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私たちは、何を大切にしたいのか。新バリューとともに進む「これから」

2024/04/22

2013年4月22日に会社を設立し、今年で11回目の4月22日を迎えました。

はじめましての方も、いつもお世話になっている方も、改めまして株式会社Blanket 代表取締役の秋本可愛です。

このたび、私たちは、バリューを刷新したことをお知らせいたします。

3日前にできた、生まれて間もない新しいバリューです。まだまだ馴染みはないけれど、私たちがこれまで無意識に感じていたことが言葉になり、くっきりと輪郭を持ったように思います。

これまで、Blanketでは「介護が、自分を、他者を、世界を好きになっていくプロセスになる」をバリューとして掲げていました。

そもそも私たちは、バリューを「ミッションを遂行したことで私たちや社会が得られる価値」と定義していました。私自身、この言葉がとても好きで、「介護が、自分を、他者を、世界を好きになっていくプロセスになる」という価値を提供するために、事業を推進してきました。介護がそのようなプロセスになってほしい、その想いは今も変わっていません。

しかし、私たちがもっと強く、確実にビジョンに向かっていけるよう、改めてバリューの定義を整理し、新しい言葉にしました。

その過程には、介護・福祉業界で人と組織が抱える葛藤を可能性に変える私たちが抱えた葛藤がありました。なぜ私たちはバリューを新しくしたのか、そして、どのようにして葛藤と向き合い、可能性に変えたのか。バリュー策定までのプロセスを、みなさんにお伝えしたいと思います。

対外的には順調そのもの。しかし、対内的には不安定な状態だった

昨年1年、Blanketは、有難いことに業績が順調に推移していました。

マイルストーンとしていた売上目標は達成し、クライアントや協働してくださるパートナー様など、関わってくださる方々も格段に増えました。

自治体や政府と行うプロジェクトの規模感も大きくなり、東京都の福祉の仕事のPR事業を担当させていただいたり、謎解きをしながら介護のお仕事を体験できる小学生向けのプログラムは開催エリアが拡大しました。法人支援も素晴らしい実践をおこなう全国の介護・福祉事業者とご縁をいただいてきました。また、介護人材の確保だけでなく、経済産業省とともに、介護を「個人の課題」から「みんなの話題」へ転換することを目指すプロジェクト「OPEN CARE PROJECT」の発足にも携わらせていただきました。

ビジョンである「すべての人が希望を語れる社会」を目指し、前進している実感を持てる機会や瞬間が何度もありました。

しかし一方で、私は「組織として、このままでは良くない」という危機感がありました。そう感じたのは、組織として良好なコミュニケーションが取れない状況が続いていたからです。

Blanketはまだまだ小さな会社ではありますが、それでも社員数が2桁になりました。社員が増えたことで価値観にも違いが生まれ、その溝がどんどん大きくなってしまっていたのです

社員みんなが、生き生きと働けていない状況をなんとかしたいと思いながらも、向き合いきれない現状がありました。それは昨年、私自身にライフステージの変化が訪れたからです。嬉しくも小さな命を授かることができ、出産を控えていた私は自分の目の前の仕事に精一杯で、自組織の課題は後回しになってしまっていました。

物理的にも社員とのコミュニケーション時間が減る中、「このままでは、組織として崩れてしまうかもしれない」という不安を抱くようになり、産休期間中、社員に任せても問題ない社内ミーティングにも細かく参加をしていました。今振り返ると、ただただ自分が安心したいがためだったと反省しています。

私自身の成長を含め、「自分たちのことを、今一度見つめ直さなければならない」と課題を感じたタイミングで、私は1冊の本と出会いました。

共創型戦略デザインファーム、株式会社BIOTOPEの代表 佐宗邦威さんの著書『理念経営2.0 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ』(ダイヤモンド社刊)です。

