【介護の転職事情Vol.1】転職経験者の声から考える。離職防止のポイント。鍵となるのは“2段階制”
2024/07/31
株式会社Blanket(本社:東京都文京区本郷3-40-10 代表取締役:秋本 可愛)が運営する、介護・福祉業界の”よいチームづくり”のためのプラットフォーム「KAIGO HR FARM」は、73人の介護職に転職したきっかけや転職活動の実態、入職後の感想についてアンケート調査を実施しました。
今回は、介護職として転職経験があり、現在も介護職として働いている人の声から離職防止のポイントを考察していきます。
調査サマリ
・前職を退職した理由、1位は「職場・法人への不満」
・前職に対する満足度で、満足度が低かったのは1位「経営者・上司・リーダー」2位「給与」3位「運営方針・ケアやサービスへの考え方」
・前職を退職した理由で「職場・法人への不満」回答者と「現職への就業希望」回答者の間で最も満足度に差があった項目は「業務内容」
調査背景
「KAIGO HR FARM」は、主に採用、人材育成、職員定着、働きやすい職場づくりをテーマに業界内外の好事例や求職者・介護職員のリアルな声をお届けし、介護・福祉業界の人事・経営者の皆さんが現場で活かせる知識やノウハウをお伝えします。
今回は、業界の課題である採用・職員定着の改善策を見出すべく、転職経験者に転職したきっかけや転職活動中の情報収集、選考中の実態についてアンケート調査を実施しました。
前職を退職した理由は大きく分けて3つ。退職理由ごとに前職の満足度は異なる
転職経験の有無について質問すると、73人中58人が「ある」と回答しました。
「ある」と回答した人に前職を退職した理由について質問すると、回答は3つに分かれました。その中で最も多かった回答は「職場や法人に不満があった」、2番目に多かったのは「その他(転居、家庭の環境変化など)」、3番目が「前職の職場や法人への不満というより、『現在の職場で働きたい』と思って転職した」でした。
ここでは便宜上、「職場や法人に不満があった」をA群(不満解消の転職)、「前職の職場や法人への不満というより、『現在の職場で働きたい』と思って転職した」をB群(期待を叶える転職)、「その他(転居、家庭の環境変化など)」をC群とします。
58人に「前職の職場・法人への総合的な満足度」を質問すると、全体平均は2.6でした。それぞれの満足度を見てみると、A群は2.14、B群は3.27、C群は2.88となり、前職や法人に対する満足度が最も低かったのはA群でした。
次に、前職に対する満足度を項目別に質問しました。すると、全体で最も満足度が低かった項目は「経営者・上司・リーダー」で2.17、2番目は「給与」で2.47、3番目は「運営方針・ケアやサービスへの考え方」で2.52という結果になりました。
役職者や上司との関係性や、運営方針・ケアやサービスに対する疑問・不満が転職につながることがわかりました。また、当然のことながら、給与に対する不満が転職のきっかけになると全般に言えることではないでしょうか。
「前職や法人への不満」回答者と「現職への就業希望」回答者の差から考える「離職防止のポイント」
次に、やむを得ない理由で前職を退職したC群を抜かし、A群とB群を比較しました。
両者に大きな差がある項目を見てみると、最も差があったのは「業務内容」、2番目が「休日・勤務時間」、3番目が「労働環境」でした。これらの衛生要因(満たされないと不満につながる要素)に対してA群はB群よりも不満をもっていることがわかりました。業務の負担過多や長時間労働、働きにくさを感じたりすると、職場に不満が募って転職につながりやすくなると考えられます。これはA群ほど不満でないB群にも言えることでしょう。まずは衛生要因の整備が離職防止に不可欠と考えられます。
働く環境の土台を固めたうえで必要になるのが、やりがいや働きがいなどの動機付け要因です。職員のモチベーションが高ければ、役職者や上司との関係性も向上し、施設の理念やケアの方針に対して理解を示そうと意識も変わってくるでしょう。
これらのことから、衛生要因の整備、動機付け要因を生み出す工夫の2段階制によって効果的な離職防止ができると考えられます。
まとめ
今回は、転職経験者の声から離職防止に必要なポイントを考察しました。
離職防止を考えるうえで最初に見直すべき点は衛生要因です。健全な心身で働ける環境を整えなければ介護職は職場に不満を抱きやすくなってしまいます。まずは衛生要因が整備されているのかどうかを確認してみると良いでしょう。
衛生要因を整備したうえで、必要となってくるのが動機付け要因を生み出す工夫です。職員がやりがいや働きがいをもてる環境をつくることが定着率の向上につながると考えられます。
離職防止では衛生要因を整備し、介護職が動機付け要因をもてるようにアプローチを行なう。この2段階制を確立・継続することが介護・福祉の現場で必要ではないのでしょうか。
《調査概要》
・調査期間 :2022年6月10日 – 7月4日
・調査機関(調査主体):KAIGO LEADERS LAB.
・調査対象:転職経験のある全国の介護・福祉従事者
・有効回答数(サンプル数):73
・調査方法(集計方法、算出方法):インターネットリサーチ(無記名式)