介護職員の給料は?基本給や初任給など徹底調査
2023/10/20
介護職員の給料事情について、「基本給はどのくらい?」「年齢や施設形態によって差はあるの?」と、気になる方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、雇用形態や施設形態、勤続年数などさまざまな視点から介護職員の平均給料を紹介します。
また、介護職員の給料を上げる方法についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
介護職員の平均給与と平均基本給は?
厚生労働省が発表している「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、2022年12月の介護職員の平均給与額は常勤で322,550円、平均基本給額は186,410円となっています。
なお、平均給与額はボーナスなどの手当を含む給与額、平均基本給額は手当を抜いた給与額です。
また、2021年の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、介護職員の平均給与額が常勤で316,610円、平均基本給は187,180円でした。
この結果から、介護職員の平均給与は31〜32万円程度、平均基本給は18〜19万円程度といえます。
ただし、給料額は施設や保有資格によって異なるため、あくまで参考程度に留めておいてください。
介護職員の初任給は?
少し古い資料となりますが、厚生労働省が発表する「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、勤続1年未満の介護職の平均給与額は月額238,740円、平均基本給額は167,050円となっています。
同資料によると、勤続1年未満の平均基本給額が最も高いのは訪問介護施設の175,410円、反対に低いのは介護療養型医療施設の149,570円であり、その差は25,840円です。
訪問介護とは、身体介護・生活援助・通院介助を行う仕事であり、特に身体介護は資格保有者に限られるため、初任給が高い傾向にあります。
さらに、勤続1年未満の介護職全体の平均年齢は、平均給料額と平均基本給額ともに39歳です。転職者の数も含むため一概にはいえないものの、40歳近くで介護職員として働き始める方が多いと分かります。
雇用形態別の介護職員の平均給料
介護職員の給料は、雇用形態によっても差があります。ここでは、常勤と非常勤それぞれの平均給料を紹介します。
常勤の平均給料
雇用形態 | 平均給与額 |
常勤 | 322,550円 |
非常勤 | 204,440円 |
前述のとおり、2022年の介護職員の平均給与額は常勤で322,550円です。
また、介護支援専門員(ケアマネジャー)になると、平均給与額は常勤で365,180円となります。
介護職員の平均給与額と比較すると42,630円も高いものの、介護支援専門員になるためには介護福祉士などの資格取得後に介護業務を5年以上経験し、さらに資格試験に合格する必要があります。
非常勤の平均給料
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員の平均給与額は非常勤で204,440円、介護支援専門員では299,250円です。
雇用形態別で比較すると介護職員では118,110円、介護支援専門員では65,930円の差があると分かります。
勤務形態の制限が少ない非常勤は、働きやすいというメリットがある一方、給料面においては常勤よりも低くなります。
施設形態別介護職員の平均給料
施設 | 常勤 | 非常勤 |
介護老人福祉施設 | 347,560円 | 214,000円 |
介護老人保健施設 | 341,700円 | 283,350円 |
介護療養型医療施設 | 301,730円 | – |
訪問介護事業所 | 321,790円 | 206,670円 |
通所介護事業所 | 283,170円 | 166,370円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 | 296,890円 | 210,500円 |
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、施設形態別での常勤と非常勤の平均給与額は上記のとおりです。
介護老人福祉施設や介護老人保健施設の平均給与額が高いのは、他の施設とは違い夜勤をともなう勤務があるからです。
夜勤がある場合、基本給とは別に夜勤手当がつくため、他の施設よりも給料が高くなる傾向にあります。
