SNSで採用が変わる。介護・福祉の現場で活かせるSNS運用のヒント【“読む”介護の組織をよくするラジオ】
公開日:2025/12/24 更新日:2025/12/24
株式会社Blanketがお届けするポッドキャスト「介護の組織をよくするラジオ」の要点やポイントをまとめた“読むラジオ”です。各エピソードで取り上げたテーマをもとに、介護・福祉の現場で今まさに起きている変化や、組織づくりのヒントを紹介しています。
SNSを活用した採用活動が広がり、介護・福祉の現場でも、SNSはいまや人材確保の鍵を握る欠かせないツールになりつつあります。
一方で、「運用を始めたもののフォロワーが伸びない」「採用への手応えが得られない」といった悩みの声も少なくありません。
そこで今回は、SNSをどのように採用活動へ活かすべきか、具体的なポイントや実践のヒントを介護・福祉業界の人事・採用コンサルタントがわかりやすく解説します。
【今回のパーソナリティ】
・野沢(Blanket/取締役、人事・採用コンサルタント)
・松川(Blanket/採用コンサルタント、SNS活用支援担当)
・大坪(Blanket/採用コンサルタント、聞き手)
SNSは、採用に切っても切り離せないものになってきたなという感覚を私は持ってるんですが、実際いかがでしょうか?
「SNSを使ったら応募が増えるんじゃないか」という期待でSNSを始めたり、開始を検討している介護・福祉事業者も増えていると思います。
SNS採用の重要性は?SNS活用のポイント
多くの方が気になっているのは、「SNSは本当に採用に効果があるのか?」ですよね。ぜひズバリお聞かせいただきたいです。
ポイントはいくつかありますが、年代を問わず、多くの人が使っているSNSを無視して活動するのはもったいない、ということはぜひ言いたいです。
SNS採用の重要性は年々高まっていますが、「他社もやっているからとりあえず始める」というだけでは成果につながりにくいのが実情です。大切なのは、SNSを効果的に活用するためのポイントをしっかり押さえること。
ここでは、介護・福祉業界がSNSを活用する際に知っておきたい基本の視点を整理します。
SNSは応募を決める一つの情報源
コロナ禍以降、求職者はオンラインで情報収集を行う傾向が強まり、SNSで企業の情報や雰囲気を確認する人が増えています。
例えば、検索サイトだけでなく、インスタグラムやTwitter、TikTokといったSNSを使って情報を検索するといった行為自体が一般的になっています。
SNSに載せる情報は、働き方や職場の雰囲気など「リアルな姿」を見せやすいため、SNSの活用次第では応募者に訴求する手段になり得ます。
「SNSを使ったら たちどころに応募者が増える!」というわけではないですが、有効に使うと非常に良いものではないかなって思うんですよね。
実際に、私たちKAIGO HRが介護業界で転職経験のある人を対象に行った調査では、求職活動の情報収集に法人のSNSを参考にしたいかという質問に6割弱ぐらいの人がはいと答えています。
SNSは若者だけでなく幅広い世代のアプローチに
「SNS=若者」のイメージを抱く人は多いかもしれませんが、総務省の調査(※)によると、81.9%の人が、SNSを日常的に利用しています。
特に転職者が該当する20代~50代では、約90%と高い水準です。つまり、SNSは若者へのアプローチだけではく、幅広い層へのアプローチが可能な接点になっています。
SNS別の割合を見てみると、特にTwitterやInstagramが幅広い年代に利用されていることがわかります。
| 媒体 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 |
|---|---|---|---|---|
| X(旧Twitter) | 78.0% | 61.6% | 48.7% | 43.6% |
| 78.0% | 70.5% | 67.0% | 52.7% | |
| 22.9% | 39.2% | 38.6% | 32.1% |
【出典】
・主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率|総務省
・令和6年通信利用動向調査ポイント|総務省
SNSは「どう使うか」が重要
ただし、SNSを活用するには「どう使うか」が重要です。アカウント開設や毎日の投稿だけでは効果は出にくいため、正しい戦略・運用が欠かせません。
つまり、活用方法次第で、幅広い世代にアプローチできるSNSは、採用活動を支援する強力なツールになるというわけです。
介護・福祉業界のSNS運用でよくある課題
