行っているわけではありません。 大野さんが今回強調したのは、「求人原稿の見直し」「宣材写真の見直し」「求人媒体の選定と担当者とのコミュニケーション作り」の3点です。どれも採用担当者にとっては「当たり前」のことですが、ひとつひとつ丁寧に取り組み、採用活動をブラッシュアップしていったそうです。

例えば重度訪問介護の仕事内容について。従来の原稿、現在の原稿は以下の通りです。

【Before】

担っていただくお仕事は重度訪問介護です。(20文字)

【After】

お願いするお仕事は、重度の障害をお持ちで車椅子が必要な方や、ベッドで寝たきりの方などのサポートです。(50文字)

重度訪問介護とは、障害を持つ方を対象とした訪問介護のこと。ですが、介護経験がない求職者は、そもそも重度訪問介護のことを全く知らない可能性があります。社会人経験のない学生が読んでも十分理解できるレベルまで文章を噛み砕くことが、分かりやすい求人原稿を書くコツだそうです。 大野さんは「大切なのは求職者の立場に立つこと。求人原稿を読み、自己満足な原稿になっていないか俯瞰して見るべき」と話します。

「ネガティブ」を「ポジティブ」に変換する

続いて大野さんが紹介してくれたのは、以下の原稿です。

【Before】

仕事内容は、医療的ケア(資格取得無料)・介護記録・夜間の見守りなど(33文字)

【After】

具体的なお仕事内容は、喀痰(かくたん)吸引や経管栄養といった医療的ケア、タブレットを使った介護の記録のほか、夜間は就寝中のご利用者を見守っていただきます。医療的ケアに必要な資格は就業前に無料で取得ができる環境を整えています。(112文字)

前述したポイントの他、求職者にとって魅力的なポイントを分かりやすく記載しました。従来原稿では括弧書きで「資格取得無料」と書いてあるのみ。「資格が無料で取得できる。しかも就業前の段階で」というメリットを訴求し、求職者の応募意欲を高めます。

また、仕事内容を伝える際に、どうしても「ネガティブ」を感じさせる情報を掲載しなければならないことがあります。大野さんは「見方を変えれば『ポジティブ』に伝わる可能性がある」といいます。

例えば土屋の場合、曜日固定、時間固定の勤務形態が非常に多いそうです。固定シフト制の勤務の場合、「急な休みを取得しづらいのでは?」と思われてしまいがちです。しかし働く曜日や時間帯が固定されることで、オンオフの切り替えがしやすかったり、プライベートの予定を立てやすくなったりするメリットがあります。このように固定シフト制は、「プライベートを充実させやすい」というポジティブな要素として伝えられるのです。

現場の雰囲気が伝わる写真は、スマホで撮影できる

土屋では、求人媒体に掲載する写真にもこだわりを持っています。文章では伝えられない現場の雰囲気、温度感を伝えるために写真は効果的だからです。

といっても、プロのカメラマンに毎回お願いするわけではなく、スマートフォンを使ってスタッフ自ら撮影することもあるそうです。

写真①は、元データよりも明るさを加えた写真です。ほんの少し調整するだけで、「こういったケアの現場があるんだ」と臨場感を伝えられる写真になります。

写真②は、看護師が上を向いて笑顔でいる写真です。スタッフの志の高さ、元気の良さ、温かみなど、働く上での前向きなイメージを持ってもらう構図になっています。

写真③で映っている2人は、実際は手元のカルテから目線を外しています。手元のカルテを見た状態で写真を撮ると、不自然な目線として映ってしまうからです。

土屋では写真撮影の際に、様々な角度から大量の写真を撮るそうです。他業界の宣材写真をチェックし、「こんな写真はどうか」とメンバー同士で共有するのも欠かせないと話してくれました。

求人媒体の担当者を巻き込もう

求人媒体に予算をかけている企業は多いと思います。ですが「有名な求人媒体に掲載するから大丈夫!」と安心するのでなく、自社の求める人材の応募があるのかを常にチェックする必要があります。

求人媒体にはそれぞれ特性があります。エリア、職種、勤務形態など、求人媒体ごとの強みを把握し、効果的な採用活動を検討しなければなりません。

その上で大野さんが強調したのは、「求人媒体の担当者を味方につけてください」ということ。採用関連の最新情報、求人原稿ごとの感触、ライバル企業の動向といった情報は、採用活動を成功させるための貴重なヒントにつながります。日頃からカジュアルにやりとりができるようコミュニケーションを密にとるのが良さそうです。

毎日10〜15分でも時間を見つけてほしい

他にも「応募と同時に面接設定できる仕組みを作る」「求職者にとって最適なオンライン面接ツールを使う」「無料で使える求人媒体を使い倒す」など、採用PRに関する施策を細かく話していただきました。

その全てに共通しているのは、試行錯誤のための時間を、毎日10〜15分でも確保してほしいということ。

採用担当者は日々仕事に追われています。ついルーティンワークで「こなす」ようになってしまいがちですが、採用のトレンドや求職者の動向は日々変化します。「この企業で働くことがイメージできる」「この企業で働きたい」と思ってもらうために、色々な施策を試すことが重要です。

特に、求職者との最初の接点となる求人原稿の作成は、注力してほしいことの1つ。企業と求職者の「架け橋」となる文章を作るのは、一朝一夕にはいきません。「何度もリライトを重ねることで、気付けば良い原稿ができている状態になります」と大野さんはエールを送ってくれました。

(文/堀聡太)