相手に問いかける言葉は、私たち自身にも問いかけられている

著書の中では企業理念の重要性が語られるとともに、ビジョン・ミッション・バリューの在り方について、渡り鳥の群れを例に紹介されていました。

渡り鳥の群れには、

① 方向感覚:これからの行き先がわかっている感覚
② 距離感覚:周囲の鳥に対して適切な距離を取る感覚
③ 中心感覚:自分たちの群れの中心に向かう感覚 

という3つの原則があるそうです。それぞれ、「①方向感覚はビジョン、②距離感覚はバリュー、③中心感覚はミッションとリンクする」と書かれていました。

どこを目指し、どのような仲間と、今何をするのか。これを読んだとき、「私たちのバリューは、バリューとして機能していないかもしれない」と思い至ったのです。

私たちは、バリューを「ミッションを遂行したことで私たちや社会が得られるもの」と定義していましたが、そのように定義したバリューは一見すると、どこかビジョンのようでもあります。バリューの言葉自体は好きだけれど、ビジョン・ミッション・バリューの位置づけがとても曖昧なものであることに気づかされました。

私たちは事業のひとつとして、葛藤や悩みを抱える介護・福祉事業者のブランディングに携わらせていただくことが多くあります。クライアントはどこを目指し、どのような価値観を持った社員が集まり、どのような使命を持っているのか。クライアントと向き合い、魅力や強み、良さをともに作り上げていくことがBlanketの仕事の1つ。

だからこそ、私たちとクライアントは、合わせ鏡のようだと私は思います。クライアントに問いかける言葉は、私たち自身にも常に問いかけられている。同じ目線で話をするには、私たちという土台がブレることなく安定していることが必要不可欠なのです。

クライアントを支援させていただく前に、まずは自分たちが自分たちの在り方に立ち返り、私たちの魅力や強み、良さについて対話する時間を設けたいと思うようになりました。

これまでは少数精鋭だったこともあり、あえて「自分たちの価値観」を言葉にはしてきませんでした。働く社員がどのようなことを大切にしていて、どのような空気感を持っているのかをお互いに把握できる人数規模だったため、言葉にする必要性すら感じていなかったのです。

しかし、少しずつ社員が増えてきた今、Blanketが大切にしていること・大切にしたいこと、今まで言葉にしきれていなかった“自分たちらしさ”を、ちゃんと言葉にしたいと思い、バリューの刷新をスタートさせました。

社員一人ひとりが感じていた“私たちらしさ”を、みんなで交わし合った時間

私は、無事に出産を終えたあとに行った初めての全社ミーティングで「組織として私たちが大切にしていることに向き合いたい」と社員全員に伝えました。私自身の想いや、感じていた課題も共有し、全員でバリューを見直す時間を持ちたいと提案しました。

納得してくれた社員のみんなとともに、バリューを策定するまでには大きく2つのフェーズがありました。

第1に「発散フェーズ」です。

まずは社員全員が対面で集まり、改めて“Blanketらしさ”を言葉にするワークショップを実施しました。

先に私から「私たちが働くうえで大切にしたいことは何か?」という問いを投げかけ、一人ひとりから出た意見をシェアしていきました。

次に、「Blanketとして、働く個人として、やりたくないこと・やらないことは何か?」という問いを投げ、最後に「Blanketらしさとは?」と問いかけました。

これは先ほど紹介した『理念経営2.0 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ』(ダイヤモンド社刊)の方法を踏襲させていただきました。

一人ひとりから出てきたたくさんの“Blanketらしさ”、それらを考える姿、お互いの表情、そして全員との対話。何にも代えがたい、尊い時間がそこにはありました。

今思うと私は、社員のみんなと、この時間を持ちたかったのだと思います。

Blanketでは毎月末に1対1の面談を行っているため、社員一人ひとりから「Blanketで働くこと」について聞く機会があります。しかし、社員みんながお互いの働き方や仕事観を一緒になって言葉にする機会は、なかなかありませんでした。

ふだん私を含め社員のみんなは、多くの時間をクライアントのことを考えて、考えて、考え抜き、向き合う時間に費やしています。案件は1人で担当することも多く、チームになる場合も2〜3人程度で、みんなで一緒になってプロジェクトに携わることは、ほぼほぼありません。