法人の皆さんと向き合う中で、実際に運用はしているけれど悩みがある法人さんも多いのではないでしょうか。
一生懸命投稿しても、「フォロワー数が伸びない」という声はよく聞きますね。閲覧数が上がらないとか。
結構あるあるですよね。SNSを使って何かをやろうとしても、好感触を得られずに、「やっぱり介護・福祉業界の採用ではSNSは刺さらないんじゃないか」とフェードアウトしてしまう方は多いですよね。
SNSを始めてみたものの、思うように運用できず、気づけば更新が止まってしまう──。そんな声は少なくありません。ここでは、SNS運用で陥りがちな課題と、その対処法をあらためて整理してみます。
投稿ネタが続かない
SNSで一番重要なのが「継続」。接点を作るためには、定期的な投稿が求められますが、何を投稿すればいいのかに頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
専任の担当者がいない場合、毎日投稿しようと「とりあえず毎日更新できるネタを!」と、例えば事業所の食事の写真だけの投稿が続いてしまって、法人の良さがなかなか伝わりにくいケースはよくあります。
フォロワー数や「いいね」の獲得に偏った運用
SNSはフォロワーやいいねが可視化されているため、どうしても「より多く集める方がいい」と、数字に捉われてしまうことがあります。
思うように数字が上がらないことで、やめてしまうという話もよく聞きますね。
運用担当者の兼務による負荷
多くの事業所では、本業と兼務してSNSを運用しているという体制が主流です。そのため、投稿を最優先というわけにはいかず、さらに協力体制もなく特定の職員への負荷が大きくなる傾向もあります。
ケアや担当業務を優先するため、投稿は後回しになって続かなくなったというお悩みもよくある一つです。投稿を作成するのにも、時間がかかります。特に人材が足りない職場では、SNSの投稿を担う人への負担が大きくなってしまいます。
介護・福祉の採用SNSを成功に導く3つの視点
どれもあるあるなお悩みでしたね。では、この課題をどうやって解消できるのでしょうか。
「これが答え!」というものはありませんが、次の3点を意識することで、「継続」「負担の軽減」につながり、本来の目的に沿った運用ができるはずです。
他の法人の「自分がいいなと感じる投稿」をよく分析してみるというのも大事ですね。
介護・福祉の採用SNSには明確な正解があるわけではありませんが、運用の軸となる“考え方”を持っているかどうかで成果は大きく変わります。
ここからは、現場の支援で見えてきた「SNS運用の効果につながる3つの視点」を整理して紹介します。
ターゲットを明確化
SNS運用でまず最も重要なのは、「誰に」「何を伝えるのか」 を明確にすることです。
採用を目的にアカウントを運用しているにもかかわらず、投稿内容がまったく関係のないものになってしまうケースは少なくありません。目的が曖昧だと、何とく日常写真を投稿するなど「誰のための投稿なのか」がぼやけてしまいます。
目指すのは、フォロワー数や“バズり”よりも、求人を見た人が関心を持ってSNSを閲覧した際に、「この事業所いいな」と思える投稿。
例えば新卒採用であれば、学生に対して 職場の雰囲気や働きやすさを伝える必要があります。ターゲットが明確であれば、自然と投稿内容の方向性も定まり、採用への導線づくりが効率的になります。
採用を意識してSNSをするなら“たくさん見られること”より“必要な人に届くこと”の方が圧倒的に大事なんですよね。刺さる相手に届けば、それだけで十分効果があります。
日々の投稿に“トレンド要素”を少しだけ足す
基本は目的に沿った投稿を続けながら、適度に流行を取り入れた投稿(ミーム型動画)を混ぜると、見てもらうきっかけが増えます。
流行だけに乗るのではなく、日々の投稿で伝えたい内容をしっかり発信したうえで、“アクセントとして” カラーの違う投稿を挟むイメージです。
そうすることで「この会社、こんなこともやっているんだ」と知ってもらえる導線が作れます。
目的に沿った投稿を軸にしつつ、少しだけトレンド投稿を混ぜると一気に見てもらいやすくなります。全部を流行寄りにしなくても、アクセント程度で十分です。
短期的な効果より中長期的な戦略
SNSの投稿は、効果が出るまでに時間がかかることを前提に運用しましょう。
実際、Blanketがこれまでに行ってきた介護・福祉事業所のSNS支援でも、効果を感じ始めるのはおよそ半年ほどと、「じわじわ効いてくる」というケースが多くあります。
採用におけるSNS活用は、即効性じゃなくて「積み上げ」です。半年ぐらい続けると「応募の質が変わってきたな」と感じることが多いんですよね。だからこそ、焦らず続けることが大事です。
