3年で転職を決めた20代介護職のホンネ「だから私は前職を辞めた」【前編】
2024/10/30
職員の離職のなかでも「早期離職」に頭を抱える人事担当者は多いのではないでしょうか。若手職員は何をきっかけに退職を決意するのでしょうか。
「KAIGO HR FARM」では、若手職員の離職防止のヒントを見出すべく、入職3年程度で転職した介護職員3名をお招きし、座談会を実施しました。転職した経緯や現職の決め手などの本音から早期離職の防止策を考えていきましょう。
目次
・通勤時間、人間関係、上司の転職。退職理由は3者3様!
・介護以外の業務、風土がギャップになることも
・まとめ
Profile
Mさん
大学では福祉学科を専攻。新卒で通所介護施設に入職。3年目の終わりまで勤務し、現在の法人に転職。特別養護老人ホームに勤務したのち、同法人が運営している地域包括センターで相談員に転身。
Gさん
高校卒業後に看護師を志すも方向転換し、介護職の道を選んで有料老人ホームに入職。2年目の終わりで辞め、病院へ転職。1年勤務したのち2年派遣職員としてさまざまな施設を経験。その後、ホスピスに入職。
Sさん
短大の社会福祉学科卒業後に特別養護老人ホームに入職。約3年半勤務し、現在のグループホームに中途入社。介護職に従事。
通勤時間、人間関係、上司の転職。辞めた理由は3者3様!
―はじめに、前の職場を辞めようと思った理由を教えてください。
通勤時間が長く、3年通って限界を感じてしまいました。また、もっと介護の知識を深めたいと思ったことも理由です。デイサービスではなく、もっと介護が必要な人が集まる施設で働きたいと思ったんです。3年目の終わりに社会福祉士の資格を取得し、その時点ではあと2,3年は介護職をしたいと思っていましたが、いずれは相談員として勤務したいと思い、地域包括センターを運営している法人に転職しようと決めました。
最初の有料老人ホームから転職しようと思った理由はいくつかあります。2年ほど勤務して、もう一定以上の知識や経験を得られたし、違う角度から学んでキャリアアップしたいと思うようになりました。
症状が悪化して病院に入院した利用者のその後を知りたくなった気持ちもあり、病院で勤めようかと思いました。もともと看護師志望だったので利用者の病院での過ごし方が気になりました。人間関係も転職しようと思った理由です。社会人になりたてだったのでうまく馴染めなかったこともありますが、長く働いている人たちの輪に入れませんでした。
私は尊敬する直属の上司が転職すると聞いて、自分もついていこうと思い転職しました。前の上司は自分の好き嫌いで評価するような人で、おそらく私のことが嫌いで全然評価してくれなかったんです。尊敬する上司はそういうことがなく、正当に評価してくれました。
また、指導するにも全て教えずに自分で考えるように仕向けてくれる人で、たくさん考える機会を与えてくれました。「もっとこの人からいろんなことを盗みたい」と思える上司だったので、転職すると聞いた時は絶対についていこうと決意。施設のH Pを見ると、利用者を“お世話する”ではなく“お手伝いする”と書いてあり、利用者に対して上から目線でない感じが共感できたので迷いはありませんでした。今は同じグループホームで働いています。
―Gさんは病院の後に派遣でいろいろな施設に勤務し、それを経て現在のホスピスに転職されましたが、それぞれどのような理由で辞めようと思いましたか。
病院では緩和ケア病棟に配属されました。そこでは排泄介助とか本当に最低限の介護しかできず、生活を支えてあげることができなくてやりがいを感じられず「私が働くのはここじゃない」と思いました。あと、病院なので看護師の力が強くて。自分の思うように動けなかったことも転職を決めた理由です。その頃、次の職場ではもっと自分の時間を大切にできる所が良いとも思っていて、残業のない派遣を選びました。
派遣から現在のホスピスに転職した理由は、遠方への引越しです。就職先にホスピスを選んだのは、重度の利用者に寄り添うほうが自分に合うと思ったからです。給与が高かったことも決め手でした。
介護以外の業務、風土がギャップになることも
―皆さんが前職でギャップを感じ始めたのはいつ頃ですか?
