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モテる会社をつくろう。年間600名採用する介護・福祉事業者の採用成功術【KAIGO HR Guest Seminar #1】

2023/07/06

どの業界も人材採用に課題を抱えている中、特に介護・福祉業界では、人材確保への課題を感じている方も多いのではないでしょうか。

今回登壇いただいたのは、株式会社ドットライン(ドットライングループ)代表取締役CEOの垣本祐作さん。千葉県を中心に従業員1,200名以上、直営120事業所以上を展開している同社は、2022年に600名の人材採用に成功しています。

理想はリファラル採用100%であり、まだまだ妥協しながら採用活動に取り組んでいると謙遜する垣本さん。本質を見極め、どうすれば自社の魅力が伝わるか日々考えているそうです。垣本さんの言葉に触れ、採用活動に生かせるヒントを見つけてください。

【ゲスト】

株式会社ドットライン(ドットライングループ)
代表取締役CEO
垣本 祐作(かきもと ゆうさく)

1985年生まれ、千葉県出身。高校時代、坂本龍馬に憧れ、経営者になることを決意。24歳で起業。祖母の死をきっかけに、2014年から訪問介護事業を千葉市にて開始。現在までに千葉最大級の総合福祉医療企業として注目を集めている。

付き合いたいと思わせる、モテる会社をつくろう

ドットライングループ代表の垣本祐作さん

セミナーの冒頭、「一番分かりやすい表現でいうと、モテる会社をつくっているんです」と話した垣本さん。

法人には「人」という言葉が入っています。会社を人と同じように捉えると、この会社と付き合いたい、時間を共に過ごしたいと思わせることができれば、自然と採用力も高まっていきます。

ただし、特定のことだけに注力しても、モテる会社にはなりません。人の場合も、性格や容姿、コミュニケーションの取りやすさ、共通の趣味の有無など、「付き合いたい」と感じる要素は多岐にわたります。会社も全体のバランスはもちろん、採用のターゲットが求めるポイントを高めないと魅力にはなり得ないのです。

ドットライングループの採用ターゲットは「若者」。成長を求める志向性や、Webを中心に情報収集していることなど、若い世代の特徴を押さえた採用施策を講じているそうです。

理想は、リファラル採用100%

ドットライングループがリファラル採用で手渡す「紹介カード」

前回の登壇時、垣本さんは「人材紹介に費用をかけるのは、『罰金』を支払うことと同じ」と話していました。理想は、リファラル採用100%。自社が本当に魅力的であれば、社員は家族や友人に声を掛けるはずだといいます。

「現状では、リファラル採用だけでは人材確保に至らないので、採用にコストやリソースをかけているんです」と話す垣本さん。リファラル採用以外は妥協だという考え方が印象的でした。

ちなみにドットライングループのリファラル採用は、社員が紹介しやすくなる仕掛けを意識しているそうです。「お守り」のような紹介カードや、期間限定キャンペーンなど、すべての事業所に周知を徹底して取り組むといいます。

ただし、キャンペーンはやり過ぎると効果が薄れます。ドットライングループでは新規事業所の出店計画に合わせてキャンペーンを打っているとのこと。適切なタイミングを見計らいながら、施策につなげていくことがポイントです。

採用活動におけるウィークポイントを知る

オウンドメディア「DOTLINE PRIDE (ドットラインプライド)

ドットライングループは、求職者の行動プロセスを「知る→興味を持つ→調べる→応募(行動)する」の4段階に分解しています。会社の名前を知っているだけでは、求職者は応募しません。それぞれの段階を経て、求職者は応募に至るのです。

各ステップにおいて、1ヶ所でも数字が悪ければ、全体の採用数に影響が出てきます。垣本さんは、ビジネス小説の名著『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』を引用しながら、「採用活動の成否は弱いところで決まる」と断言します。

採用活動の弱点を見極めるために、数値管理は欠かせません。必要に応じて、ATS(採用管理システム)の導入を検討するのも良いでしょう。

そんな中、垣本さんがセミナーで強調したのは、「調べる」の重要性。若いSNS世代を獲得するためには、情報の透明化は欠かせません。

そのために、ドットライングループが2022年に実施したのはオウンドメディア「DOTLINE PRIDE (ドットラインプライド)」の立ち上げ。どんな人が働いているのか、どんな人が活躍しているのか、どんなキャリアが描けるのかを示すことによって、求職者が安心して応募できるようになったといいます。

