3年で転職を決めた20代介護職のホンネ「どんなフォローがあったら辞めなかった?」【後編】
2024/12/06
若手職員の離職防止のヒントを見出すべく、「KAIGO HR FARM」では入職3年程度で転職した介護職員3名をお招きして座談会を実施しました。
前編では、前職で退職を意識し始めた時期や退職の決め手、自分以外に辞めた職員の理由について伺いました。今回の後編では、円満退職できたかどうかや、施設にしてほしかったフォローなど引き続き本音トークをご紹介します。
▶︎3年で転職を決めた20代介護職のホンネ「だから私は前職を辞めた」【前編】
目次
・辞める時に気になる「円満退職できるのか問題」。実際のところ、どうなの?
・「もしかしたら辞めなかったかも」前職にしてほしかったフォロー
・まとめ
Profile
Mさん
大学では福祉学科を専攻。新卒で通所介護施設に入職。3年目の終わりまで勤務し、現在の法人に転職。特別養護老人ホームに勤務したのち、同法人が運営している地域包括センターで相談員に転身。
Gさん
高校卒業後に看護師を志すも方向転換し、介護職の道を選んで有料老人ホームに入職。2年目の終わりで辞め、病院へ転職。1年勤務したのち2年派遣職員としてさまざまな施設を経験。その後、ホスピスに入職。
Sさん
短大の社会福祉学科卒業後に特別養護老人ホームに入職。約3年半勤務し、現在のグループホームに中途入社。介護職に従事。
辞める時に気になる「円満退職できるのか問題」。実際のところ、どうなの?
―いざ転職しようと思った時、躊躇しませんでしたか?
しなかったです。3年目の最後に実務者研修を修了すれば介護福祉士の受験資格を満たすことができるので、受験して無事に資格を取得したら新しい施設に行こうと決めていました。
勉強と仕事、転職活動を並行して頑張っていましたが、ある時体調が悪くなってしまったんです。その時に今の仕事は本当にダメだと思ったし、さらに辞めようと思うような出来事があって、より決意が固くなりました。
私も葛藤することはなかったです。迷っている時は転職しないと決めていたし、「もうここは私の居場所じゃない」と思ってすぐに動きました。
全くありませんでした!
―円満退職はできましたか?
できたと思います。送別会を開いてもらいましたし。でも、退職理由は母のことを全面に押し出しました。実際に母の体調が悪く、何かあった時にすぐ駆けつけられる職場でないと無理だと思っていました。一度勤務中に母から連絡が来て「一緒に病院に来て」と言われたので向かったのですが、片道1時間半はきついなと改めて思いました。
遠いことは最初から分かってたのではと思われるでしょうが、配属前は他の拠点に行くものかと思っていたんです。見事に予想が外れました(笑)。じゃあ一人暮らしをすればいいのにという話ですが、区内なので家賃が高くて無理でした。
有料老人ホームを辞める時は気まずい空気になりましたね。でも、最後に「お疲れさま」と言ってくれる人もいたので、全体的に見たら雰囲気は良かったのかもしれません。
病院の時は上長に止められました。病院の附属施設を勧められたりしましたが、行きたいと思えなかったので全てきっぱり断りました。
施設長に呼び出されて30分詰められました。一身上の都合で辞めるとしか言いませんでした。上司の転職先について行くなんて言ったら、狭い業界だからどこで働いているのかすぐにバレちゃうと思って。施設長は私が不満をもっていると思っていたようで、すごく問い詰められましたね。何とかやり過ごしたので施設長も諦めましたけど(笑)。
不穏な空気になったり何か言われたりはしなかったけど、それまで参加していたミーティングには呼ばれなくなりました。もう辞めるからしょうがないかと思ったけど、ちょっと思うことはありました。
―前の職場では辞めた後に再入職した人はいましたか?