2年目の後半くらいです。デイサービスでは毎月イベントを企画するのですが、私はそれが苦手でした。参加すれば楽しいと思えましたが、企画中は思うように進まず私にとっては負担で。イベントのことで悩むならもっと介護のことで悩みたい、もっと介護のことを考えたいと思うようになりました。
最もギャップを感じたのは有料老人ホームで、入職して1年経ったくらいの頃です。利用者よりも職員自身の負担軽減を一番に考える風土に違和感をもち始めました。仕事を増やさないために利用者の行動を制限したり、拘束したりする姿勢が私には合わないと感じるようになりました。
最初から期待してなかったので特にギャップはなかったです。そもそも何となくの流れで介護職になったので、仕事に対して理想や夢をもっていなくて。「仕事ってこんなものだろうな」と思いながら働いていました。
―辞めようと思った決め手は何でしたか?
決め手はありません。先ほど話したイベントの企画や通勤時間の長さに対するストレスが積み重なって、2年目の終わりに「もう無理」となりました。
私もこれという決め手はなかったです。日々感じていた違和感が積み重なって転職を決意しました。
最初に話したとおり、上司の転職です。上司のおかげでもっと知識を身につけたい、もっと成長したいと思うようになりました。上司は認知症介護実践研修の指導者で認知症の知識がたくさんある方。話を聞いていくうちに認知症ケアの奥深さを知り、そこに面白さを感じるようになりました。上司のおかげでやっと仕事が楽しくなったのに、いなくなると聞いて大ショック。「この人がいなくなったらまた前の自分に戻っちゃう」と危機感を覚えたのでついていくことを決めました。
―前職の離職率は高かったですか?また、他の人の辞めた理由はどのようなものでしたか?
私がいる時から入れ替わりは多かったです。辞めた後に聞いた話ですが後輩も3年で辞めたみたい。前々から新卒が入っても続く人が少なくて派遣が多かったです。辞めた理由でよく聞いていたのは体調不良ですが、本当はもっといろんな理由があったと思います。デイサービスなので夜勤はないけど、利用者を迎えてからお送りするまでは余裕がない現場だったから、そこに負担を感じて辞めた人は多いかも。通勤が大変なことが理由の人も多いと思います。
有料老人ホームの離職者はそこまで多くなかったと思います。病院も同じですが、若くて次の目標が見つかった人は2,3年で辞めていった印象です。
ポツポツ辞めていく感じでしたが、全体として異動が多かったので誰が辞めたのかを把握できませんでした。劣悪な環境というわけではなかったです。
ちなみに上司は、職員待遇を上げようとしない姿勢にがっかりして転職を決めたそうです。若手職員の給与が上がるような仕組みや改善案を施設長にプレゼンしたのに全く聞き入れてくれなかったとのこと。他に辞めた人も、上が詰まっているからキャリアアップできないと思って転職したと聞いています。
まとめ
3名の離職理由はそれぞれ異なるものですが、先々を踏まえた点においては共通しています。前職へのギャップの感じ方も異なりますが、ギャップを感じた2名は業務内容を一通り理解した頃から違和感を感じたことが分かりました。辞める決め手は特定の要因があるわけではなく、日々の違和感が積み重なって離職に至っていました。これという一つの要因で離職するケースは少ないのかもしれません。
離職理由は施設ごとの傾向が見られました。もちろん個人差はありますが、離職防止には辞める理由で多いものを把握する必要があるでしょう。例えば、辞める方に「最後だから」と声をかけて本音ベースで話す面談を設定し、本当の離職理由を聞き出してみるのも一つの方法です。離職理由の要因を改善することが離職防止につながります。
後編では、円満退職できたかどうかや前の職場でフォローしてほしかったことなどの本音をご紹介します。