介護・福祉業界のゼロから始める新卒採用 vol.2成功に繋がる採用戦略

2021/06/17

第1回目は「新卒採用とは?!」を中心に、新卒採用が組織や経営に与える影響について、メリット・デメリットを踏まえながらお話しました。

【 介護・福祉業界のゼロから始める新卒採用 】

vol.1 新卒採用とは?!

第2回目は実際に新卒採用を行うには、どうすれば良いか?新卒採用のポイントを具体的な事例を交えてご紹介いたします。

■「介護業界は採用できない」は本当?!

皆さんに質問です、新卒採用において採用できない(学生が集まらない)理由は何でしょうか?

・知名度(有名かどうか?)

・お金(予算)が潤沢でない

・給与が高いかどうか?

・介護業界だから

・法人の規模(大きいかどうか)

本当にそうなのでしょうか?私も採用していた時は真っ先に考えていました。もちろん、どれも新卒採用において重要なポイントかもしれません。しかし、学生目線から考えてみると、実はそうでもない事が分かります。

■学生が企業を選ぶ際のポイント

リクルートの就職白書2021(図1)によれば、就職先を確定する際、決め手になった項目において、1位が「自らの成長が期待できる」という回答でした。次いで2位は「会社や 業界の安定性がある」が34.9%と昨年度と比較し、3.4ポイント増加しており、新型コロナウィルスの影響で「安定性」を求める学生が増加しています。その他にも勤務条件や待遇、希望する地域で働ける等を重視する声も多いですが、その一方で「会社・団体で働く人が自分に合っている」「会社・団体の理念やビジョンが 共感できる」の項目も上位に挙がっており、組織やそこで働く人が何を大切に働いているのか、いわば会社・社員の価値観を重要視して選んでいる事が分かります。また、最近の傾向としては「会社・団体の規模が小さい」や「副業ができる」などもあがっており、選ぶ基準は多種多様になっています。私が新卒採用を行っていた際、学生が入社を決めた理由は、「お客様の一人ひとりの時間を大切にしている仕事だから」や「○○さんがとってもいい人で、この会社なら頑張れそう」など、「この法人だから入社したい」といった理由が多く、自身に合っているかどうかで選んでいるようでした。理念や働く人の想いに共感することができれば、「介護・福祉業界だから選ばない」「有名じゃないから選ばない」などといった感情は生まれず、採用につなげることが出来ると言えます。

このような事から新卒採用では、「自社にどのような強みがあるのか?」「どんな人を採用したいのか?」「その人に何を伝えたら応募や採用に繋がるのか?」といったことを明確にし、「採用をデザインする=採用戦略」がとても大切であると言えます。

図1:リクルートキャリア就職みらい研「究就職白書2021」(より引用) リクルートキャリア就職みらい研「究就職白書2021」
図1:リクルートキャリア就職みらい研「究就職白書2021」(より引用) リクルートキャリア就職みらい研「究就職白書2021」

■採用戦略とは

そもそも、採用戦略とは何なのでしょうか?採用戦略とは事業計画に基づき、自社の採用において求める人材を安定して獲得し続けるために立てる戦略の事です。簡単にお伝えすると事業に必要な人材を明確化し、その人物に対してどのようなメッセージや、採用手法を用いれば採用ができるのかを具体的に考える事です。新卒採用活動において最も重要な部分になります。では、どのように採用戦略を策定していけばよいか?みていきましょう。

■採用戦略を策定する

①会社の理解・把握

会社の目指す方向性や社会の中での存在の意義、強み・弱みについて共通認識を持ちましょう。この時に採用担当者だけではなく、経営層や現場の職員など、幅広い階層の社員を巻き込んで考えていくと、採用に関する組織内の意思統一ができ、活動を進めやすくなります。

②どんな人材が欲しいのか検討する

① で検討した事を基に、具体的かつ効果的な採用計画を立てていくために、「採用したい人物像=ペルソナ」を設定します。どのような人材が自社に必要で、その人材を採用するためにどのようなアクションが必要か具体的にイメージができるまで、深めていきます。(例:性格や行動習慣、趣味、経歴、就職活動や情報収集の行動パターン、就職先への期待など)