だからこそ、出てきた言葉を見て、一番に「そういうことを思ってくれていたんだ」「そういうことを大切にしてくれていたんだ」という嬉しさがありました。仕事やプロジェクトを通して育んだ“自分たちらしさ”、少人数ながらもチームを組んだときに社員それぞれが感じてくれていた“自分たちらしさ” があったことに、ハッとさせられました。社員一人ひとりが、これほどまでにBlanketのことを自分事として考えてくれていた。

私の周りには、心強く、尊敬できる社員がいること。そのことを再認識できる幸せな時間でした。

社員みんなで辿り着いた、大切にしていた5つのこと

そして、第2に「収束フェーズ」です。

一人ひとりから出てきたたくさんの言葉たちをもとに、さらにポイントを絞る対面のミーティングを別日で行いました。前回は個人でしたが、今回は2グループになり、出た言葉を5つほどに絞っていきました。

全社ミーティングの時には、ワトソン(LAVOT)も出社してくれます。

話し合いの末、意見をシェアする時間で各チームから出てきた5つのポイントは、多少の違いはあれ、ほとんどが共通していました。

収束した5つを見て、私たちは「言葉にすると、こういうことを大切にしていたんだ」と、すとんと胸に落ちるものがありました。出てきた言葉たちに違和感はなく、「そうだった」とみんなが思えたのです。

最後に、これらの素材をもとにクライアント案件等でお世話になっているコピーライターの多胡伸一朗さんにお力添えいただき、完成したのが、新しいバリューになります。

無理に背伸びをしていない、だけど、芯のある私たちの言葉。私は今、そんな感覚を抱いています。とはいえ、このバリューを見ていると、私はちょっとドキッとしてしまうのです。

なぜなら、ちゃんとバリューを体現できているだろうか? と立ち返るから。

私は新たな視点で考えられているだろうか? 挑戦することを恐れていないだろうか? アップデートし続けられているだろうか? 自分の胸に問いかけ、そのあと自然に「私もこうありたい」と思える言葉であることを再認識するのです。

バリューとともに進む、「これから」のBlanket

Blanketで働く私たちが何を大切にしているのかを表明したことで、私たちは再び、スタートラインに立ちました。

バリューができたからといって、良い組織になるわけではありません。むしろ、このバリューとともに進む「これから」が重要になると今は考えています。

私たちのクライアントである介護・福祉事業者は、“人”が資本のかけがえのないサービスをしています。Blanketも私一人では何もできず、社員一人ひとりの存在が、会社そのものです。

みなさまの伴走者である私たちも、自分たちの組織に向き合い、問いを投げ続け、そして何度でもこのバリューに立ち返りたいと思います。

そして実は、1つ前のバリュー「介護が、自分を、他者を、世界を好きになっていくプロセスになる」は、私たちが見たい景色としてWビジョンとして整理し直しました。

私たちが目指すこと、私たちが見たい世界に向かい、ますます突き進んでいきたいと思っています。

昨年1年、私は組織の変化を感じ取ったタイミングで、自身ライフステージの変化も加わり、今までと比べて思い切り動けないことに葛藤を感じた瞬間がありました。

しかし、社員のみんなと一緒にバリューを作り、そしてそのプロセスをこうしてオープンにすることで、もう一段階深く組織のことを考え、前を向けているように思います。私の周りには、これだけ心強い仲間がいる、クライアントがいる、パートナー企業様がいる。そのことを実感できる時間でした。

いや、もしかしたら社員一人ひとりは、それほど変わっていないのかもしれません。私が勝手に不安になり、距離を感じていただけなのかもしれません。ですが、それでも社員と一緒に言葉を交わし、表情を見て、ともに在った時間は、自分たちという土台を強固にするために必要な時間でした。

介護・福祉業界では、ついに、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり4人に1人が75歳以上になる「2025年問題」が目と鼻の先にやってきました。何をするべきなのか、そして何ができるのか。私は、まだまだ現状に満足していません。どういう戦略をとり、舵をきるのか、今もずっと考え続けています。

今後はバリューを体現するために、言葉をアクションに落とし込み、みなさまとともに進んでいきたいと思います。

株式会社Blanketに関わってくださる皆様、引き続き、ご支援、ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

2024年4月22日
株式会社Blanket 代表取締役社長 秋本可愛
(執筆サポート:田邉なつほ)