動画は自社で作る時代に。コロナ禍の今こそ、介護の採用PRに動画を活用しよう【成功事例・プロから学ぶ「介護福祉業界の採用PR講座」イベントレポート②】
2022/09/29
採用PRの悩みは尽きないもの。応募が来ない、ミスマッチが多い、内定承諾してもらえない──。コロナ禍によって対面でのコミュニケーションが制限され、有効な打ち手が見当たらなくなっている企業も少なくないはず。
一般社団法人Honmono協会(以下、Honmono)の三井所健太郎さんは、動画活用が採用PRの課題の処方箋になると考えています。相手の心を動かす動画作りのポイントは、「誰に伝えるのか」「どこで伝えるのか」というシンプルなことだそう。
とはいえ、「コストがかかるのではないか」「センスの良い動画を作れそうにない」といった、動画活用にハードルの高さを感じるのも頷けます。今回の登壇では、動画活用の戦略作りの重要性と共に、具体的にどのように動画を作るのかについて話をしていただきました。
【ゲスト】
一般社団法人Honmono協会 代表理事
三井所 健太郎(みいしょ けんたろう)
KDDI株式会社にて法人向けITコンサルティングを担当。 退職後、日本各地のモノづくりの現場を歩き回り、日本の伝統文化が持つ「可能性」と「危機感」を肌で体感する。 2019年4月に一般社団法人Honmono協会を設立、現在に至る。
一般社団法人Honmono協会 映像事業統括
植村 健一(うえむら けんいち)
35歳で勤めていた金融機関を退職。未経験ながら映像の世界へ入り、独学で映像制作について学ぶ。スチール撮影から映像制作まで、幅広く実績を積んでいる。
戦略のない動画の9割は失敗する
人材・事業支援、映像・Web制作、SNSコンサルティングなど幅広い事業を展開しているHonmono。クライアントには非営利団体や社会インフラを担う企業などが多いそうです。
最近三井所さんが感じるのは、動画に関する問い合わせが増えていること。確かに採用においても、求職者から「動画を参考にした」という声は増えているように感じます。しかし三井所さんは「戦略なしに作られた動画の9割は失敗する」と断言します。
戦略というと難しそうですが、ポイントは以下のふたつ。
・誰に伝えるのか?
・どこで伝えるか?
動画はあくまでコンテンツのひとつ。動画が「伝える」手段として有効でない場合、三井所さんは「動画を作らない」提案をすることもあるそうです。
まずは自社の課題を把握する
採用活動では、求職者の気持ちの変化に合わせて「導線」を作る必要があります。導線とは潜在層である求職者を、企業が設定したゴール(例:応募、内定、内定後活躍など)に向けて「導くための線」を意味します。
例)
潜在層:外部イベント、スカウトなどで自社のことを知ってもらう
↓
顕在層:Webサイトや採用媒体を通じて自社に興味を持ち、応募してもらう
↓
行動層:応募した求職者に、面談や面接などを通じて、自社に入社してもらう
動画活用の戦略作りにおいて、導線の設計はとても大切だと三井所さんはいいます。現状と照らし合わせることで、自社の課題を把握できるからです。
その上で三井所さんは、「動画を公開するだけでは誰にも見られない」と話します。10万人のチャンネル登録があるならまだしも、動画単体では求職者に訴求することはできません。導線の中に動画を組み込むことによって、行動変容を促す効果が増すそうです。
あらかじめ動画活用の戦略を作っておくと、「動画の内容を考える際にブレなくなる」と三井所さんはいいます。社内外の関係者による共通理解が済むため、制作から公開までスムーズに進むのです。
お金がないからでなく、自社だから作れる動画がある
そもそも動画とは、誰が作るべきなのでしょうか。三井所さんは、
①自社制作
②制作会社に外注
③フリーランサーに外注
の3つを挙げ、それぞれにメリットとデメリットがあると話します。
例えば、企業の全体像を動画にする際は、動画の構成や流れが重要になります。企業のブランドイメージにも関わるので、動画を作ったことのない社員があれやこれやと悩むよりも、プロの経験を頼った方が上手くことが多いのです。(※ただし制作会社によっては「作って終わり」ということもあるので、必要に応じてディレクション業務も外注した方が良いこともあるそうです)
三井所さんが自社制作を薦めるのは、スタッフインタビューや、職場の様子、日々の取り組みなどの動画です。自社で動画を作ることができれば、すぐにWebサイトやSNSに投稿できるなど、スピード感のある情報発信が可能になります。
お金がないから自社で制作するわけではありません。下図を参考に、採用動画のパターンと制作の相性について確認してみてください。
動画制作はバランスが大事
具体的な動画制作のことを教えてくれるのは、Honmonoで映像事業統括を務め、フリーランスカメラマンとしても活躍している植村さん。動画制作は「企画→撮影→編集→納品」という流れで行われるのだそう
撮影にはカメラが必要ですが、動画を自社制作する場合はスマートフォンで十分なことが多いそうです。大切なのは補助機材とのバランス。「カメラだけは良いものにしよう」と高価なものを購入しても、補助機材が不十分だと意味がありません。目的に合わせ、バランスのとれた機材構成を意識するようにしましょう。(※本記事ではスマートフォン撮影を想定しています)
撮影における補助機材は以下の通りです。
三脚:撮影時にブレないこと、カメラを動かす際になめらかに動くことがポイント
LED照明とレフ板:撮影場所の照明に合わせて色温度を変更できるものが良い
マイク:インタビューではピンマイクの使用を推奨、スマートフォンと連携できる機種が良い
ジンバル:ジャイロセンサーで水平を維持し、安定感のある動画を撮影できるものを
編集ソフトとして植村さんが推奨するのは、Adobe Premiere Rush。初心者でも直感的な操作が可能で、テンプレートが豊富。しかもスマートフォンやタブレットでの編集や動画共有も可能です。まずは機能制限のある無料版を使ってみて、慣れてきたら月額1,000円程度の有料版を使うのがお薦めです。
編集はひとりで行うことができる作業ですが、なるべく複数人で意見を出し合った方が良いと植村さんはいいます。動画は修正を重ねていくことで良くなっていくもの。みんなで話し合うことで動画がより良くなり、最終的に質の高い情報発信にもつながるのです。
人に会えないコロナ禍だからこそ、動画を活用しよう
スマートフォンの進化によって、誰もが高画質な撮影が可能になりました。スマートフォンの購入費用を除く初期投資の金額は10万円以下。これだけで動画制作の環境は十分整うといいます。
三井所さんは動画制作のコツとして、「プロの動画を真似ること」を挙げました。ゼロから試行錯誤するのでなく、手本となる動画を参考にすること。楽しみながら、動画による情報発信に取り組んでほしいといいます。
コロナ禍の影響で、非対面のコミュニケーションが中心となりました。オンライン会議、Web面接、SNS……。コロナ前と比べて、求職者と気軽に「会える」状況ではなくなってしまいました。
そんな今だからこそ、動画の役割は必然的に大きくなっています。自社制作と外注、それぞれのメリットとデメリットを比べながら、ぜひ採用PRで動画を活用してみてはいかがでしょうか?
(文/堀聡太)