③競合他社を理解する

新卒採用では、明確に志望業界が定まっていなかったり、一度に何社も並行して受験することが一般的なため、競合は同業他社に限らず多種多様になります。ペルソナが選びそうな業種・業界・会社がどんなところなのか。そこと競合になった際に訴求できる自社の強みは何か、逆に弱みは何かを把握し、どんな事をPRすれば学生が応募してくれるのかを整理していきましょう。

④採用計画をつくる

採用計画では、採用目標人数やどのような採用媒体に出るかなど、具体的なアクションプランを考えます。パンフレットや動画などの㏚について、面接の回数・内定者フォローの内容などアクション項目を明確にし、確定させていきます。あくまでも設定したペルソナがここの会社の話を聞きたい、受けたい、入社したいと思うのか?の視点を忘れないでください。

⑤採用計画を振り返りましょう

採用戦略や採用計画がどれくらい進んでいるのか?ズレがあるのか?定期的に振り返る時間を持ちましょう。介護・福祉業界でよくある事は、日々の業務や利用者の対応に追われて作ったはいいが採用計画を振りかえる時間がないという事態が起こります。〇曜日の〇時~というように定例会をつくるのも1つの手です。

このように採用戦略を策定する事で、今までボヤっとしていた採用の枠組みがはっきりとし、どんな人物に何を伝え、どのように訴求すればよいのかが明確になることで、より一層ターゲットに響く採用活動ができるようになります。

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介護・福祉の業界では、「どんな人を採用したいか」という問いに、「だれでも良いから来てほしい」「元気で挨拶ができれば誰でもいいです」という回答がよく返ってきます。

そのような法人では、ターゲットが定まらずに闇雲に何となく求人をしてしまい、結果的に学生に魅力が伝わらず、採用につながらないケースが多くあります。

学生が就職する会社に求めているものは、「自身と法人や働く人の価値観が合っているかどうか?」ということです。それに加えて、ニーズが多種多様化している現状があります。だからこそ自社の強みは何か?弱みは何か?競合と比較してどうか?どんな人を採用したいか?などといったことを明確にし、戦略を具体的に立てて実行する事が必要なのです。「誰でもいいから採用する」「それっぽい文言でなんとなく採用媒体に出す」という「誰でもいい採用・なんとなくな採用」から脱却していきましょう。

■新卒採用事例の紹介

こちらの事例は新卒採用にて、福祉系のマインドを持った(喜んでもらうのが好き・人の笑顔が見たいなど)学生が対象ではなく、「社会課題についてチャレンジしたい」と思っている学生に向けて訴求しています。

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株式会社シルバーウッド採用:http://www.silverwood.co.jp/recruit/
株式会社シルバーウッド採用:http://www.silverwood.co.jp/recruit/

「未来はひっくり返せる」をコンセプトに採用メッセージ・社長インタビュー・会社紹介・社員インタビューなどに社会課題に挑戦し続ける会社である内容がちりばめられています。コンセプトやメッセージが明確で一貫性がある事により、ターゲット学生により刺さり、他社との差別化をはかれ、ゆくゆくは応募や採用が増えていくことになるでしょう。

このように、会社の強み・弱み、欲しい人材を明確にする事により、ターゲット学生に訴求すべきポイントも変化します。しっかりと土台をつくる事が新卒採用においてはとても重要なのです。「誰でも・なんとなく採用」を辞め、土台をつくる事が新卒採用活動の1歩になります。

next:介護・福祉業界のゼロから始める新卒採用 vol.3欲しい人材に出会えるペルソナ設計

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【この記事を書いた人】

松川 由佳 株式会社Blanket

株式会社Blanketの松川由佳です。大学卒業後、介護の人材不足の現状を目の当たりにし介護事業会社に入社。全国の新卒(大卒・専門卒・高卒合わせて)年間約100名程度の採用活動に従事。採用設計からイベント・入社関係、新卒採用全般を担当。業界全体が素敵な法人で溢れるように組織・人材開発のお手伝いをしたいと思い転職しました。採用・育成・組織について日々勉強・奮闘中。