求職者に魅力を届けよう!WHYとWHOを意識すると採用PRはうまくいく。
2023/08/09
あなたが採用PRの担当を任されたら、まずどこから始めますか?
「TikTokが流行っているからやってみよう」
「まずは何でも良いから試してみよう」
決して間違いではありませんが、より効果的に自社の魅力を届けるには戦略が必要です。
今回登壇したのは、弊社で採用・人事コンサルタントを担当している野沢 悠介。介護・福祉業界の採用PRを成功させるために、まず押さえるべきポイントを説明しています。
自社の魅力が誰にも届かない/響かないなんて、もったいないですよね。採用PR成功に向けて、ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
【ゲスト】
株式会社Blanket
取締役、採用・人事コンサルタント
野沢 悠介(のざわ ゆうすけ)
立教大学コミュニティ福祉学部卒。介護・福祉領域の人材採用・人材開発が専門。介護・福祉事業者の採用・人事支援や、採用力向上のためのプログラム開発などを中心に、「いきいき働くことができる職場づくり」を推進している。
採用PRで、求職者の「働きたい」を高めていく
大前提として、全ての求職者はいきなり転職先を決めるわけではありません。会社のPRに触れたり、働く人たちとやり取りをしたりすることによって、徐々に働きたいという気持ちが醸成されていくものです。
企業は求職者の状況に応じて、興味や関心、共感が生まれるようなメッセージを発信していくことが求められます。「TikTokが流行っている」という理由でSNS運用を始めてみても、情報発信を通じて何を期待するのかが分かっていなければ効果は期待できないでしょう。
採用PRの役割はふたつ。
①知ってもらうこと(認知)
②好きになってもらうこと(関心、魅力づけ)
認知を広めた上で関心を高める、この順番も意識すべきです。このふたつの要素を持ち、求職者の働きたいという気持ちを徐々に高めていく。採用PRに長けた企業は、求職者とのコミュニケーションが上手だと言えるでしょう。
そもそもPRは何のため?
野沢が強調するのは、採用PRの目的を具体化することです。「採用できれば良い」「とにかく応募を増やしたい」という目的では抽象度が高いため、どんな施策を打てば良いか明確にならないといいます。
例えば、「とにかく人が欲しい」よりも「福祉を学んでいない学生にも関心を持ってほしい」と言語化できれば、施策の方向性も決まってきます。採用PRの目的を深掘りし、解像度を上げることでPDCAサイクルを回しやすいのです。
目的を考えると同時に、「誰に」を意識することも大切です。「誰に」とは、採用PRを通して “ 動かしたい人 ” のこと。野沢は「5つの層に分類できる」と説明しました。
1. 事業所・募集職種での就職を志望する人
自社への関心が高く、求人情報が伝われば採用できる可能性が高い
2. 事業所に興味のある人
自社の認知はある状態。関心を深めてもらう施策を打てば採用に至るかも
3. 募集職種に興味のある人
認知が肝。しかし他事業所との競合になりがち
4. 事業所・募集職種に興味は持っていないが、関心を持つ可能性がある人
セオリー通りの情報発信だけでは求職者に届かない。「介護」の仕事そのものの魅力づけをするなど、PR施策を工夫する必要がある
5. 事業所・募集職種に興味は持っておらず、関心を持つ可能性が低い人
採用に結びつけるのは難しいため、採用のターゲットからは外すのが無難
理想と現状の比較をし、採用PRでどこに注力すべきかを決めていく。「誰に」を意識するだけで、効率的な採用PRにつなげやすいものです。
求職者の不安は、先回りしてケアすべき
「現状維持バイアス」という心理的傾向をご存知でしょうか?選択肢にメリットとデメリットが共に存在するとき、人間はリスクや失敗を恐れて現状維持を選ぶというというものです。
野沢は「転職には現状維持バイアスが働きやすい。求職者の期待を高めるだけでなく、不安をケアすることが大事だ」といいます。
例えば、子育てと仕事の両立を目指す求職者がいたとします。仮に「子育て制度の充実を重視している」と面接などで話したとして、自社の人事制度の説明だけをすれば十分といえるでしょうか?
答えは「No」。求職者にとって、面接の際に全ての不安を解消できるとは限りません。子育て制度の充実はもちろん重視しているものの、もしかしたら「職場は、本当に子育てに前向きな雰囲気なのか?」「子どもの病気など、突発的な理由で休むことに後ろめたさを感じない職場なのか?」といったことが気になっている可能性があります。
採用の成否は、求職者の不安に寄り添えるかどうかにかかっています。求職者の不安にきちんと応えられているかを常に自問自答し、不安が解消できるメッセージをしっかり打ち出すようにしましょう。
敏腕シェフより、美味しい料理
企業は、採用活動を通じて、自社の優れた特徴や強みを宣伝します。しかし野沢は、「『求職者にとっての価値は何か』という視点を見落としていないか」と指摘します。
採用PRに限らず、企業の事業活動で「ユーザーの価値」をきちんと伝えられていないケースは多々あります。
例:飲食店
有名料理店で修行した料理長がいる
→ユーザーの価値は、とても美味しい肉料理が食べられること
例:布団
上質な羽毛をたくさん使っている
→ユーザーの価値は、暖かくてよく眠れる布団であること
もちろん、特徴や強みそのものに価値を感じるユーザーもいるでしょう。しかしユーザーの価値を中心に伝えられるということは、ユーザーへの理解を深めることにもつながるはずです。
求職者にとって、本当の価値は何か。経営者や採用担当者だけで議論するのでなく、すでに自社で働いている社員にも聞いてみることをお勧めします。思わぬヒントやキーワードが必ず見つかります。
楽しく採用PRに取り組もう
採用PRの戦略設計でもうひとつ意識してほしいのが、メディアの種類です。メディアによって得意なこと、苦手なことがあるため、PESOモデルを使って整理しましょう。
ペイドメディア(Paid Media)
広告やメディアにお金を払って認知獲得を目指すこと
例:Web広告、求人情報サイト、情報誌掲載、折り込みチラシ
アーンドメディア(Earned Media)
外部からの取材・報道でメディア露出を目指すこと
例:取材記事、口コミ、ニュース掲載
シェアードメディア(Shared Media)
ユーザーの共有をベースに情報の拡散を目指すこと
例:SNS、レビューサイト
オウンドメディア(Owned Media)
自社からの情報発信で、自社の理解促進を目指すこと
例:自社Webサイト、ブログ、パンフレット
自社のWebサイトやブログを使って情報発信に注力するのは必要なことでしょう。しかし自社の認知度がそれほど高くない状態であれば、まずはWeb広告や求人情報サイトなどのペイドメディアを活用し、ターゲットに自社の存在を知ってもらうことが大切です。それぞれのメディアの特徴を把握し、バランスの良い情報発信を心掛けていきましょう。
最後に野沢は、「採用PRはすぐに成果が出るものではない。大事なのは楽しみながら情報発信に取り組むこと」と話しました。
モチベーションを高めていくためにも、「求職者から、こんなリアクションがあったよ」など、小さな成果を共有することもお勧めです。採用PRに楽しく取り組む企業は、自社の魅力も自然と伝わっていくはず。継続を意識した上でチャレンジに取り組んでいきましょう。
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