“らしさ”を大切にした評価項目と等級制度で評価基準が明確に。離職率10%未満を実現した鍵はプロセス開示【介護事業所「笑楽日」インタビューVol.2】
2024/12/11
2021年からご支援している介護事業所・笑楽日(わらび)。採用面ではペルソナ設定から採用 チームの構築、採用サイトのリニューアルと幅広く支援させていただきました。次いで始まったのが人事制度の設計です。現在は進行形で運用をサポートしています。
今回は、人事制度の設計や導入後の変化、採用支援も含めたBlanketのサービスの感想について、有限会社ダイケイ 代表取締役 大蔵 富宏さんに語っていただきました。
▶︎チーム結成で情報発信の体制を構築。採用サイトをリニューアル後、直接採用が可能に!【介護事業所「笑楽日」インタビューVol.1】
有限会社ダイケイ
代表取締役
大蔵 富宏
福井県坂井市竹田出身。約10年勤務した介護施設での経験を活かし、自身で介護施設を開設しようと決意。祖父の代から続く細幅織物業を介護事業に変更し、2009年に生まれ育った竹田にて笑楽日を開設。竹田ならではの自然環境でできることを利用者の自立に向けたお手伝いや機能訓練につなげている。
【事業者について】
有限会社ダイケイ(デイサービス 山のいえ笑楽日、有料老人ホーム竹田のさと笑楽日、居宅介護支援 竹田の居宅笑楽日、笑楽日のヘルパー芙生)
所在地:福井県坂井市丸岡町山口59-13
URL:https://www.day-warabi.com/
利用者や家族、スタッフなど「関わる人全てが笑顔になれる場所」を目指し、コミュニケーションを大切にした多彩な行事を行っている。竹田の豊かな自然を活かした取り組み(山菜採りや魚釣りや、自家畑でさつまいも掘り)や地域の団体とコラボレーションした稲刈りや田植え体験など楽しみながら元気になれるイベントを多数実施。スタッフが笑顔でいることを重視し、毎日の朝礼、夕礼時のスタッフ同士の”にっこり”や、スタッフ同士が感謝の声を伝え合う「ありがとうコメント」の掲示など、スタッフの意欲を考慮した取り組みも行っている。
笑楽日らしさを第一に作った人事制度
―もともと人事制度をつくり直そうと考えていたそうですが、理由は何だったのでしょうか。
以前の人事制度はしっくりこなかったんです。
たしか、前の人事制度はスタッフの方が外部研修で学んだ流れに則ってつくられたものでしたよね。汎用的なものだけど笑楽日に合うものではなかったのだと思います。また、評価項目があっても、それをどうやって評価するのかが仕組みとして紐づいてなかったから違和感を覚えたのだと思います。リーダーの方々からも「しっくりこない」と伺っていたので、まずは評価の軸になるものを考えることから始めました。
―どのように進めていったのでしょうか。
ワークショップの機会を設け、スタッフの皆さんに2つのことを考えていただきました。1つ目は、笑楽日らしさとこれからも大切にしたいこと。笑楽日の基本理念やベースにある考えです。2つ目は現状の課題や希望。改善したいけどできていないことや困っていること、こうなったらいいなと思うことです。新たに制度をつくるなら良い方向に進まないと意味がないので、皆さんが課題だと思う点を話し合っていただきました。これらを付箋に書き出し、グループごとに考えていただきました。「全体的にポジティブシンキングで仲が良いけど雑談になりやすくて情報共有できていない」、「改善したいけど時間がなくて誰かが動いてくれるのを待ってしまう」などの意見が挙がりました。
グループで出た意見をまとめた後、今度はリーダーの皆さんにお見せして意見を挙げていただき、それを基に私が整理して5つの軸に分け、評価項目案としてまとめました。リーダーの方々に見ていただいたところ、特に違和感はないとのことだったので、当時なかった等級制度に紐づけて5段階制に仕上げました。0等級ならここまでのスキルがある状態だから、1等級上がるためにはこういうスキルが必要、といった基準を設けました。
また、給与と等級制度を紐付けた評価シートも作成しました。それが2022年の終わりくらいのことで、2023年から運用しています。
運用して1年経ったので、実際に運用して分かった改善点をブラッシュアップしていこうとなりました。それが今年の8月からです。
評価シートも運用しながら適宜調整しています。スタッフの方から提出された目標に対してどのように評価していくのかを皆さんと話し合い、評価基準や方向性を合わせています。
評価基準が明確になったことで目線合わせが可能に。スタッフとの対話も生まれる。
―新たに人事制度をつくって良かったことを教えてください。
リーダー層を巻き込んだことで、各自が人事制度を自分事として捉えるようになったと思います。「評価軸に沿ってちゃんと取り組めばその分だけ評価される。昇給されるんだ」と意識が変わったように見えますね。
評価に対する齟齬も少なくなったと感じます。リーダー層や上長はこの部分を評価している一方で、会社としては他の部分でも頑張ってほしいという期待があります。意見をすり合わせることで評価を最終決定するため、目線合わせができていると思います。
また、評価基準が明確になったので賞与額も迷わず決められています。
以前は基準が明確でなかったため、何で評価されているのか分かりにくく、頑張ってもあまり変わらない感覚がスタッフの皆さんにはあったのかもしれません。今回新たにつくったことで、組織として大切にしていることや頑張ってほしいことがスタッフの皆さんに伝わるようになったと思います。
指標があるとこちらも自信をもって伝えられます。
リーダー層が人事面談もされるようになったんですよね。一人ひとりを知ることができる“対話”の機会になっているかと思います。
そうですね。リーダーを筆頭に全体として相手を気にかけるようになったと思います。面談で目標設定をするのですが、スタッフが好きなことや仕事で気にしていることが分かると、スタッフのレベルに合わせてそれに関わる目標を提案するようになりました。なかなか目標が立てられない時はみんなで話し合うこともあります。
以前は面談でちゃんと対話ができていなかったと思います。評価基準が分からないからリーダー層も「面談でどうすればいいのか分からない」と言っていました。今思えば、評価されるスタッフからしても「私のこと知らないのに何でそんなこと言われないといけないの」と思っていたかもしれません。よく知らないのに評価していたから納得できず、離職につながっていたのだと思います。
離職者は直近1年で10%未満。巻き込み型の取り組みでスタッフの意欲が向上!