1,000の“なんとなくのいいね”よりも、採用につながる1つの“意味のあるいいね”の方が大事です。それには、SNSを活用する目的と“誰に見てほしいか”をはっきりさせることが欠かせないですね。
現場で今日から使えるSNS運用の実践ヒント
この機会に本気でやってみよう、取り組んでみようみたいな法人さんや、すでに取り組んでやってるんだけど、ブラッシュアップしたい法人さんに向けてアドバイスがあれば、教えてください。
実践のポイントは本当にいろいろありますが、今回は特に押さえておきたい4つをご紹介しますね。
SNS運用は「活用できるとわかっていても、いざ始めると手が止まる」ことがよくあります。そこで、介護・福祉の採用に特化した“今日から使える実践のヒント”を紹介します。すでに運用中の方にとっても、見直しの視点として役立つ内容です。
媒体の選び方
初めてだと、どのツールから手をつければいいか迷うことも多いですが、まずはInstagramのリール動画から始めるのがおすすめです。
インスタグラムで作成した短尺動画は、TikTokやYouTube Shortsなど他のSNSでも活用でき、効率的です。
現場の魅力が伝わる投稿アイデア
投稿を考える際には、求職者が実際の働く姿をイメージできる「現場の日常がそのまま伝わるシーン」がコツです。
たとえばこんな投稿が効果的です。
・社員インタビューや日常の雰囲気紹介
社員の人柄や職場の雰囲気を伝えることで、求職者に職場のイメージを届けます。
・利用者との関わりや職員の関係性
利用者とのやり取りや職員同士の温かい関係性を見せることで、現場の魅力を伝えられます。
・複数人を巻き込んだ企画型投稿
複数の職員が登場する動画や投稿で、チームの一体感や働きやすさを表現できます。
最初は完璧な動画を作る必要はありません。まずは短い動画や簡単な投稿から始め、慣れてきたら内容をブラッシュアップしていくのがおすすめです。
運用体制は無理なくチームで
担当者を固定せずチームで運用することがおすすめです。それにより、投稿の目的をチーム全員で共有し、負荷を分散することで継続しやすくなります。
また、チームで運用する際は、投稿の目的をチーム全員で共有することが重要です。雰囲気や表情、活動が伝わる写真や動画をチームで意識して統一し撮影するだけで、SNSの印象は大きく変わります。
さらに、「なぜSNSをやるか」「誰に何を届けるのか」といった部分もをチームで共有することが大事です。楽しみながら投稿できる体制を作ると、自然と質の高い投稿が増え、求職者にも伝わります。
まとめ
SNSは、いまや介護業界の採用活動に欠かせない存在です。効果的に活用するためには、「目的」と「ターゲット」を明確にすることが何よりも重要です。
そのうえで、発信する内容は求める人材が関心を持つ情報に寄せ、バズを狙うよりも“中長期的に自社を知ってもらう”姿勢が成功のポイントといえます。
実践面では、インスタグラムのリール動画をはじめとした短尺動画が有効で、複数のSNSへ展開することで認知の広がりをつくることができます。また、運用は担当者ひとりに任せきりにせず、チームで取り組むことが大切です。半年ほどを目安に改善を重ねながら進めることで、採用活動全体の底上げにつながっていきます。
SNSは、目先の応募数ではなく、未来の求職者に会社の雰囲気や価値を知ってもらうための“種まき”です。焦らず、少しずつ育てていく意識が大切です。
SNSで採用するというより、SNSをうまく使うことで採用の後押しになる感じですね。
Blanketでは、介護・福祉業界の「応募がこない」「人材が定着しない」といった課題に対して、採用のパートナーとして共に考え、アクションし、伴走する採用コンサルティングサービスを提供しています。
組織作りから採用・人事、さらには採用ツールのお悩みまで、「良い組織づくり」を全力でお手伝いします。
詳しいサービス内容や導入事例はこちらからご覧ください。
【今回の「介護の組織をよくするラジオ」を聞いてみる】
■♯11-① “SNS採用の波”がやってきた!? 〜介護・福祉事業所の採用にSNSは必要か?〜
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■♯11-② SNS採用の壁。“続けること”がいちばん難しい?〜介護・福祉事業所のリアル〜
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■♯11-③ バズらなくてもいい。採用のためにSNSを育てよう!〜介護・福祉事業所とSNSの付き合い方〜
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