年齢・男女別介護職員の平均給料
年齢 | 男性 | 女性 |
29歳以下 | 290,050円 | 283,150円 |
30~39歳 | 337,360円 | 309,070円 |
40~49歳 | 359,180円 | 318,630円 |
50~59歳 | 339,040円 | 317,030円 |
60歳以上 | 279,880円 | 291,090円 |
男女別で比較をすると、男性のほうが女性よりも給料が高く、給料が最も多い年齢は男女ともに40〜49歳です。
また、40〜49歳頃に役職や専門職に就くケースが多いことから、この年代の給料が一番高くなるといえるでしょう。
ただし、60歳以降は夜勤に入る頻度が減ることで、給料が下がる場合が多いようです。
勤続年数別介護職員の平均給料
勤続年数 | 平均年齢 | 実労働時間数 | 平均基本給額 |
1年目 | 38.7歳 | 164.1時間 | 174,290円 |
2年目 | 40.4歳 | 164.0時間 | 175,680円 |
3年目 | 42.1歳 | 163.9時間 | 175,960円 |
4年目 | 42.9歳 | 164.8時間 | 176,880円 |
5年目 | 43.7歳 | 163.7時間 | 181,630円 |
10年目 | 46.4歳 | 164.6時間 | 187,530円 |
15年目 | 46.9歳 | 161.7時間 | 193,540円 |
20年以上 | 50.7歳 | 161.8時間 | 219,630円 |
勤続年数別の平均基本給額をみると、勤続年数が長くなるほど基本給が増えています。
また、基本給は緩やかに上がっていますが、5年目以降は任される業務も多くなることから、昇給率がやや高くなっているのが分かります。
介護職員の給料が低いといわれがちな理由
介護職員の給料は年々上昇傾向にあります。
平成30年度と令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、2018年は介護職員の平均給与額は常勤で月額300,970円、2022年は322,550円と4年間の間に2万円以上増えています。
しかし、令和3年分民間給与実態統計調査によると全産業の平均は約37万円(年443万円)であるため、他の産業に比べ給料が低い傾向にあります。その理由として以下の3つがあげられます。
・介護報酬の上限が決められている
・平均勤続年数が他の産業と比べて低い
・介護職員の専門性を重要視されていない
次項で詳しく解説します。
介護報酬の上限が決められている
介護職員の給料は、介護施設の運営費や経費を含め、介護報酬から支払われています。介護報酬とは、介護施設や事業者が要介護者または要支援者の利用者へ介護サービスを提供した対価として、国から支払われるお金のことです。
介護報酬額は、個々の介護施設や事業所が決められるものではなく、介護保険法で厚生労働大臣が介護報酬の基準額を設定しています。つまり、介護施設や事業所が受け取れる介護報酬の上限が決まっているのです。
そのため、運営側の介護施設や事業所の利益は頭打ちになりやすく、昇給やボーナスの支払いがしにくい環境にあります。
平均勤続年数が他の産業と比べて低い
介護職全体の平均勤続年数が、全産業と比べて短いのも介護職の給料が低い原因の一つです。
厚生労働省が発表する「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」によると、全産業の平均勤続年数は12.3年です。
対して、介護職全体の平均勤続年数は、公益財団法人介護労働安定センターが発表する「事業所における介護労働実態調査結果報告書」によると6.8年となっています。
介護職員の専門性を重要視されていない
介護の仕事は、無資格・未経験から始められる職種もあるため、「誰にでもできる」というイメージを持たれがちですが、実際は非常に専門性の高い職業です。
利用者一人ひとりの状態や環境に応じて、最適な介護サービスを提供しなければならないため、多くの経験やスキルが必要とされます。
しかし、国家資格が必要な医師や看護師などの医療従事者に比べると、介護職は社会のニーズや業務の負荷に見合うだけの評価をされていないといえるでしょう。
ただし、介護職業者に向けて国は、「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」の支給を行うなど、介護職員の待遇改善に取り組んでいます。今後も、介護業界の需要は上がると予測されているため、介護業界の待遇が良くなる可能性はあるといえます。