―Blanketにご依頼いただく前は離職に悩まれていましたが、ご依頼いただいてから2年で離職率が38%から10%になったと伺いました。
今はそれ以上に下がりました。この1年で離職したのは1名です。理由はご家庭の事情だったのでやむを得ないものでした。
私の記憶だと、人事制度ができる前から少しずつ辞める方が減っていったように思います。おそらく、組織の課題に対して真摯に向き合おう、改善していこうという想いがスタッフの皆さんにも伝わったのだと思います。
また、採用業務や人事制度に取り組むプロセスで皆さんの意識が変わったように感じます。ご支援するようになった当初は、皆さんも何をすればよいのか分からず戸惑っている印象でしたが、組織がよりよくなろうという姿勢が見たことで「利用者や仲間のために頑張れば、私のことをちゃんと見てくれる」「働きやすくなるかもしれない」という期待が生まれ、意見を言ったり自ら動いたりするようになったと思います。プロセスそのものが対話となり、職場のことを前向きに考える機会となり、それが意欲につながったと思います。
制度をつくってもよっぽどなことがない限り、劇的に好転することはありません。大蔵さんが全て一人で行わず、スタッフの皆さんを巻き込んだことがよかったのだと思います。プロセスを開示することで目標に向かっている、近づいているとスタッフの方々も期待をもてる。それがよい結果をもたらしたのだと思いますね。
野沢さんが周りを巻き込もうと言ってくださったおかげです。そのはじまりが採用チームです。そこでベースができました。
あと、野沢さんは話をまとめるのがうまいので助かりました。整理できていないことや何となく言ったことでもうまくまとめてくれるので分かりやすい。話自体も前向きになれるし具体的なイメージが湧いてくるので、スタッフから意見が出るようになりました。資料も同様で、見やすさやデザイン、フォントひとつとってもこだわっていると感じました。そういう積み重ねが野沢さんやBlanketへの信頼につながったのかなと。いろいろなご提案を頂けるし、だからと言って押し付けない。常に同じ目線で考えてくれるのも助かります。
介護・福祉業界の人事課題は一筋縄ではいかないので「これをやれば解決する」というものはないと思っています。そう思っているがゆえに、常に組織ごとに策を考えているので押しつけないのかもしれません。お客さまと一緒に考え、一緒に悩む。この姿勢がBlanketのベースにあります。何かの策をやってもうまくいかないのは事業所の努力不足ではなく、そのやり方自体が合わないだけだと思いますね。これをやったけどうまくいかない、それならあっちはどうだろう、と一緒に地図を見ながら進んでいく感覚です。
こういう案もあるし、あれとこれを組み合わせることもできるとコーディネートしてくれる感じがしました。
―これからBlanketに依頼しようか考えている事業所に向けてメッセージをお願いします。
組織の土台をつくりたかったり、スタッフのモチベーションを上げたかったりする事業所はBlanketと合うと思います。野沢さんはティーチングとコーチングをうまく使い分け、人の想いをしっかり聞き出してくれる。そのうえでご提案していただけたのがよかったと思います。野沢さん以外の方もしっかり相手の声に耳を傾けてくれると思うので、悩んでいるならまずは相談してみることをおすすめします。
ありがとうございます。今回お話して、改めてBlanketは伴走型だと思いました。組織の規模や状況を踏まえたうえで、一緒に考えながら答えを出していく。これを得意とするので、そのようなスタイルを求めている事業所のお力になれると思います。
編集後記
笑楽日の人事課題を解決した鍵は、スタッフを巻き込んで取り組むスタイルにありました。組織が変わろうとするプロセスを見せることで対話する機会が生まれ、スタッフのことを知ることができる。その結果、スタッフ一人ひとりの意欲向上につながりました。「関わる人全てが笑顔になる」という理念のもと、日頃からスタッフとのコミュニケーションを大切に笑楽日だからこそ、周りを巻き込んで取り組むスタイルがよい結果をもたらしたと言えます。
ただ制度をつくるだけでは人事課題は解決しません。Blanketでは画一的ではない、事業所の特色や状況を踏まえたご提案を大切にしています。そのような姿勢がベースにあることを今回の対談で再確認することができました。
大蔵さん、今回は貴重なお時間を頂き誠にありがとうございました。