「介護業界だから…」と諦めるのは、そろそろ終わりにしよう。採用できる組織をつくるため、共に歩む実践と内省の3か月。(KAIGO HR College1期レポート)
2018/12/25
□採用実践力を高めるための学びと実践の3か月。
2018年、10月。KAIGO HRが手掛ける新たなプログラム【KAIGO HR College】がスタートしました。
介護・福祉・医療事業者を対象に、採用に必要な基本的な視点を学ぶプログラムと、それぞれの現場で実践することで、「採用に強い組織」をつくる全6回、3か月のプログラムです。
第一期には、複数の事業を手掛ける大規模な社会福祉法人から、社員約10名の民間の訪問介護事業所まで、採用規模も、採用経験も様々なバラエティ豊かな法人の採用担当・経営者の方にご参加いただきました。
3か月間、関係を構築しながら、共に学びを深めてゆきます。
□「介護だから、採用できないのは仕方ない」という思考停止。
私たちが、このKAIGO HR Collegeを始めた背景には、介護業界全体に蔓延してしまっている「介護業界は採用が出来なくて仕方がない」という諦念と思考停止をなんとかしたい、という思いでした。
介護領域の人的課題を、人事の力を高めることで解決する。業界全体の「採用」「育成」「定着」力を高めていく。そんな想いでKAIGO HRのプロジェクトを始めて1年。学びの場・つながりの場をつくることで、介護・福祉・医療領域の採用や人材育成に熱心で、様々な取り組みをされているプレイヤーの皆さんと出会うことができました。
しかし、残念ながらまだまだこの業界では、そのような意欲的な採用・育成担当者は多くありません。
「介護は不人気な仕事だから、人が採れないのは仕方がないよね。」
「他の業界も人手不足だから、この待遇じゃどうせ勝てないよ。」
「行政や社協がなんとかしてくれないと困るんだよね…。」
私たちが、講演や研修で全国の介護事業所の方とお会いしたり、採用についてのご相談を頂くときに、そのような声を耳にすることも少なくありません。全産業での人材不足による競争激化や、業界全体のマイナスイメージから、「介護業界が、自分たちの事業所が、採用できないのは仕方ない」と思考停止してしまい、何もせずに状況を悪化させてしまっていることに、私たちは強い危機意識を持ちました。
介護業界に限らず、人材不足のこの時代。どの業界でもここ数年、HR(人事)領域の危機意識と、新しいことを取り入れていこうという意欲は非常に高いものがあります。
一方で介護業界は、「介護業界だから仕方ない」と思考停止し、あきらめている…。
このままでは、ますます介護業界は「採用できない業界」となっていってしまう。
その状況を打破していくために、採用活動の基本的なスキルや大切にすべき視点を学び、自社の課題に落とし込みながら実践をしていくことで、共に学びあうKAIGO HR Collegeという学びの場をスタートさせました。
□まずは、「誰でもいい」という採用から脱却しよう。
プログラムの設計とメイン講師は、大手介護事業所で10年ほど人事採用に携わり、現在も複数の介護事業所の採用・育成についてのコンサルティングを行う、私(野沢)が担当させていただきました。
- なぜ人を採用したいのか?
- どのような人材を採用したいのか?
- ターゲット人材に届けるべき自社の強み・特徴は?
- どのように出会い、どのように魅力を伝える?
などといった、採用活動において考えるべき重要なポイントについて、解説とワーク、そして「宿題」という形での各現場に持ち帰る実践課題を通して理解を深め、実践力を高めていきます。
KAIGO HR Collegeでは、採用テクニックの伝授ではなく、各法人の採用の土台づくりを徹底して行います。
人材不足だからこそ、「どんな人でも採用したい」とついつい思ってしまいがち…。
でも、「誰でもいいから」という採用活動は、結果として誰にも響きませんし、「誰でもいい」と採用した人材は、理念や業務内容のミスマッチを起こし、早期離職につながってしまうことも多くあります。
だからこそ、しっかりと「なぜ採用するのか」「どんな人を採用するのか」を考え、採用戦略の土台から積み上げていき、小手先のテクニックではなく、「自社にあった採用活動」を自ら考え、構築する実践力を高めていくことが重要なのです。
□組織の垣根を越え、共に高めあう仲間の存在
KAIGO HR Collegeのもう一つの特徴は、「参加者同士で学びあい、支えあうコミュニティ」です。
プログラムでは、ワークショップや意見交換など、交流の時間を多く設けています。
事業形態も採用にまつわる課題も様々な人たちが集まり、関係性を深めながら対話を重ねることで、自社の中だけでは見えてこない気づきやフィードバックを行うことが可能です。
「採用に強い組織をつくる」「よい人材を採用する」という共通の目標を持つ仲間ができ、切磋琢磨できる環境が、参加者の皆さんの学びや実践を加速させているように思えます。
□「本気で採用を考える」ということは、「本気で組織を考える」ということ。
“採用のテクニックを学びに来たつもりだったけど、会社や組織、今働いている社員のことをとことん考える貴重な時間になった。“
ある参加者の方が最後にこんな感想を話してくださいました。
採用活動について本気で考えていくと、「自社の強みは何か」「この組織をどうしていきたいか」「社員は何を考え、どんなことを目指しているのか」といった、組織全体を考えていくことになります。
本当によい採用活動は、採用活動だけでは考えられません。
自社の理念や事業の方向性、現在の組織の強みや課題は何か、社員をどう育成していくのか、働きたくなる・働き続けたくなる職場とは…。組織と社員の「今」と「これから」を考え、採用から受入、育成まで一連とした大きな絵を描くことが重要になります。
実践と、プログラム内での対話が促す自己内対話ー内省を通して、採用と組織のあり方を考えるKAIGO HR Collegeの3か月は、その第一歩となるのではないかと考えています。
採用について、そして自社の組織・職員について本気で考え、行動する介護・福祉・医療事業者が増えていき、そのプレイヤーが連携をしていくことが、業界全体の採用・育成力を高めていくことへとつながります。
KAIGO HR Collegeのコミュニティを拡げていくことで、「人材が成長・活躍し、いきいきと働き、人が集まる組織をつくる」。それが私たちの願いです。
「介護だから採用できないのは、人が辞めてしまうのは仕方ない」と諦めてしまうのは、もう止めよう。
KAIGO HR Collegeの挑戦は、これからも続いていきます。
【この記事を書いた人】
野沢 悠介 株式会社Join for Kaigo(現:Blanket)取締役
立教大学コミュニティ福祉学部卒業。ワークショップデザイナー。
大手介護事業会社にて新卒採用担当・産学共同プログラム担当・採用部門責任者等を担当し、年間400~500名規模の介護職新卒採用スキームを構築。
2017年 株式会社Join for Kaigo(現:Blanket)取締役に就任し、介護領域全体の人材確保・定着力の向上を目指す。主な実践領域は、コミュニケーション・キャリアデザイン・リーダーシップ・チームビルディング・目標設定等。
KAIGO HR Collegeでは、プログラム全体設計とメイン講師を務める。