介護職員の給料を上げる方法
続いて、介護職員の給料を上げる方法についてみていきましょう。具体的には、以下の5つがあげられます。
・資格を取得する
・夜勤の頻度を増やす
・勤続年数を長くする
・責任のある役職を目指す
・スキルを生かして副業を行う
資格を取得する
保有資格 | 平均給与額 |
介護支援専門員 | 376,770円 |
社会福祉士 | 350,120円 |
介護福祉士 | 331,080円 |
実務者研修 | 302,430円 |
介護職員初任者研修 | 300,240円 |
保有資格なし | 268,680円 |
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」をみると、資格の有無やその種類によって平均給与額に差があることが分かります。
介護職員初任者研修以上の資格を取得すれば、無資格より給料は高くなります。
また、実務者研修を修了していれば一定期間実務経験を積むだけで、介護業界唯一の国家資格である介護福祉士の受験資格を得られます。介護福祉士を取得すると平均給与額がアップするだけでなく、転職やキャリアアップを考える際にも有利です。
夜勤の頻度を増やす
介護職は、入居型の介護施設の場合24時間体制の施設が多く、介護職員が交代で夜勤を行う場合がほとんどです。夜勤に入ると夜勤手当がつくため、積極的に夜勤を入れてもらえば給料アップにつながるでしょう。
また、施設にもよりますが、正社員の場合は月に4〜5回程度の夜勤がローテーションで組まれることが多いようです。
さらに、「夜勤専従」といって夜勤のみ入る働き方もあり、少ない勤務日数で高収入が見込めます。
ただし、夜勤専従は生活リズムが崩れたり体力面の負担も大きい働き方であるため、自身の状況にあわせて無理のない回数に調整しましょう。
勤続年数を長くする
多くの産業では、勤続年数に比例して給料が上がっていくものであり、介護職も例外ではありません。同じ職場で長く勤めることも、給料を上げる一つの手段といえます。
また、同じ職場に長く勤めることは昇給だけでなく、自身のスキルアップにつながるほか、上司や他のスタッフとの信頼関係も築きやすくなります。
その結果、任せてもらえる仕事が増え、仕事の幅が広がった結果、給料がアップする可能性もあるでしょう。
一方、同じ職場で長期間働き続けることは、モチベーションが低下するリスクもあります。このような事態を避けるためには、定期的に目標を立てたり、やりがいを見つけたりするなどしてモチベーションを管理することも大切です。
責任のある役職を目指す
役職に就くと、役職手当が支給されたり基本給が上がったりするため、介護職員よりも給料が高くなる可能性があります。
最も給料が高いのは、施設のマネジメントをする管理者ですが、管理者の次に給料の高い介護支援専門員、生活相談員などを目指すのも良いでしょう。
ただし、介護支援専門員はやりがいのある仕事である一方、介護福祉士を取得後さらに5年以上の実務経験が必要になるなどハードルは高いです。
スキルを生かして副業を行う
「資格を取得しても思ったほど給料が上がらない」など、給料アップが望めない場合は、保有している資格やスキルを生かし、副業を行うのも一つの手です。
最近では、「カイテク」や「Ucare(ユーケア)」など、有資格者向けのワークシェアリングアプリが提供されています。
また、介護現場での経験を生かし、空いた時間に講師として活動するのも収入を増やすための手段として有用です。
介護に関わる仲間とつながって情報交換をする
介護職員の平均給与は、他の業界と比べると決して高いとはいえません。これは、介護業界の仕組みや社会からの評価が実態からかけ離れていること、勤続年数が短いケースが多いことなどさまざまな要因が関係します。
しかし、前述のとおり給料アップは図れます。本記事で紹介した方法を参考に、給料アップを目指してみてください。
また、介護職は利用者と職員という限られた環境で働く職業であるため、給料事情や現場の困りごとなどを一人で抱え込んだり孤立してしまったりする方が少なくありません。
介護の仕事に関心がある方や、現在の給料について悩みがある方は、介護に関わる仲間とつながり情報交換をすることで解決の糸口をつかめるかもしれません。
介護に関心を持った仲間が集うオンラインコミュニティ「SPACE」では、組織や役職に関係なく介護に関する情報交換ができます。メンバー限定の定例会をとおして、新たな人とのつながりを得られるのも特徴の一つです。
気になる方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。