オンライン採用が当たり前になった今、Webにコストをかけるべき

ドットライングループのWebサイト。「介護」という文字はほとんど記されていない

コロナ禍によって、採用活動のオンライン化が当たり前になり、多くの会社がWebサイト強化を検討するようになりました。垣本さんは「Web戦略は、経営戦略と同じ」と断言します。

広告宣伝費は、売上の何パーセントかをあてるという考え方が一般的です。しかし垣本さんは「Webサイトはコーポレートアイデンティティそのものであり、最優先で取り組むもの」と言い切ります。

ドットライングループのWebサイトには、「介護」という文字はほとんど記されていません。それは介護に興味を持ってもらうのでなく、ドットライングループに興味を持ってもらいたいと考えているからです。

3年前はアニメーションが組み込まれたWebサイトが珍しく、若い世代に関心を持ってもらうのに効果的でした。現在はWebサイトのリニューアルを検討中とのこと。Webサイトのトレンドも踏まえながら企画をしているそうですが、どんなWebサイトが完成するのか楽しみです。

事業がうまくいっているなら、離職率は気にするな

ファシリテーターを務めたBlanket代表・秋本。改めて採用活動の奥深さを感じています

会場からは離職率に関する質問が寄せられました。垣本さんは「離職率は高過ぎても問題だが、低過ぎるのも問題」と話します。ドットライングループの2022年の離職率は13.5%ほど。垣本さんは15%程度が適正値だと話します。組織には新しい風が必要で、特に企業の成長期には、健全なレベルでの新陳代謝がなければなりません。

能力が高くても、どうしても評価が上がらなかったり、カルチャーマッチしなかったりする場合もあるでしょう。退職し、新しく挑戦できる場を見出したことで活躍できることがあるかもしれません。

ただしドットライングループでも、双方が不幸せな形で離れるのを防ぐ仕組みは設けています。

ひとつはコース制度。あらかじめ社員の適正や能力、やる気、どんなキャリアを設計したいかなどによって、入り口を分けて業務に就いてもらっているそうです。専門性を磨いていくプロフェッショナルコースと、経営視点を養っていくマネジメントコース。これなら入社後のミスマッチも防げます。

もうひとつは成長の機会を与え続けること。成長を促せない上司が組織にいた場合、部下は成長の機会を失います。特に若い社員の場合、吸収力が高い時期に成長できないのは、個人のキャリアにとって大きな機会損失になってしまいます。「社員の未来の人生に責任を持ち、成長環境を構築し、成長機会を与え続けることが大事」だと垣本さんは強調しました。

新しい取り組みとして紹介してくれたのは、新卒社員がメインで配属されている経営幹部直属の事業所です。若手社員にいち早く成長環境を与えるため、育成のモデル事業所と位置付けられているといいます。

こういった仕組みが実を結び、最近では新卒社員が短い期間で管理職に昇進するケースも増えているそうです。「ドットライングループに入社すれば成長できる」という評判にも確実につながっていることでしょう。

「自社の強み」を知ることから始めよう

ドットライングループのエントランス。夢を持っている人が集います

セミナーの最後に垣本さんは、「自社の強みは何ですか?」と問いました。いくら採用を頑張っても、自社を魅力的に見せたとしても、他社に劣っていたら採用活動はうまくいきません。

経営者や採用担当者がまず考えるべきは、自社の強みを把握すること。

鍵になるのは社員一人ひとりです。彼らに「会社の強みは何ですか?」と聞くと、自社の強みのヒントが見えてくるはずです。

採用戦略から経営戦略に至るまで、1時間のセミナーは盛りだくさんの内容でした。「モテる会社」づくりは簡単なことではありませんが、できることから始めていきましょう。

この記事を書いた人

堀聡太

株式会社TOITOITOの代表、編集&執筆の仕事がメインです。ボーヴォワール『老い』を読んで、高齢社会や介護が“自分ごと”になりました。全国各地の実践を、皆さんに広く深く届けていきたいです。