入職後はギャップだらけ、本当はもっと上司と話したい!「新卒介護職の本音座談会」【中編】

2024/08/06

KAIGO HR FARMでは、2022年卒と2023年卒の介護職4名をお招きして本音座談会を実施しました。前編では、人事担当が気になる就職活動の動き方や印象的な面接、入職の決め手について伺いました。

中編では、入職前・入職後のギャップや希望の研修について語っていただきました。

▶︎前編:インターンシップは参加してる?他業種から介護職を志望する場合も!「新卒介護職の本音座談会」

目次

・上司を見て昇格意欲ダウン、記録時間が残業NOカウントはありえない!
・すぐに独り立ちはきつい……2年目以降も対面研修希望!
・まとめ

Profile 

Kさん 
福祉学部専攻、2023年卒。主に障害福祉や地域福祉を学び、障害福祉施設に入職。現在は施設内の寮で運営・管理を中心に、利用者の生活全般のサポートを務める。
Yさん 
文学部専攻、2023年卒。在学中の北欧留学で老人ホームを視察し、介護・福祉業界に興味を持つ。卒業後は特別養護老人ホームに入職し、現在はショートステイにて介護職に従事。
Mさん 
文学部専攻、2022年卒。サークルの後輩(福祉学科専攻)の話を聞いているうちに介護職の見方が変わり、興味を持ち始める。卒業後は有料老人ホームに入職し、介護職に従事。
Iさん 
福祉学部専攻、2023年卒。中学校の職場体験で介護施設に訪問したことを機に介護職を志し、高校で介護福祉士の資格を取得。現在はサービス付き高齢者向け住宅にて介護職に従事。

上司を見て昇格意欲ダウン、記録時間が残業NOカウントはありえない!

―入職前と入職後のギャップはありましたか?

サービス残業が結構あります。リクナビとかに数時間と書いてあったのは、申請してないからだとわかりました。

うちの施設は行事に注力していて、その準備期間中はどうしても残業になります。2年目からは委員会や採用業務も担当するからさらに残業は増えます。

同じ仕事でも人によってスピードが違うじゃないですか。それを理事長が重視しているので残業をつけない考えのよう。申請しにいく雰囲気です。

行事や委員会は申請できるけど、基本的にはサービス残業です。利用者さんの身に何か起こらない限り申請できません。サービス残業がなくならない限り、この業界に若い人は入ってこないと思います。

残業自体は別に構わないけど、お金が出ないのはやっぱりおかしいなと。大学時代のアルバイトは1分単位で残業申請していたからなおさらそう思います。特に1年目は仕事に慣れてないから2時間の残業は当たり前。だけど申請できない。上司に認められたものだけは申請できる……なんだかなぁと思います。

シフト制なので退勤時刻になったら帰れることが多いと聞いていました。だけど、実際は違いました。上司からは残業しないようにと言われるけど、せざるを得ない。板挟み状態です。

うちの施設は残業はほとんどなく、今まで多かった月で3時間ほど。欠勤が出たらするくらいです。主任の残業は多いと思います。負担をかけていると思うと同時に、今以上の立場になりたくないな。

―残業のギャップは大きいのですね……では、休日休暇はいかがですか?

有給休暇が取りづらい。希望休も2日くらいしか申請できません。 

有給は取って当たり前だから躊躇しません!

有給に関してはギャップはないですが、リクナビとかには“5日連続で取得可能”と書いてあっても実際は取りにくい状況です……。

今のところ希望休は月3日まで申請可能で、有給は月1日は取得できています。

―その他に、入職後に大変だったことや戸惑ったことはありますか?

