高卒採用の動きから考える。介護・福祉分野にとっての“早期接点”の意味
公開日:2026/03/09 更新日:2026/03/09
介護・福祉の人事・組織づくりを支援するコンサルタント・太田が、話題のニュースやトレンドから、現場で役立つヒントを読み解く連載コラム。今回の”ひとさじ”では、文部科学省が公表した高卒就職内定率のデータをもとに、「高校生に選ばれる職場」とはどういう状態か、介護・福祉が早期接点をどう活かすかを問い直します。
文部科学省が公表した「2026年3月高等学校卒業予定者の就職内定状況(2025年10月末時点)」によると、10月末時点の就職内定率は76.0%でした。前年同月比で1.3ポイントの低下となっています。
昨年度は、10月末77.3%から12月末91.3%、そして3月末には98.0%まで上昇しました。最終的にはほぼ全員が進路を決めていく流れは続いていますが、10月末の段階では前年よりやや落ち着いた動きも見られます。とはいえ、この時点で4人に3人が内定を得ているという事実は、高校新卒市場が引き続き活発に動いていることも示しています。
| 分類 | 内定率 |
|---|---|
| 全体 | 76.0% |
| 男子 | 76.9% |
| 女子 | 74.3% |
男女別では男子76.9%(1.0ポイント減)、女子74.3%(1.9ポイント減)。学科別では、看護90.2%、工業88.6%、商業80.9%、情報78.7%、福祉77.6%という順で、普通科は62.2%となっています。
あわせて厚生労働省は、「2027年3月卒業予定者の採用選考期日」も公表しました。求人受付は6月1日、学校訪問は7月1日、応募書類提出は9月5日(沖縄は8月30日)、選考・内定は9月16日からとされています。
高校新卒採用は例年と同様の流れで進みますが、そのなかでどのような準備や関わり方をするかによって、結果の現れ方は少しずつ変わってきます。
10月末76.0%という数字をどう見るか
10月末時点で76.0%という数字は、決して低い水準ではありません。ただし、高校生の就職活動は夏から秋にかけて集中的に進むため、この段階での内定状況は、その後の展開に少なからず影響します。
看護や工業の内定率が高いのは、資格や職種が比較的明確で、求人と進路が結びつきやすいことが背景にあります。専門性が具体的にイメージしやすい分、早期に進路が定まりやすい傾向があります。
福祉学科の77.6%も安定した水準ですが、看護や工業と比べるとやや差があります。進学との併願や他業界との比較が続いている可能性もあり、必ずしも「人気が低い」という単純な話ではありません。
また、普通科の62.2%という数字は、高校生全体が一斉に就職へ向かっているわけではないことを示しています。進路の選択肢が広い分、決定までに時間がかかる傾向もあります。
介護・福祉にとっての高校採用
介護・福祉分野にとって、高校新卒は地域とつながる重要な入り口です。地元で働きたいという思いを持つ若年層と出会える貴重な機会でもあります。
一方で、高校生の進路選択は、必ずしも業界理解が十分な状態で行われるわけではありません。仕事内容や働き方が具体的にイメージできなければ、検討の土俵に上がりにくいのも事実です。
今回の内定率の動きを見ると、早い段階で接点を持ち、具体的な情報を届けられた企業や法人が一定の成果を上げている構図も見えてきます。6月の求人受付開始や7月の学校訪問は、単なる事務的なスケジュールではなく、「最初にどんな印象を持ってもらえるか」という大切な機会でもあります。
「早めの接点」が持つ意味
高校新卒採用は、大学生採用とは少し性格が異なります。情報源が限られ、学校や先生の影響も大きいという特徴があります。そのため、
・学校との関係づくり
・職場見学や体験の機会の提供
・仕事内容をかみ砕いて伝える工夫
といった取り組みが、進路選択に直結しやすくなります。
介護・福祉は、「大変そう」「忙しそう」という印象を持たれることも少なくありません。だからこそ、実際の職場の様子や一日の流れ、先輩職員の働き方などを具体的に示すことが重要になります。
高校生にとっては、制度や待遇の詳細よりも、「ここで働くとどんな毎日になるのか」「どんな人たちと一緒に過ごすのか」といったイメージが判断材料になります。その具体性が、選択肢に入るかどうかを左右します。
スケジュール公表を“準備の合図”として
2027年卒の採用スケジュールが示されたことで、準備のタイミングも明確になりました。
求人票の表現をどう整えるか。
学校訪問で何を中心に伝えるか。
見学や体験の受け入れ体制をどう整備するか。
こうした準備は、採用担当者だけの仕事ではなく、日々の職場づくりとつながっています。育成の流れやサポート体制が整理されていれば、自然と言葉にも表れます。
数字の先にあるもの
最終的に3月末には98%前後まで内定率が上がる傾向は続いています。つまり、多くの高校生がどこかの職場へ進んでいく構図は変わっていません。
そのなかで介護・福祉が選ばれるためには、求人の有無だけでなく、「この職場でどんな経験ができるのか」が伝わることが重要になります。
どんな成長の機会があるのか。
どんな先輩がいて、どんな関係性の中で働くのか。
困ったときにどのような支えがあるのか。
そうした具体的な姿が見えてはじめて、仕事の選択肢として実感を伴います。10月末76.0%という数字は、単なる統計ではなく、「どのタイミングで、どのように出会うか」が大切であることを示しているとも言えます。
高校採用は一度きりの取り組みではなく、地域との関係づくりの積み重ねでもあります。今回の調査結果とスケジュール公表を、あらためて自分たちの準備状況を見直すきっかけとして捉えてみてもよいのではないでしょうか。