看護師さんですが1人いました。私が辞める時、先輩も辞めることになって2名いなくなることが決まると、施設側がその方に声をかけたようです。ずっと働いてた方だから2名減ってもカバーできると思ったのかな。その方には申し訳ない気持ちになりました。
私の周りにはいなかったですね。
結婚を機に退職したけどパートとして戻ってきた人はいます。ちなみに今のグループホームは再入職を禁止しています。
「もしかしたら辞めなかったかも」前職にしてほしかったフォロー
―3年程度で転職する場合、転職先の面接でどう話そうか、就業期間について何か言われないかと悩む人もいると思いますが、皆さんはいかがでしたか?
面接では、もっとたくさん利用者と関わりたいから転職したいと伝えました。前のデイサービスでは、利用者とお話しする時間がとれずモヤモヤしていたのは事実なので。特別養護老人ホームなら一日接することができると思ったと伝えました。
病院の面接では、有料老人ホームでの人間関係のことは話さず、自分のキャリアアップとして違う視点から学びたいから転職したいと伝えました。現在のホスピスでの面接でも同様に話しましたし、引っ越さないといけないから勤務先を変える必要があることも伝えました。
でも、個人的に前の職場が短いうちに転職することに抵抗がありません。同じ業界内での転職は経験を積んでいることとしか思ってないんですよね。
特にこれと意識して話してはいないですね。面接官からも前職の勤務期間について質問されなかったので、普通に話した記憶があります。さすがに上司についてきたとは言いませんでした(笑)。
―最後に、もし辞める時に「これをしたら辞めなかったのに」と思うようなフォローなどありましたら教えてください。
お迎えからお見送りまでの限られた時間内で忙しく働いていたのが辛かったので、ゆとりあるスケジュールだったら違ったのかなと思います。残業がほぼ毎日あったのもきつかったので、改善してくれていたら……とは思います。あと、福利厚生が手厚かったらよかったかな。家賃補助があったら一人暮らししていたかも。
有料老人ホームにおいては、もっと新卒に寄り添って教えてほしかったです。長年働く人たちで人間関係ができていて「入りたいなら来れば?」というスタンスでしたが、仕事においても同じで。ベテランの方から「昔は分からないことがあったら、自分から聞いていたわ」と言われたけど、入職したばかりだと分からないことが分からないので、そのスタンスでいられるのはきつかったです。もう少し入ったばかりの人の気持ちになって接してくれていたら変わっていたと思います。
病院に関しては人間関係は悪くなかったけど、やりがいを感じられなくて。もっと頼ってほしかったです。利用者との関わりも最低限の介助しかできなかったし。そこがもっとできていたら辞めていなかったかもしれません。
私は上司についていくために転職したので、施設側にこうしてほしかったというのは正直ないのですが……強いて言うなら、ユニットでの休憩禁止がなかったら少しは変わっていたかも。休憩室はあったけどすごく狭いし、悪口大会が勃発しているからいたくなくてユニットで休憩していたんです。もっと利用者と関わりたい気持ちもありました。ある利用者と一緒にソファで過ごしてたら、全然心を開かない人なのに私には開いてくれてうれしかったなぁ。でも、後から禁止になっちゃって。それがすごく残念でしたね。
まとめ
転職を決めたものの迷う場面もあるかと思いきや、3名ともためらうことがなかったとのこと。一度決めた想いを翻すのは至難の技であることがよく分かった経験談でした。
退職する際に円満かどうかは個人差がありますが、極端に悪い雰囲気にはならなかったようです。施設の状況と自分の状況が合えば、再入職が可能な施設があることも分かりました。
面接では、通勤時間の長さや残業続き、人間関係などは伏せていました。嘘をついているわけではなく、他の理由を伝えていることに加え、働きたいと思った理由をしっかりと伝えていました。
あったら辞めなかったかもしれないフォローについては、残業や育成など介護・福祉業界の長年の問題に対する改善策を求める声が挙がりました。環境の整備はもちろんですが、採用担当者だけでなく、現場で働く職員も新入職員を温かく迎えようとする意識をもつことが要であると言えます。入ったばかりの職員は不安の気持ちが大きいはず。だからこそ、不安を解消するためのフォロー体制や「一緒に頑張ろう!」というスタンスを見せることが離職防止につながるのではないでしょうか。
離職防止は採用担当者だけでなく、職員全員が意識をもつことが大切であると気づかされた座談会でした。