私が担当する寮に体格のいい利用者さんがいるのですが、男性で力もあるから暴れたら怖いとは思いますね。

一番衝撃的だったのは、記録の時間が残業にならないこと。それはおかしいと思うので最近は残業申請しています。意外にも受理されていますね。

利用者さんのADLが年々下がっているのに、スタッフが増えないので正直大変です。
もっと一つひとつの介助に時間をかけたいのに、かけられないのでもどかしくなります。研修で「介助に時間をかけましょう」と習ったけど、いざやると難しいなと。

研修自体は充実しているけど、現場と違うことが多いと感じました。例えば、身体介助なら自己流でやっている先輩もいるし、先輩がおすすめするやり方も違います。習った通りにできることは少ないと思いますね。

私が勤めるサ高住は定期巡回スタッフと訪問スタッフに分かれているので、利用者さんに何かプラスでやりたいと思ってもやりにくくて。もどかしくなります。

これは高校生のときに行った実習先でのことですが、排泄物が付いた布おむつを素手で手洗いしてと言われました……。今みたいに知識もないし、誰のものか分からない。排泄物処理班みたいな感じがしてすごくショックで、帰宅して母に泣きつきました。実際に介助したり、利用者さんと交流を持ったりと段階を踏んでからでないと厳しいと思うので、慣れる時間を作ってほしいと思いました。

採用コンサルタントからのアドバイス

入職後に感じた不満・ギャップとして、サービス残業が常態化している点や時間外勤務が申請しづらい点、休暇が取りづらいといった点が挙げられています。座談会前編にもあったように、学生をはじめとした若年層では、ワーク・ライフ・バランスや休日休暇の取得などを企業選びで重視する傾向があり、入職後にそれらが就職前の情報とかけ離れていると、大きなギャップを感じ、事業所への不満・不信へとつながっていきます。正しい情報公開をするとともに、仮にサービス残業が実体化しているとすれば、既存の従業員の満足度を向上するためにも、業務改善や適切な労務ルールの設定などをすることが必要です。

すぐに独り立ちはきつい……2年目以降も対面研修希望!

―施設のフォロー体制について教えてください。実施してほしい研修などはありますか?

福祉制度を勉強する研修があればと思います。以前、よく分からない状態で介護受給者証の更新を頼まれたときは大変でした。福祉学科出身の私でもよく知らないし、同期の約半分は専門外の学部出身者なのでなおさら分からないと思います。

うちの施設はやって覚えるスタンスなのでフォローがありません。新人研修はあるけど早番5日間、遅番4日間、夜勤2日間のみで実質1カ月で独り立ち。足りないと思いますね。

今年度からメンター・チューター制度が本格始動するので、これから入ってくる人たちは安心できるんじゃないかな。メンターは長期的にキャリア形成をサポート、チューターは業務をフォローしてくれます。「独り立ち後も定期的に相談できる人がいないと辞めちゃいますよ」と上司に話したのが効いたのかな(笑)。

私もメンターがいてくれればと思いますね。業務中は忙しそうだから話にくいし、仕事終わりに聞くのも申し訳なくて。 

1年目は対面の研修が多かったのに2年目でガクッと減ってしまって。普段なかなか話せない同期と話せる機会だから少なくなってしまい残念です。半年に1回でもいいからやってほしい!

認知症の方とのコミュニケーションについて学ぶ研修も希望です。何も知らない状態で接すると、上手くいかなくて落ち込む人もいると思うのでやってほしいと思います。

採用コンサルタントからのアドバイス

多くの事業所が新人研修として、一定の期間の教育体制を敷いていますが、ある程度慣れてきた後も、学びの機会やメンターなどの相談の体制を希望する方も多くいます。新人時代に全ての技術・知識を習得することは難しく、段階的に技術・知識を習得したり、悩みを相談できる環境を整えることが、新人の早期離職を防止するポイントとなるでしょう。

まとめ

入職後のギャップとして多かったのは残業と休日休暇制度についてでした。また、大変だった・戸惑ったエピソードは、現場に出てからでなければ分からないことばかりでした。いずれにしても、入職前に可能な限り良くも悪くもリアルな状況を知っておきたいというのが就活生の本音でしょう。

研修においては、現場研修を増やしてほしい声や、2年目以降のフォローを求める声が挙がっていました。福祉制度や認知症の方とのコミュニケーションなど現場で必ず起こる業務についても事前に知り、心構えができた状態で現場に臨みたいと考えていることが分かりました。

さらに本音が炸裂する後編では、上司に対する想いや、辞めたいと思ったエピソードを語っていただきます。