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外国人人材に選ばれる時代の処方箋。長期的に活躍できる仕組みを考えよう【「KAIGO HR FORUM 2022」イベントレポート⑥】

2023/04/20

介護・福祉人材の慢性的な不足により、外国人人材の登用を検討している事業者も多いのではないでしょうか?

10年近く外国人人材の受け入れを行っているウェルグループ・杉田さんは「もはや外国人人材から『選ばれる』事業者でないと、採用することはできない」と注意を促します。

実施すべきは給与などの条件面や職場環境の改善。ごく当たり前のことですが、地道に労働環境を良くしていくことで、外国人人材に安心して、長く働いてもらえるのです。

進め方のヒントは「外国人人材に活躍してもらうにはどうすれば良いか」という視点です。ウェルグループの実践から学んでいきましょう。

【ゲスト】

ウェルグループ

副社長兼広報・営業ジェネラルマネージャー

杉田 珠希(すぎた たまき)

ウェルグループにて医療・介護の人材育成を担当したことを皮切りに、他事業所の人材育成支援や外国人の介護・看護の人材育成等に注力する。2019年にはベトナム、中国、インドに介護人材を育成するためのトレーニングセンターを設立。アジアと日本の人材の架け橋となるべく事業拡大に取り組んでいる。

「働いてもらう」でなく、「活躍してもらう」ために

ウェルグループ 副社長兼広報・営業ジェネラルマネージャー 杉田珠希さん

ウェルグループが外国人人材を採用し始めたのは、2013年頃のこと。日本に住んでいる外国人や留学中の大学生を、アルバイトで雇用するようになりました。

本格的に外国人人材を受け入れるようになったのは、2017年11月から。新たな技能実習法が施行、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加されたことがきっかけです。現在、ウェルグループの従業員数は800人ですが、1割にあたる80名以上が外国人人材だといいます。

いち早く、外国人人材が働きやすい環境を整備してきたウェルグループ。受け入れを担当してきた杉田さんは、「ただ働いてもらうだけでなく、成長意欲が高い彼らに活躍してもらうにはどうしたらいいか考えてきた」と話します。今では多くの外国人人材がリーダーなどの役職に就いていますが、現在に至るまでの仕組みづくりは試行錯誤の連続だったそうです。

外国人人材受け入れの4つの仕組み

ウェルグループの外国人人材は、全職員の1割にのぼる

外国人人材を受け入れるためには、以下の4つの仕組みがあります。

・EPA(経済連携協定)
・在留資格「介護」
・技能実習
・特定技能1号(以下、特定技能)

EPAには受け入れ人数の制限があり、在留資格「介護」には介護福祉士の取得が条件となります。そのため、本格的に外国人人材の採用に取り組むためには、技能実習と特定技能の仕組みを活用することになるでしょう。

ウェルグループでは、ベトナム、中国、インド、インドネシア、ミャンマーなどから来日希望を受けてきました。ただし今では、これらの国々のGDP伸び率も高まり、給与水準も上がっています。わざわざ日本に行って働くメリットが小さくなっており、徐々に来日する外国人人材の数が減ることが予測されるそうです。

外国人介護人材受入れの仕組み(厚生労働省ウェブサイトより)

技能実習と特定技能の違いを把握しよう

技能実習と特定技能の違いを理解し、採用のミスマッチを防ぐ

そもそも技能実習と特定技能の違いは何でしょうか。メリットとデメリットを中心に、それぞれの特徴を把握しましょう。

技能実習
技能実習のメリットは、在留期間が長く、特定技能と組み合わせると最大10年間働いてもらえること。日本語能力試験のN4取得が入国要件なので、人材も集めやすい。また1、3、5年目に試験が課せられ、技能習得も期待できる。
技能実習がおすすめなのは、慢性的に人材不足に悩んでいる事業者。技能実習は入職後半年間は人材配置基準に入れられないものの、長期的な雇用につながりやすい。

特定技能
特定技能のメリットは、人員配置基準に配属後すぐに参入できること。配属までの手続きにかかるコストも低い。
特定技能がおすすめなのは、入職後すぐに人材配置基準に入れたい事業者。新設事業所があったり、コストを抑えて採用したいと考えたりしている事業者に向いている。ただし技能実習と違ってスキルアップは任意のため、人材育成のための仕組みが必要となる。



杉田さんが強調するのは、「特定技能では採用面接が重要」ということ。比較的採用はしやすいものの、日本語が不慣れだったり、介護の仕事への理解が乏しかったりすることで、内定辞退や早期離職につながることもあるそう。場合によっては通訳も同席するなど、双方が納得の上で採用合意に至ることが大切だと教えてくれました。

外国人人材に「選ばれる」事業者になるために

外国人人材の成長意欲に応える教育制度 / キャリアパスの整備が重要

アジア各国のGDPの伸び率や、コロナ禍の影響で、来日する外国人人材は減ることが予想されます。つまり、今後は「選ばれる」事業者にならないと、外国人人材の採用は困難を極めるのです。

杉田さんは「条件面」「職場の雰囲気(人間関係)」「キャリアパス」の3点を意識すべきだと教えてくれました。

条件面
給与、福利厚生、労働環境、住区環境に関すること。
安心して働けるか、働きやすい事業者かどうか。日本人よりシビアに見られることもある。住居に対する補助金が設けられていることもあるので、適宜情報収集を行なうことが大事。

職場の雰囲気(人間関係)
受け入れの体制づくりや、コミュニケーションツールの導入など、円滑に仕事がしやすい環境整備が求められている。
ウェルグループでは、外国人人材を外国人人材が直接教えたり、外国人人材に寮長の指名をしたりと人間関係構築に配慮している。

キャリアパス(教育制度)
介護福祉士などの資格取得支援や、日本語向上のための研修などの要望が多い。


ウェルグループのアンケートによると、特定技能の在留期間が終了してからのキャリアプランとして「日本で永住したい」「永住は考えていないが、もっと長く働きたい」が合わせて9割近くを占めています。日本語のレベルや介護経験に応じて、適切な研修を受けてもらえるよう教育制度の仕組みづくりに力を入れてみてはいかがでしょうか。

IT導入は、外国人人材定着にもメリット大

外国人人材に選ばれる時代に、IT導入は欠かせない

言語や文化の壁を取り除き、外国人人材に働きやすい環境を提供する上で、IT導入は欠かせません。

杉田さんは、「ITの見守りセンサーを入れれば、夜勤の不安がなくなる。記録ソフトを入れれば日本語の読み書きの負担を軽減できる。レクリエーションソフトもあれば活用してもらえる」と、IT導入のメリットを語ります。情報共有の仕組みも、プライバシーに配慮した事業者専用のコミュニケーションツールを提供すべきだといいます。

IT導入には、国や地方自治体の助成金や補助金を活用できるケースもあります。情報を常にチェックし、活用できるものは取り入れていきましょう。

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この記事を書いた人

堀聡太

株式会社TOITOITOの代表、編集&執筆の仕事がメインです。ボーヴォワール『老い』を読んで、高齢社会や介護が“自分ごと”になりました。全国各地の実践を、皆さんに広く深く届けていきたいです。